照明のことが分かる講座

照明とは人々の生活に役立つ光の仕事のことを言います。 照明の主光源がLEDに変わりつつあるなか、照明を知ることで生活はより豊かに変わります。 そこで本連載では照明の基礎知識から光源や照明器具の種類、照明方式、照明がもたらす心理・ 生理効果を分かりやすくご紹介していきます。
第1章 照明の基礎知識

1-2 照度のお話

0.0003ルクスから10万ルクスまで

照度とは光で照らされた場の明るさのことを言います。明るさはルクス(lx)という単位で数量化され、例えばkgの重さ加減を重量計で計るように、照度計によって測定できます。

今日では数字で照度が表示されるデジタル照度計がよく使われますが、測定可能な照度範囲の狭いもので、精度にあまり拘らなければ一般の人でも購入可能な安価なものも市販されています。またスマートフォンが照度計にもなるフリーソフトもありますが、誤差も生じやすいので慣れないと使いこなしが難しい、といえます。(写真1 照度計で測定)

性能に優れた照度計で晴れた日中を測定すると、季節にもよりますが日向で大体10万ルクスの明るさが計測されます。曇り空で1万ルクス前後です。 また満月時の明るさは、人工的な光の影響を受けない暗い場所で0.2ルクスくらいになります。0.2ルクスは色こそ見分けることが難しいですが、新聞の見出しくらいの文字は一般的な現代人の視力でも見ることが可能です。

月明りより暗い自然光に星明りがあります。0.0003ルクスと言われ、普通の照度計では測定ができません。この照度、少なくとも人工的な明るさに慣れている現代人とって何も見えないほど闇の状態といえますが、目が暗さになれると空間の輪郭がおぼろげに見えてきます。(図1 照度と物の見え方の関係)

ところでルクスとはどのような意味があるのでしょうか?その語源は一説によるとluxuriantからきているようで、「贅沢をする」、「楽しむ」という意味があります。

電灯照明以前の夜はそれこそ暗闇で、わずかな明るさを得るにも高価な油やろうそくを使用しなければならず、そのような光の下で生活を楽しむことは贅沢なことでもあったからでしょうか?

照度は時代とともに変化

JIS(日本工業規格)では住宅や事務所、店舗など屋内の施設はもちろん、道路や公園、広場などの屋外施設についても照度基準として推奨照度を規定しています。この基準は時代の社会・経済情勢の影響を受けながら変化しています。

例えば今日、照明の学術面での中枢に照明学会があります。学会の創立がおよそ100年前になりますが、この頃の資料によると一般事務室の標準照度が30~40ルクスとされています。60年ほど前でも100~200ルクスでした。 今日では一般事務室の推奨値が500~1000ルクスなので、半世紀以上前の人工照明空間はいかに暗かったかが容易に想像できます。

照明は質が良ければ、照度が高いほど物は良く見え、作業も行いやすくなります。しかしそのために照明器具の灯数増え、電気代もかさむことで照明費がかかります。さらに照度を2倍にしたからといって作業の行いやすさが倍になるわけではなく、また約2000ルクスあたりをピークにその頭打ちが起こります。 したがって空間や作業面の明るさは予めその点を熟慮して設定することが望まれるのです。

写真1 照度計で明るさを測定

写真1 照度計で明るさを測定

図1 照度と視力の関係

図1 照度と視力の関係

執筆: 中島龍興照明デザイン研究所 中島龍興

『照明のことが分かる講座』の目次

第1章 照明の基礎知識

第2章 光源の種類と特徴

第3章 LED照明器具の選び方

第4章 照明方式

第5章 照明の視覚心理・生理

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