テスターの基礎講座
5-4 テスターの保守方法
■テスターは測定器ですので、安全と確度の維持のために1年に1回以上は、保守と校正の点検を行うことをお勧めします。保守は下記項目を点検します。
- 落下などにより、パネルなどの外観が破損していないか点検します。
- 入力端子にテスト棒のプラグを差し込んだときに緩みはないか点検します。
- テスト棒のケーブルに芯線など、金属部分の露出していないか点検します。
- テスト棒のケーブルおよびヒューズが断線していないか点検します。
- 電池に液漏れがないか点検します。
点検で破損や断線が発見されたときには、そのままの状態で使用せずに、製造元へ修理依頼するか新品と交換してください。筆者は、液漏れ発生防止のため毎年一斉にテスターの電池を交換しています。また、長期間使用しないテスターでは、内蔵電池を抜いています。さて、校正ですが筆者は複数のテスターで測定し、許容範囲内であれば点検完了としています。また、有償ですが製造元でも校正は行っています。
■内蔵電池やヒューズを交換するときには、感電の恐れがあるため、下記状態でリヤケースや電池蓋(ふた)を外さないでください。必ず、電圧の加わっていないことを確認してから交換作業を行ってください。また、電源が切断(OFF)になっていることを確認してから交換作業を行ってください。そして、作業のときにはヒューズと電池以外の内部部品に手を触れないでください。
- 入力端子に電圧が加わった状態
- クランプセンサーに入力が加わった状態
- 測定している状態
■テスターを購入したときに予め付いている電池は、製品の機能や性能を検査するため、工場出荷時に組み込まれたモニター用電池です。そのため、電池寿命が新品電池より短い場合があります。電池の交換作業は、概ね下記手順で行います。ただし、テスターにより異なりますので取扱説明書で確認してください。
- 取り付けネジを緩めてリヤケースや電池蓋をパネルから外します。
- 消耗した電池を外します。
- 新品の電池を電池ホルダーへ極性を間違わないように、確実に填め込みます。
- リヤケースや電池蓋を、パネルにしっかりと填め合わせネジ止めします。
単3形(LR6)や単4形(LR03)などの1.5V電池を複数使用している場合には、新旧電池を混在させないでください。電池ホルダー内へ極性に注意してすべて新品と交換します。また、電池ホルダーへ電池を逆極性に入れるとヒューズが遮断します。
■「5-1 初心者が扱うと危険な測定」で説明したように、適切でない測定モードや測定レンジで測定すると保護用ヒューズが飛びます。そのヒューズ遮断と同時に回路部品が焼損しテスターが壊れてしまうこともあるので十分注意してください。さて、ヒューズの交換作業も、概ね下記手順で行います。ただし、テスターにより異なりますので取扱説明書で確認してください。
- 取り付けネジを緩めてリヤケースや電池蓋をパネルから外します。
- 回路基板上のヒューズホルダーから溶断したヒューズを抜き取ります。
- 新品のヒューズを、ヒューズホルダーに確実に填め込みます。
- リヤケースや電池蓋を、パネルにしっかりと填め合わせネジ止めします。
- 電源を投入(ON)し、各ファンクションモードの指示が正常に動作するか検査します。
交換用ヒューズは仕様と同定格のものを使用してください。また、ヒューズホルダーを導線でショート(短絡)することは絶対にしないでください。
【参考文献】
内田 裕之、小暮 裕明 共著『みんなのテスターマスターブック』オーム社、2015年11月20日(第1版第2刷)
三和電気計器『CX506a MULTITESTER 取扱説明書』(13-1405 2040 2040)
三和電気計器『PC710 DIGITAL MULTIMETER 取扱説明書』(04-1405 5008 6010)
三和電気計器『DCL31DR デジタルクランプメータ取扱説明書』(01-1507 2040 6011)
『テスターの基礎講座』の目次
第1章 テスターの概要
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1-1テスターとは何をするもの?多くの人は、テスターと言われると、店頭などで化粧品の特長や使用性を体感するためのお試し用店頭見本や、コンピューターのソフトウェアなどを動作検証する人を思い浮かべるのではないでしょうか。
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1-2テスターで何がわかるの?テスターで測れる基本的な値は、抵抗(導通)、電圧と電流です。いったい、それらを測定して、電気・電子回路の何がわかるのでしょうか。
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1-3テスターの種類テスターには、どのようなものがあり、何が測れるのでしょうか。まず、表示方式の違いでは、アナログメーターで表示するアナログテスターと液晶画面(LCD)で表示するデジタルテスターがあります。
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1-4アナログテスターの仕組みと構造アナログテスターは、測定値を「アナログメーター」で表示します。じつは、このアナログメーターが「直流電流計」そのものなのです。
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1-5デジタルテスターの仕組みと構造デジタルテスターは、測定値を「液晶ディスプレイ(LCD)」などに表示します。アナログテスターは「直流電流計」でしたが、デジタルテスターは「デジタル直流電圧計」なのです。
第2章 テスターの使い方
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2-1テスター各部の名称と役割スマートフォンなどは、説明書を読まなくとも操作ができます。それは、スマートフォンで何をするのかが、解っているからできることです。
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2-2テスト棒の使い方アナログテスターもデジタルテスターも、赤と黒のテスト棒をテスター本体の測定端子に差し込み使用します。
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2-3テスターの測定値の読み方アナログテスターでは、測定の前に零位調整とゼロオーム調整が必要なことは理解いただけたかと思います。
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2-4抵抗(導通)の測り方アナログテスターで導通検査や抵抗測定を行う場合には、スポーツと同じようにウォーミングアップ(準備体操)が必要となります。
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2-5電圧の測り方アナログテスターで電圧測定を行う場合には、前節の導通検査や抵抗測定とは異なりウォーミングアップ(準備体操)は必要ありません。
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2-6電流の測り方アナログテスターで電流測定を行う場合には、前節の電圧測定と同様ウォーミングアップ(準備体操)は必要ありません。
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2-7アナログ向きの使い方デジタルテスターは、測定モードによりテスト棒を当てたときに数字が細かく変化します。そのため、安定した表示に定まるまで少し時間がかかります。
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2-8デジタル向きの使い方デジタルテスターで測定を行う場合に、アナログテスターようなウォーミングアップ(零位調整やゼロオーム調整)は必要ありません。
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2-9機種によって違う測定機能これまでは、テスターの基本機能である電圧・電流・抵抗の測定について、テスターの仕組みと構造を交えて解説してきました。
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2-10テスターでやってはいけないことアナログテスターとデジタルテスターに共通する最大の御法度は、ファンクションを電流測定モードにして電圧を測ることです。
第3章 テスターの測定方法
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3-1導通の測定デジタルテスターには、導通検査ファンクションを持っているものが多くあります。
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3-2人体の抵抗測定人体の抵抗を測ってみたことはありますか。
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3-3電池の電圧測定「1-2 テスターで何がわかるの?」では、電池が消耗していると、豆電球が明るく点灯しないことを説明しました。
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3-4家庭用電源の電圧測定家庭用コンセントに供給されている電気は、交流電圧100Vの電源です。
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3-5カーバッテリーの電圧測定電気自動車やハイブリッドカーなど、車の進化とともにカーバッテリーも大きく進化を遂げています。バッテリーはエンジンの始動など、ランプ系(ヘッドライト、ブレーキランプなど)、電装系(パワーウインドウ、ワイパー、カーオーディオやカーナビなど)に電力供給をしています。
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3-6抵抗器の測定電子部品である抵抗器には色々な種類があります。
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3-7コンデンサーの測定日本ではコンデンサー、欧米ではキャパシターと呼ばれている電気を充放電する電子部品で、色々な種類があります。
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3-8コイル・トランスの測定コイルはインダクターとも呼ばれ、線材をらせん状にクルクルと巻いた構造をしています。
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3-9ダイオードの測定ダイオードを測定するためには、その特性を知っておく必要があります。
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3-10バイポーラトランジスターの測定最近の電子機器には、トランジスター等を内部に形成したICなどのモジュールが多く搭載され、3本足のトランジスターは見かけなくなりました。
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3-11電界効果トランジスターの測定「3-10 バイポーラトランジスターの測定」では、動作に関わるキャリアが2種類あるバイポーラトランジスターをご紹介しました。
第4章 テスターの活用法
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4-1ケーブルの断線チェックケーブルには、電源ケーブル、ステレオミニプラグケーブル、USBケーブルなど多くの種類があります。
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4-2電池ボックスのチェック電子機器には電源が必要不可欠ですので、色々な電池が使われています。
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4-3ACアダプターのチェックACアダプターのチェックをする場合には、短絡することもあるため、ケーブルを前後左右に折り曲げることをお勧めしません。
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4-4USB機器のチェックUSBは、ユニバーサル・シリアル・バス(Universal Serial Bus)の略称で、コンピューターに周辺機器を接続するためのシリアルバス規格の一つです。
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4-5スピーカーとイヤホンのチェックスマートフォンやパソコン、テレビやオーディオ機器の音の出口として、スピーカーやヘッドフォン、イヤホンなどがあります。ラジオを聞くにも欠かせない、音の出口となる部品の一つです。
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4-6オーディオアンプのチェック電子工作には欠かせない、あると便利なのがオーディオアンプです。
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4-7一石低周波増幅回路のチェックラジオは方式にもよりますが、同調・高周波増幅・中間周波増幅・検波・低周波増幅・周波数変換・局部発振など、高周波から低周波までの多くの回路から構成されており、チェックするにはそれなりの知識と経験が必要です。
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4-8さらにテスターを活用する方法(LEDチェッカー)LEDは色々なところに利用されていて、もはや生活には無くてはならない電子部品のひとつです。
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4-9さらにテスターを活用する方法(磁気チェッカー)磁石は身近にあり多くの電子機器にも利用されています。
第5章 使用上の注意点、トラブル対応
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5-1初心者が扱うと危険な測定大切なテスターを壊す最大の原因は、直流電流測定モードで電圧を測ってしまうトラブルです。
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5-2テスターの故障確認方法テスターも電子機器ですので、使用していると「測定値がおかしい」、「指針が振れない」、「電源が入らない」などの故障をすることが当然あります。
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5-3テスターとオームの法則「オームの法則」とは、電圧(V)[V] = 電流(I)[A]×抵抗(R)[Ω]の関係式です。
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5-4テスターの保守方法テスターは測定器ですので、安全と確度の維持のために1年に1回以上は、保守と校正の点検を行うことをお勧めします。
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5-5テスターの管理方法テスターは、測定に使っているとパネルやケースがどうしても汚れてきます。その汚れを落とそうと、シンナーやアルコール等で拭くことはしないでください。