遠心ポンプの基礎講座

電力、自動車、建設機械、鉄鋼、化学、食品など、多くの産業分野において使用されている「ポンプ」。
本連載では遠心ポンプにスポットをあてて、ポンプの種類、またポンプで使われる記号や圧力計の読み方などの豆知識まで、さまざまな事項をご紹介していきます。
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第1章 ポンプの基礎

1-1 ポンプの概況1

国内では毎年400万台のポンプを生産していますが、現在国内で運転されているポンプは何台になるのでしょうか。明確な統計資料は見当たりません。そこで、次のように仮説を立てて想定してみましょう。

  • 仮説:
  • 1:1年間の生産台数を400万台とする。
  • 2:生産台数のうち50 %が輸出されて、残りの50 %が国内に出荷されている。
  • 3:国内に出荷されたポンプのうち、80 %は販売されていて、いつでも運転できる状態にあるポンプはその中の70 %とする。
  • 4:ポンプの寿命を15年とする。

この仮説によると、国内において運転されているポンプの台数は次式によって計算できます。

台数=400 × 0.5 × 0.8 × 0.7 × 15=1680 万台

あくまでも仮説ですが、国内では1680万台のポンプが運転できる状態にあるのです。ポンプの運転時間は用途によって、1年間連続運転する場合もあれば、1週間に数時間しか運転しない場合もあります。

それでは、これらのポンプは一体どこで使われているのでしょうか。 電力、自動車、建設機械、鉄鋼、石油精製、石油化学、化学、食品、パルプ、医療など、国内外のほとんどの産業分野において、 ポンプは、送液、循環、加圧用などとして運転されています。 しかし、日常生活の中でほとんど目に触れることはありません。ポンプは機器の中に組み込まれたり、配管の途中に設置されたり、あるいは地下に設置されているなどの理由から目立たない存在なのです。 しかし、ポンプは各産業をしっかりと支えています。

ここでは、国内外の産業分野において活躍している遠心ポンプについて、主なものを取りあげて概況を説明します。

1-1-1 渦巻ポンプ

ポンプの中で最も数多く使用されているのが渦巻ポンプです。ほとんどの産業分野で使用されています。このポンプは、材料、吐出し量、圧力などさまざまな要求に対応できます。渦巻ポンプをここでは、汎用渦巻ポンプ、産業用渦巻ポンプ及びAPI渦巻ポンプに分けて説明します。

汎用渦巻ポンプはポンプメーカで完全に標準化されていて、低価格でかつ短納期に対応できるようポンプメーカでは在庫しています。 ポンプは極限まで肉厚を薄くしたり、材料をプラスチックにしたりして低価格になるように設計しています。低価格なこともあって、 性能低下などの問題があったときに、修理して再使用するよりも新規のポンプに交換します。

産業用渦巻ポンプは各種産業のさまざまな要求に応える必要があるために、汎用渦巻ポンプとは異なり、少し頑丈なポンプです。長寿命も期待されるので、修理して再使用されます。

API渦巻ポンプは、米国石油協会が発行している設計規格API 610を適用して製造されたポンプです。API 610は世界で一番厳しい設計規格です。 また、購入者の仕様にも厳しさがあるために、ポンプメーカではそれに対応するために多くの手間をかけています。このポンプでは、最新の技術を適用するために、要素技術の開発が必要になることがあります。

1-1-2 両吸込ポンプ

このポンプも渦巻ポンプですが、羽根車が両吸込形をしていて、軸受が羽根車の両側にあるので、吐出し量の多い場合に適しています。ポンプのケーシングは軸中心で横水平に2つ割りになっているので、ポンプを分解するのが容易です。飲料水を家庭などに供給するときに真価を発揮します。

執筆:外山技術士事務所 所長 外山幸雄

『遠心ポンプの基礎講座』の目次

第1章 ポンプの基礎

第2章 ポンプの豆知識

第3章 ポンプの性能

第4章 ポンプの選定

第5章 知っておきたいポンプの技術

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