真空引きの方法
エアパージとは
冷媒配管の中には、冷媒ガス(R410A)とオイルのみが循環できるよう整えなくてはなりません。しかしエアコンを設置する時には、どうしても配管内に空気が入ってしまいます。 空気が入った状態でエアコンを作動させると、室外機から冷媒ガスが循環されてきた際に空気中の水分が凍り、冷媒回路を塞いでしまうでしょう。 すると「冷えない」「温まらない」などの不具合が起きます。また凍った不純物が配管の内部を傷つけ、圧縮機の故障や漏電などを引き起こすことも。そのため、エアコン設置時にはエアパージを行って配管内の空気を排出する作業が必要となるのです。
現在は、真空ポンプを使用して配管内部を真空にする「真空引き」という方法が主流です。ポンプを使って配管内の気圧をどんどん下げていくと、水の沸点もどんどん下がっていきます。外気温よりも水の沸点が下がれば、配管内の水分が蒸発していくでしょう。 この気体を外部に排出することで、配管内の空気や水分といった不純物が効率よく排出できるというわけです。
真空引きの手順
では、具体的な真空引きの手順をご紹介していきましょう。
まずは「真空ポンプ」と「ゲージマニホールド」の2つを用意してください。
●真空ポンプ…配管内を真空にするポンプ。手動式もありますが、電動式が主流です。
●ゲージマニホールド…配管内の真空度を計る道具です。
- 真空ポンプ
- ゲージマニホールド
- (1)室外機の側面にあるサービスポートのナットを取り外します。この時、2ヶ所あるサービスバルブはまだ全閉しておきます。
- (2)真空ポンプにゲージマニホールドを装着し、ゲージマニホールドの低圧側と室外機の低圧側サービスポートをチャージホースで接続します。緩めすぎず締めすぎないように注意しましょう。
- (3)ゲージマニホールドのバルブを開き、真空ポンプを電源に接続してスイッチを入れてください。真空引きが開始され、真空ゲージの数値が下がっていきます。そのまま10分~15分ほど放置しましょう。 (業務用エアコンの場合は1時間ほど)ちなみにポンプから煙が出ることがありますが、これはオイルミストであり故障ではありません。
- (4)真空ゲージの数値が「-0.1MPa」になっていることを確認したら、気密テストを行います。真空ゲージのバルブを閉め、真空ポンプの逆流防止バルブを閉じてからポンプを止めてください。5分ほど放置し、ゲージマニホールドの数値が「0」側に動いていないか確認します。動いていれば漏れの可能性があるので、各接続部を確認してもう一度真空引きを行いましょう。
- (5)バルブを開く前にガス漏れ確認を行います。2つのサービスバルブのうち、細い方に六角レンチを使って90度開いてください。5秒程度でまたすぐに閉め、ガス漏れが発生していないかチェックしてください。
- (6)すべてのバルブが閉まっていることを確認し、チャージホースを室外機のサービスポートから取り外します。
- (7)冷媒を配管内に充填します。詳細は「冷媒充填」の項へ。サービスバルブを2つとも全開にします。
- (8)2つのサービスバルブ、サービスポートにキャップを装着して完了です。
真空引きの目的は、配管内を真空にすること自体ではなく配管内を乾燥させることです。雨の日に作業する場合や濡れた配管に真空引きする場合は時間を長くするなど、臨機応変に対処していきましょう。
エアコン本来の性能を発揮させ、寿命を伸ばすには真空引きの作業は必須と言えます。とは言え手順がややこしい作業でもあり、一歩間違えると真空ゲージを壊したりせっかく真空にした配管内にまた空気が入ってしまったりするので、しっかりと方法を確認しておきましょう。