潤滑油について
潤滑グリースについて
グリースは、基油、増ちょう剤および添加剤から成る半固体状の潤滑剤である。同種類のグリースも、銘柄による性能の差が大きいので、選定上注意が必要である。
グリースの基油には、鉱油またはシリコーン油、ジエステル油などの合成油が使われる。 グリースの潤滑性能は、主として基油の潤滑性能によって決まるので、潤滑油の選定の場合と同様に基油粘度を重視しなければならない。一般に、低温や高速には低粘度基油のグリースが適しており、高温や高荷重には高粘度基油のグリースが適している。しかし、グリースでは、増ちょう剤も潤滑性能に関係するので、潤滑油の場合と同一に扱うことはできない。
潤滑グリースの増ちょう剤として、各種の金属石けんのほかにべントナイトなどの無機質増ちょう剤、あるいはウレア、ふっ素化合物などの耐熱性有機質増ちょう剤が使われる。 増ちょう剤の種類とグリースの滴点(※注1)とは密接な関係があり、一般には、滴点の高いグリースは使用可能の上限温度が高い。しかし、高滴点増ちょう剤を使ったグリースでも、基油の耐熱性が低い場合には、その上限温度は低くなる。 グリースの耐水性は、増ちょう剤の耐水性によって決まる。ナトリウム石けんグリースやナトリウム石けんを含む混合基グリースは、水のかかる所や高湿度の使用箇所では乳化するので使用に適さない。
(※注1)滴点とは、規定の小容器中でグリースを加熱した場合、グリースが流動状態となり、滴下するようになる温度。
グリースには、必要に応じて酸化防止剤、防せい剤、極圧剤などが添加されている。 重荷重や衝撃荷重を受ける使用条件では、極圧添加剤の入ったグリースを使用し、長期間グリースを補給しない場合には、酸化防止剤の入ったグリースを選定する。
原則として、銘柄の異なるグリースを混合してはならない。異種類の増ちょう剤を使ったグリースを混合すると、グリース構造を破壊することがある。 また、増ちょう剤が同種類のグリースでも、添加剤などが異なるために、お互いに悪影響を及ぼすことがある。
原則として、銘柄の異なるグリースを混合してはならない。異種類の増ちょう剤を使ったグリースを混合すると、グリース構造を破壊することがある。 また、増ちょう剤が同種類のグリースでも、添加剤などが異なるために、お互いに悪影響を及ぼすことがある。
ちょう度番号 | 0号 | 1号 | 2号 | 3号 | 4号 |
---|---|---|---|---|---|
ちょう度(※注2)1/10mm | 355~385 | 310~340 | 265~295 | 220~250 | 175~205 |
使用条件・用途 | 集中給脂用、フレッチングを起こしやすい場合 | 集中給脂用、フレッチングを起こしやすい場合、低温用 | 一般用、密封玉軸受用 | 一般用、密封玉軸受用、高温用 | 高温用、グリースでシールする場合 |
(※注2)ちょう度:規定重量の円すい形コーンが、グリースに侵入した深さ(1/10mm単位)を表わし、数値が大きいほど軟らかい
軸油の潤滑油
軸受の潤滑油には、耐荷重能が高く酸化安定性が良く、防せい性能の良い高度精製鉱油または合成油が用いられる。潤滑油の選定に当っては、運転温度において適正な粘度となる油の選定がまず重要なことである。粘度が低過ぎると、油膜形成が不十分となり、異常摩耗、焼付きの原因となる。逆に粘度が高過ぎると、粘性抵抗により発熱したり、動力損失を大きくする。油膜の形成には軸受の回転速度や荷重も影響する。一般には、回転速度が速いほど低粘度油を用い、荷重が大きくなるほど、軸受が大形になるほど高粘度の潤滑油を使用する。 普通の使用条件では、運転中の軸受周りの油温においては粘度が目安となる。
軸受の形式 | 運転時の動粘度 |
---|---|
玉軸受・円筒ころ軸受 | 13mm 2/S以上 |
円すいころ軸受・自動調心ころ軸受 | 20mm 2/S以上 |
スラスト自動調心ころ軸受 | 32mm 2/S以上 |
[備考]:1mm 2/S=cSt(センチストークス)
油の交換周期は、使用条件や油量などによって異なる。 一般に、運転温度が50℃以下で、ごみの少ない良好な環境下で使用される場合は、1年に1回程度の交換でよい。しかし、油温が100℃程度になるような場合には、3か月ごとかそれ以内で交換するようにする。また、水分の浸入がある場合や、油浴潤滑で異物の混入がある場合には、さらに交換の周期を短かくする必要がある。 銘柄の異なる潤滑油の混合は、グリースの場合と同様に避けなければならない。
運転温度 | 回転速度 | 軽荷重または普通荷重 | 重荷重または衝撃荷重 |
---|---|---|---|
-30~0℃ | 許容回転数以下 | ISO VG 15、22、32(冷凍機油) | - |
0~50℃ | 許容回転数の50%以下 | ISO VG 32、46、68(軸受油 タービン油) | ISO VG 45、68、100(軸受油 タービン油) |
許容回転数の50~100% | ISO VG 15、22、32(軸受油 タービン油) | ISO VG 22、32、46(軸受油 タービン油) | |
許容回転数以上 | ISO VG 10、15、22(軸受油) | - | |
50~80℃ | 許容回転数の50%以下 | ISO VG 100、150、220(軸受油) | ISO VG 150、220、320(軸受油) |
許容回転数の50~100% | ISO VG 46、68、100(軸受油 タービン油) | ISO VG 68、100、150(軸受油 タービン油) | |
許容回転数以上 | ISO VG 32、46、68(軸受油 タービン油) | - | |
80~110℃ | 許容回転数の50%以下 | ISO VG 320、460(軸受油) | ISO VG 160、680(軸受油 ギヤー油) |
許容回転数の50~100% | ISO VG 150、220(軸受油) | ISO VG 220、320(軸受油) | |
許容回転数以上 | ISO VG 68、100(軸受油 タービン油) | - |
- [備考]
- 1.許容回転数は、軸受寸法表に記載されている油潤滑の場合を用いる。
- 2.冷凍機油(JIS K2211)、軸受油(JIS K2239)、タービン油(JIS K2213)、ギヤー油(JIS 2219)参照。
- 3.上表の左欄に示す温度範囲で、運転温度が高温側の場合には、高粘度の油を使用する。