テスターの基礎講座

テスターとは、電気・電子回路の状態や状況を知るために電気量を目に見える形に変換し間接的に測り、必要な電気量を判断をするために活用する機器です。本連載では、テスターの仕組み・構造から、測定方法まで、テスターを活用する上で知っておくべき基本的な事項を紹介していきます。
第1章 テスターの概要

1-3 テスターの種類

■テスターには、どのようなものがあり、何が測れるのでしょうか。まず、表示方式の違いでは、アナログメーターで表示するアナログテスターと液晶画面(LCD)で表示するデジタルテスターがあります。アナログタイプは、可動コイル型のメーターで、コイルに電流が流れ生じる磁力が永久磁石に働く力を利用しています。このため、電圧と電流を測定するときには、内部電源を使用しません。しかし。メーターを動作させるための電力を測定対象から取り出しますので、可動するための電力が最低限必要となります。すなわち、測定対象に(精度によりますが)影響を少なからず及ぼします。また、抵抗を測定するときには、内部電源が必要となります。一方、デジタルタイプは、液晶画面の表示と、センサーやワンチップマイコンを駆動するために、内部電源が必ず必要となります。しかし、アナログテスターに比べて、測定対象への影響がより少なくなっています。また、基本の電気量以外に、温度・湿度や照度・騒音などを測定する機能を持つものもあり、機種や種類も豊富な上に小型で安価です。

テスターの種類

■電流測定方式の違いでは、テスト棒タイプとクランプタイプがあります。一般的に、電流を測定するときには回路の一部を切断します。その切断した両端にテスト棒を当て電流を測定します。しかし、クランプタイプは回路を切断することなく、センサーを測定する線に「挟む」だけで電流を測定することができます。切断せず挟むため回路への影響も少なく、安全に大きな電流も測定することができるのです。そのため、クランプテスターやクランプメーターと呼ばれ、自動車の整備等に使われています。また、高周波のリーク(漏れ)電流測定にも使用されます。

■テスターは、メーカーや人により様々な分類がされ異なっています。筆者は大きさの違いで、据え置きタイプとハンディタイプ、ポケットタイプとカードタイプとしています。据え置きタイプは、文字通り設置して使用するテスターです。テスターというよりは測定器と呼ぶほうが相応しいかもしれません。今では珍しい真空管試験機(テスター)もこの分類です。ハンディタイプは、片手で持てるほどの大きさで、一番普及しているタイプです。ポケットタイプとカードタイプですが、どちらもポケットに収まる大きさです。しかし、内部電源の種類に違いがあります。ポケットタイプは単3型などであり、カードタイプはボタン電池です。

■このように、基本的な電圧・電流・抵抗から、コンデンサーの静電容量やコイルの誘導係数、ダイオードの順方向電圧やトランジスターの直流電流増幅率・ドレイン電流、周波数・電界強度、照度・騒音、気温・湿度・気圧等々を測定することができるのです。また、PCと接続し測定データを取り込むことや、無線で測定データを収集することもできます。最近では、正体不明のデバイスを判断し、特性を表示してくれるマルチデバイステスターまで出現しています。

執筆: 横浜みどりクラブ(JH1YMC)広報 内田 裕之(JG1CCL/W3CCL)

『テスターの基礎講座』の目次

第1章 テスターの概要

第2章 テスターの使い方

第3章 テスターの測定方法

第4章 テスターの活用法

第5章 使用上の注意点、トラブル対応

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