塗料・塗装の何でも質問講座
5-3 樹脂の成り立ち(2)
2.樹脂の成り立ちについて
2.2 二重結合を有する混成軌道について
本稿では図5-14に示すエチレンやベンゼンのように2重結合を有する分子の成り立ちについて説明する。はじめに、エチレンとエタンとの違いは何かをまとめて見たい。エタンのC原子は図5-10に示すように、2s、2p軌道の混成により作られた4つ混成軌道ユニットを出発点にしている。これをsp3混成軌道と呼び、図5-13に示すメタン、エタン、プロパン分子が形成されることを前回、学習した。これらの分子はC、H原子同士が単結合(共有結合)するが、エチレンには2重結合が存在する。共有結合はσ結合とπ(パイ)結合の2つからなり、単結合のσ結合に比べて2重結合のπ(パイ)結合は分かりにくい。π(パイ)結合がどのように形成されるかを理解すれば、両者の違いを認識できる。

共有結合ゆえ、σ、π(パイ)結合とも1つの軌道に2ヶの電子が存在することは同じであるが、軌道形成の仕方が異なる。図5-15に示すエチレン分子(H2C=CH2)を見ると、C原子1つから-CH結合は2つで、C-C間もσ結合であるから、σ結合する混成軌道ユニットの数は3つである。3つの混成軌道ユニットを動く電子が衝突せずに、電子の反発を最少にする連結形態は正3角形がよい。C-C間のσ結合は1つあれば良く、C原子1つにつき、p軌道電子が1つ余ることになる。このp軌道電子は相手のいない不対状態であり、相手を欲しがっている。そこで、不対電子同士はそれぞれのp軌道を提供し、2つのp軌道を結合して、新軌道を作る。

電子は寂しがり屋だけれども、冒険心が強いからできるだけ広い場所を好み、行動範囲を広げる。要するに、π(パイ)結合とはC原子のp軌道同士が軌道を提供して、広い空間を作り、そこへ不対電子を2ヶ投入する作業である。σ結合する電子(σ電子)が水平方向に動くとすれば、π(パイ)結合する電子(π(パイ)電子)はσ結合のそれに比べて垂直軸方向に動くから、両者は衝突しない。さて、文頭のQ&Aを整理する。
- (1)エチレンとエタンとの違いは何か?という問いには、C-C間にπ(パイ)結合があるかないかである。エチレンにはπ(パイ)結合があり、2重結合で表示する。図5-14, 5-21に示すように2重結合はものすごく窮屈な結合であり、C-C間の運動性は束縛されており、いつでもラジカルとして切断される機会をうかがっている。
- (2)C-C間にはπ(パイ)結合が最大で何本、形成できるか?という問いには、2本と答える。3重結合を有するアセチレン分子までは形成できる。分子形成の過程を2重結合の次になるが、図5-22に示す。
文脈の関係で、順序よくにはならないが、sp2混成軌道の典型であるエチレン分子の形成について説明する。
●Step1
図5-15(a)に示すように、s軌道の電子を励起し、p軌道に飛ばす。必要な混成軌道ユニットの数は3つであり、s軌道から部屋を1つと、 p軌道から2つの部屋を提供するとsp2混成軌道と呼ばれる3つの混成軌道ユニットが準備できる。
●Step2
これら3つの混成軌道ユニットをどのように連結させるかを考える。ユニット間の電子が衝突しないこと、および電子の反発を最小限にするためには、正3角形の平面形態が良い。それゆえエチレン分子の形態は正3角形になる。図5-15(b)には、C原子の混成軌道ユニット同士がσ結合する様子、並びに、p軌道電子同士がお互いの軌道を提供して広い空間を形成する過程を見てもらいたい。
●Step3
sp2混成軌道で形成されたエチレン分子(H2C=CH2)を図5-16に示す。正3角形の平面形態を取るため、結合角 ∠CCH = 120°となる。また、p軌道電子はπ(パイ)電子となり、可動範囲が広がっていることが分かる。


π(パイ)軌道の電子(π(パイ)電子)は活発であり、高エネルギー線の照射や、触媒作用で図5-17(b)に示すようにπ(パイ)電子がラジカルになり、重合して、図5-17(c)に示すポリエチレンになる。エチレンがポリエチレンになる場合には、ラジカル同士がσ結合をするから、ポリマー分子鎖は結合角 ∠CCH = 108°となる。アクリル樹脂の原料である反応性モノマー(アクリル酸エステルやスチレンなど)も2重結合を有しており、ラジカル重合開始剤でポリマーになる。このようにπ(パイ)電子は反応性に富んでいる。
次に、π(パイ)電子の染み出し現象について説明する。図5-18に示すようにπ(パイ)電子は活発に動くのでp軌道を結ぶ線の上下に青で塗りつぶした部分をπ(パイ)電子が移動する“染み出し”現象4)が現れる。ベンゼンは図5-19に示すようにエチレンが3分子結合した分子形態を有しているから、π(パイ)電子の染み出し領域は拡大し、π(パイ)電子が図5-20に示す六角形の上下の赤枠とp軌道を自由に動き回っている。π(パイ)電子の移動速度は光の速さと同じで極めて速く、ベンゼン環内を高速で動き回る。外界から紫外線(UV)を照射されるとπ(パイ)電子の一部はラジカルになり、酸素と反応し、樹脂を分解するラジカルROO・を生成させる。その好例がベンゼン環を主体とするエポキシ樹脂塗膜であり、紫外線の照射時間の増大に伴い塗膜が内部崩壊し、チョーキングと呼ばれる粉状破壊に至る。ベンゼン環構造を有する塗膜は電子の偏りがないから耐薬品性は良好であるが、高速で動き回るπ(パイ)電子のせいで光劣化しやすい。




sp2混成軌道による分子形成のまとめとして、ベンゼンの分子模型を図5-21に示す。注目してもらいたいことは、2重結合があるとC=C間の回転ができないことである。環構造でC-C間の可動性は制限され、さらにベンゼン環濃度の増大により分子鎖のセグメント運動が束縛を受ける。その結果、Tgと耐熱性が上昇するが、たわみ性は低下する。いわゆる、硬くて脆い、硬脆(こうぜい)な塗膜になる。常温で使用するには可撓性のある樹脂成分をブレンドするか、橋かけ構造をアレンジする。表5-2に示すように、ポリエチレンのH原子をベンゼン環に替えるだけでTgは約220℃も上昇する。コンテナー類に使用されているPEは結晶化によりTgを40℃以上に高めて、実用強度を確保している。
表5-2 ポリマーのTgに及ぼすベンゼン環の影響


2.3 混成軌道で描いたエステル結合について
混成軌道の学習で、分子形成と結合角から分子形態をある程度、推定できるようになったかも知れない。前回(5-2)の図5-6に示すように、主鎖がエステル結合からなる長油性アルキド樹脂塗膜をアルカリ性水溶液に浸せきすると、塗膜は加水分解した。この原因として、電気陰性度からエステル結合は電荷の偏りが大きいためだと述べた。この事を電子の動きから推定できないかと考えた。電子の動きは光の速さと同じ位ゆえ、観察することはできないが、エステル結合をしている分子内で電子がどのように存在するかを考えて見る。まず、エステル結合を混成軌道で描いてみた。結果を図5-23に示す。C原子近傍に存在する図中の青丸電子は黒丸や茶色に比べて明らかに少ない。混成軌道の電子はC, Oの所属を離れ、可動範囲を広げるから動的な存在割合は分からない。また、エステル結合には2重結合があるからπ(パイ)電子が存在する。図5-23に示すように、Cは2ヶのOと結合しており、O原子内には非共有電子対が存在するため電子の存在割合はO側に密である。それゆえ、電子はOに偏っていると単純に説明したいが、電子の動きがCとO側でどのように異なるのかもっと考察する必要がある。本稿ではエステル結合を混成軌道で描けたことで良しとする。

〔参考文献〕
1)J. Glazer :J. Polymer Sci., 13, 355 (1954)
2)中道敏彦、坪田実:“トコトンやさしい塗料の本”, 日刊工業新聞社, p.117 (2008)
3)中道敏彦:“塗料の流動と塗膜形成”, 技報堂出版, p.241, p.267 (1995)
4)平山令明:“暗記しないで化学入門”, 講談社, p.29, 76 (2004)
『塗料・塗装の何でも質問講座』の目次
第1章 塗料・塗膜の白化現象
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1-1白く見えるとはどんなこと塗装面に現れる白化には水分が関与して、発生することが多々あります。
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1-2散乱強度と隠ぺい力前回の図1-4は白黒がはっきりした良い結果でした。ポリマーと屈折率の差が小さいCaCO3粒子を分散させた塗膜は粒子/ポリマー界面で可視光線の多くは
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1-3隠ぺい力に関する話題実際の塗装作業においては、図1-10(b)に示すように、下地が透けるため何回も上塗りをしたことがあります。
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1-4塗装時に白化する現象とその解析 (1) 結露の発生高温多湿な梅雨時にスプレー塗装をすると、かすみがかかったように白くぼけてつやが無くなることがあります。
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1-5塗装時に白化する現象とその解析 (2) 結露の防止結露とは空気中から水分が抽出される現象だと理解しました。
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1-6水性塗料の白化現象とその対策木工用の水性ボンドは身の回りの接着剤としてよく使用されています。
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1-7木工塗装テーブル面の白いシミ(1)前回までは塗装時や塗装過程での白化現象を取り上げましたが、今回と次回は我が家で起きた木工テーブル面の白化現象を取り上げます。
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1-8白いシミの原因とは白化機構を示した前回の図1-30に妥当性があるかどうかを見極めたいと思います。
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1-9白いシミの再現と解析実験前回示した図1-35の結果についてコメントすると次のようになります。
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1-10白いシミの対策法質問(30)前回のQ&Aを読んでいると、白化の原因は塗膜中へ侵入した水がZn粒子/バインダー界面へ偏析することであり、白化にはガラス転移温度Tgの影響が大きく、
第2章 塗料と塗装のことはじめ
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2-1塗料の必要条件と分類法第1章では塗料・塗装分野で見られる白化という欠陥現象を取り上げ、原因と対策を話してきたのに、第2章で何故「ことはじめ」になるのですか。
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2-2塗料(液体)から、塗膜(固体)への変化前回から持ち越した (1)塗料の形態による分類、(4)塗膜なってからの分類法について解説してください。
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2-3自動車補修塗装に必要な材料と器工具について(1)質問(10) 本章に対する著者の考え方については、既報2.1に示す答え(1)で示されていますが、いきなり自動車補修塗装とは、入門者にとって何だか難しい応用問題を与えられたようです。
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2-4自動車補修塗装に必要な材料と器工具について(2)質問(20) フェンダー部打痕部の板金修正が終わったら、次はどうするのですか。答え(20) 打痕部面積の5倍程度大きく塗膜をはがし、鋼板素地を露出させます。
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2-5自動車補修塗装工程について(1)今回も自補修塗装を取り上げます。板金修正で凹んだ箇所を引張り出し(既報図2-20)、塗膜をはく離した鋼板露出面(既報図2-22)からスタートします。
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2-6自動車補修塗装工程について(2)前回は、ポリパテ付け作業で終了しています。図2-11に示すStep3とは、パテ付け面の研磨までを指します。パテ付け、研磨作業までが元の板金面に復活させる成形作業になります。
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2-7自動車補修塗装工程について(3)前回は、Step4(図2-11参照)のプラサフ塗装とその研磨について解説しました。その中で、ブツ除去時やパテ研磨時にできる小穴を見逃さないためのガイドコートの使い方を説明しました。
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2-8自動車補修塗装工程について(4)前回は、上塗りのブロック塗りとスポット塗りについて説明しました。ほとんどの場合、上塗りにはクリヤが塗装されます。
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2-9スプレーガン-名手への道(1) ガンの基礎知識車の補修塗装ではスプレーガンの技能が大切だと言うことを理解できたと思います。
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2-10スプレーガン-名手への道(2) ガンを使いこなすStep既報2.5~2.7に示した車の補修塗装で、プラサフ塗装を始め、ボカシ塗り技法を含めたスプレーガンによる塗装技術を紹介しましたが、実際にどのようにやれば良いのか分からなかったと思います。
第3章 いろいろな塗り方
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3-1塗装方法を知ろう建築現場における塗装作業に注目すると、図3-1に示すように外壁を仕上げるのに、窓枠の養生をしている人、ローラ塗りをしている人、吹付け作業をしている人など様々です。
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3-2液膜転写法塗装方法を大別すると、図3-4に示すように、塗料を直接、被塗物に移行する直接法と、微粒子の霧にして移行する噴霧法になります。
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3-3直接法 はけ塗り前報の図3-4に示したように、塗装方法は直接法と噴霧法に大別されます。高速塗装に適する方式は、直接法の液膜転写法です。今回、紹介する方法は直接法で工具を介して塗る刷毛塗りとローラー塗りを取り上げます。
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3-4直接法 はけ塗り刷毛の代表例を図3-13に示します。5)塗料の種類、塗り面積等に応じて適切なはけを選びます。一般に合成樹脂調合ペイントのように粘度の高い塗料では硬い毛(黒い馬毛)のずんどう刷毛を、ウレタンワニスやラッカーのように粘度の低い塗料では、やわらかい毛(白い羊毛)のすじかい刷毛を用います。
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3-5直接法 ローラー塗りローラー塗りは刷毛塗りと工具が違うだけで、塗り方の基本は刷毛塗りと同じです。仕上がり面の平滑性は、はけ塗りに劣りますが、住宅の壁などの広い面積を塗るのに適しており、作業スピードは刷毛塗りに比べて3倍程度大きいようです。
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3-6直接法 浸せき塗り、しごき塗り浸せき塗りは、次に示す2方式に大別されます。1つ目は、塗料槽に被塗物をどっぷり浸け、引き上げて乾燥させるDipping方式(浸せき塗り、ジャブ漬け塗りなど)です。2つ目は、被塗物に塗料を押し込むしごき塗りです。
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3-7電着法 電着塗装の原理電気化学をベースとする塗装法が電着塗装です。水の電気分解を理解すれば、電着塗装の原理がわかります。
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3-8電着法 前処理工程-化成被膜自動車に代表される工業塗装では、電着塗装を行う前に、前処理として、洗浄・脱脂・化成皮膜処理が行われます。
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3-9電着法 電着塗装工程電着塗装装置の構成は一般的に次のようになります。
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3-10噴霧法 静電気と静電塗装スプレーガンによる微粒化の原理とガンの使い方に付いては、第2章 2.9と2.10スプレーガン名手への道で解説しました。本節では、噴霧塗装に静電気を利用すると、塗着効率が2倍以上も増大すると言う話を紹介します。
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3-11噴霧法 静電スプレーと塗料の電気抵抗値前回、静電スプレーは雷と同じ原理を利用していることを説明しましたが、液体塗料の電気抵抗値が静電スプレー作業において、どのような影響を及ぼすかについては言及しませんでした。
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3-12噴霧法 粉体塗料の塗り方塗料メーカーは粉体塗料を平均粒径30-40μmに調製して、供給しています。液体塗料をこの程度の噴霧粒子にするためには空気霧化だけでは不十分で、遠心力で液体分子を引きちぎったりしなければなりません。
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3-13噴霧法 粉体塗料の塗り方(つづき)今回は電界内を大量に移動しているフリーイオンの挙動に焦点を当て、塗装作業との関連について説明した後、コロナ放電式以外の塗り方について説明します。
第4章 塗料のルーツと変遷
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4-1はじめに執筆中の「塗料・塗装の何でも質問講座」はこの第4章から後半戦に入ります。本講座の終了時点で、読者の皆さんにはペンキのことをよく知ってもらい、風呂場や床などの住環境を塗り替えたり、自分で作った工作物を塗って仕上げるまでになってもらえたら嬉しいなと思います。足場が必要な高所はプロのペンキ屋に任せればよいのです。
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4-2塗料のルーツについてルーツ探しは誰もが興味を持っていますが、塗料・塗装のルーツとはと聞かれると、現代人は“塗料って何だ”と言って、あまり興味を示してくれないでしょう。一方、旧石器時代の方々に身振り手振りで塗料とは液状のもので、指や手にとって、彼方此方に塗るものだと伝えると、ものすごく理解が速いと思います。
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4-3紀元後~飛鳥・奈良時代大沼清利氏は塗料の変遷をバインダー(被膜になる成分で、ビヒクルソリッド)に着目して克明にまとめ、国立科学博物館発行の「技術の系統化調査報告 第15集(2010)」に、“塗料技術発展の系統化調査”として報告しています。
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4-4平安時代(日本最古の黒エナメル)図4-3に示す塗料の歴史の中に、平安時代に武器である楯(たて)と戟(げき)に塗る黒色エナメルの配合表が見つかりました。図4-6に示します。4)日本最古の塗料のレシピと言われています。奈良時代に作られた墨と同様に掃墨と膠が使用されています。
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4-5鎌倉~戦国・南蛮貿易~江戸時代さて、今回も表4-2の続きになりますが、戦国時代から江戸時代における塗料の変遷を追って行きます。戦国時代には出土品や文化財がほとんどなく、歴史的事実だけから塗料・塗装の変遷を探ることになります。仏教伝来後、漆は仏像や寺院建築に使用され発展して行くと同時に、戦国大名の武具にも塗られていたようです。庶民の生活レベルでは、ニカワ(膠)、柿渋が塗料のバインダー(ビヒクル成分)として、使用されていたようです。
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4-6江戸・黒船来航~明治時代イギリスで始まった産業革命と同様な大きな変化は日本では、黒船来航から明治維新にかけて現れます。鎖国が解かれて、政治体制が一気に変わり、鹿鳴館で代表される西洋文明が怒濤のごとく、日本に入ってきました。
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4-7油性塗料時代 洋館旧岩崎邸の塗装片から見た塗料と塗装 1日本における塗料・塗装の変遷は次の様に進んできたと考えられる。A.塗料・塗装のルーツは漆塗りである(表4-1参照)
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4-8油性塗料時代 洋館旧岩崎邸の塗装片から見た塗料と塗装 2前回の図4-10に塗膜断面の解析結果をまとめ、この中に
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4-9ラッカー時代 (その1 木綿と硝化綿)4-7 塗料の変遷(その5) において、日本における塗料の変遷をA~Gのようであると示したが、ココで大きな忘れ物をしてしまった。それは硝化綿ラッカー(以降、NCラッカー)で代表される繊維素系塗料の存在をすっかり見落としたことである。
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4-10ラッカー時代(その2 エアスプレーガンの誕生)日本では、第1次世界大戦後に残った火薬用NCの平和利用から塗料分野にNC(硝化綿、ニトロセルロース)が持ち込まれた。
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4-11合成樹脂塗料時代 (その1 油とはどんな化合物か)本章は終盤を迎えており、今回より数回で、ラッカー時代に開始された工業塗装をさらに発展させた合成樹脂塗料について解説する。
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4-12合成樹脂塗料時代 (その2 OPの塗料配合とSOPへの移行)1940年代から塗料用合成樹脂の代表になった油変性アルキド樹脂を4-12回と4-13回に分割して、紹介する。
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4-13合成樹脂塗料時代 (その3 油を真似た油変性アルキド樹脂)今回ようやく、”油を真似て作られた合成樹脂塗料“の話ができることになり、嬉しい限りである。ところで、油を真似てとは、どんなことかを説明したい。
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4-14合成樹脂塗料の発展連続被膜を形成する樹脂が塗膜の性能を大きく左右する。樹脂開発の経過は、表4-5(4-10掲載)で大まかに知ることはできるが、樹脂開発とそれに伴う塗料、塗装技術の変遷をまとめると、図4-29のように示される。13)
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4-15合成樹脂塗料の種類別生産量の推移塗料は流動状態で被塗物を覆い、被膜を形成する。よって、塗料の必要条件は、(1)流動すること、(2)くっつくこと、(3)固まることになる。
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4-16VOC削減型塗料-粉体とはどんな塗料なのか粉体塗装の事始めは鉄鋼をイオン化傾向の大きい亜鉛で被覆する金属溶射である。
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4-17VOC削減型塗料-水性とはどんな塗料なのか前回の粉体塗料に比べると水性塗料には随分と親しみと言うか、近しいものを感じる。それは小学生の頃に水性塗料の仲間である水彩絵の具を使って居たこと、あるいは、木材を加工してくっつけるのに水性ボンドを使用した記憶があるからであろう。
第5章 塗料をより深く理解するために
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5-1塗料(樹脂)選択の根拠について4章では、人類が時代と共に塗料とどのようにつき合ってきたのかを究明したく、塗料の変遷を取り上げてきた
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5-2樹脂の成り立ち(その1)塗料用樹脂の特徴は、主鎖を形成する分子鎖の化学結合に依存する。例えば、図5-6に示すように、フタル酸樹脂(長油性アルキド樹脂)は主鎖がエステル結合からなるため、アルカリ性水溶液に浸漬すると、加水分解され、塗膜が溶解する。
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5-3樹脂の成り立ち(その2)本稿では図5-14に示すエチレンやベンゼンのように2重結合を有する分子の成り立ちについて説明する。はじめに、エチレンとエタンとの違いは何かをまとめて見たい。
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5-4塗料用樹脂のはなし(1)著者が感銘を受けた樹脂の教書は北岡協三氏の著書である。恐れ多いことであるが、エポキシ樹脂の成り立ち部分を一部、引用させて頂く。
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5-5塗料用樹脂のはなし(2)主剤であるエポキシ樹脂(前回の図5-24)の両末端にはエポキシ基があり、硬化剤の有する活性水素H+と化学結合をして、クッキー塗膜を形成する。
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5-6塗料用樹脂のはなし(3)前回の図5-30に示すポリアミド樹脂を固定し、エポキシ当量が一連に異なるS、M、Lを使用した塗膜の網目構造は、どのようになるのかを考えて見る。
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5-7エポキシ樹脂(その1)準備中
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5-8エポキシ樹脂(その2)準備中
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5-9エポキシ樹脂(その3)準備中
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5-10大型構造物の塗装系と樹脂の役割(その1)準備中
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5-11大型構造物の塗装系と樹脂の役割(その2)準備中
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5-12大型構造物の塗装系と樹脂の役割(その3)準備中
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5-13塗料用アクリル樹脂入門(その1)準備中
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5-14塗料用アクリル樹脂入門(その2)準備中
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5-15塗料用アクリル樹脂入門(その3)準備中
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5-16塗料用アクリル・シリコーン樹脂、ふっ素樹脂とは準備中