遠心ポンプの基礎講座

電力、自動車、建設機械、鉄鋼、化学、食品など、多くの産業分野において使用されている「ポンプ」。
本連載では遠心ポンプにスポットをあてて、ポンプの種類、またポンプで使われる記号や圧力計の読み方などの豆知識まで、さまざまな事項をご紹介していきます。
遠心ポンプの実践講座はこちら>>
第3章 ポンプの性能

3-4 ポンプの吸込口と吐出し口の口径

ポンプには吸込口と吐出し口があります。そして、ポンプを運転するためには、一部の水中ポンプを除き、吸込配管及び吐出し配管が必須であり、弁、ストレーナなどを含めてポンプに付設されます。そのため、配管径がいくらになるかは、配管のコストに影響します。

ポンプの吸込口と吐出し口の口径は、設計規格に従って設計しその規格の中に口径の規定がある場合には、その設計規格に従います。 設計規格に従って設計したとしても、その規格に口径の規定がない場合、または何の設計規格も適用しない場合、ポンプメーカは独自に口径を決めています。

口径を決めるときに参考になるのが「ISO 2858」で、1975年に制定された設計規格です。ポンプの寸法、吐出し量と全揚程の標準要目などが規定されています。ポンプの世界的な設計規格としては初めてのもので、ポンプの設計規格 JIS B 8313は、この規格を参考にして改正されています。

ここで、「ISO 2858」で規定している吸込口径と吐出し口径を見てみましょう。表3-4-1にこの規格の抜粋を示します。 1450 min-1及び2950 min-1の回転速度に対して、それぞれ口径及び吐出し量を表3-4-1のように規定しています。回転速度2950 min-1の吐出し量は1450 min-1の吐出し量の2倍になっています。 これは1450 min-1と2950 min-1のポンプは同じポンプを使用することを前提にしているからです。

吸込口径は吸込流速によって決められているかと筆者は考え、この規格による吸込流速を計算してみました。その結果を表3-4-1及び図3-4-1に示します。表3-4-1及び図3-4-1から、

(1)吸込流速が一定になるように吸込口径を決めているのではない。

(2)2950 min-1の吸込流速は1450 min-1の吸込流速の2倍である。

(3)吸込口径が大きいほど吸込流速は大きい。

ことが分かります。

また、吐出し流速は、吸込流速と同様のことがいえるのですが、表3-5-1に示すように、いずれの口径でも吐出し流速は吸込流速よりも大きくなっています。

従って、適用している規格で口径の規定があるポンプでは適用規格の口径に合わせるのですが、適用規格に口径が規定されていなければ、ポンプメーカは独自に口径を決めることになるのです。

表3-4-1:「ISO 2858」で規定している口径

図3-4-1:「ISO 2858」で規定している吸込流速

図3-4-1:「ISO 2858」で規定している吸込流速

それでは、ポンプメーカはどのように口径を決めているのでしょうか。損失が最小になるように設計するのが基本です。 吸込口径は、羽根車の目玉径より小さく、かつ、羽根車の吸込口の断面積よりも少し大きくなるようにします。吐出し口は、ケーシングの水切り部の断面積を相当円に換算し、その相当円よりも少し大きくして、拡大流損失などを抑えた設計をするのが一般的です。

執筆:外山技術士事務所 所長 外山幸雄

『遠心ポンプの基礎講座』の目次

第1章 ポンプの基礎

第2章 ポンプの豆知識

第3章 ポンプの性能

第4章 ポンプの選定

第5章 知っておきたいポンプの技術

目次をもっと見る

『配管・水廻り部材/ポンプ/空圧・油圧機器・ホース』に関連するカテゴリ

『ポンプ・送風機・電熱機器』に関連するカテゴリ