テスターの基礎講座
4-3 ACアダプターのチェック
■ACアダプターのチェックをする場合には、短絡することもあるため、ケーブルを前後左右に折り曲げることをお勧めしません。伸ばしたまま電圧を測定し正常値でなければ、ケーブルの断線または回路が壊れています。自己責任となりますが、筆者はACアダプターを分解してケーブルを取り出し、ケーブルの終端を短絡させ導通をチェックしたことがあります。経験上ACアダプターの電源回路が壊れていることは少なく、ACアダプターかDCプラグの根元部分が断線しています。また、電源回路とDCプラグケーブルのハンダ付けが、取れかかっていることもありました。
■ところで、トランス式ACアダプターの電圧は、機器を接続していない(負荷が無い)状態では、規格値より高い値となります。たとえば、規格値が「6V 200mA」であれば、電流を200mA流したときの電圧が約6Vとなり、無負荷では9V位にもなります。ただし、安定化回路を搭載しているトランス式ACアダプターや最近のスイッチング式ACアダプターでは、規格値とほぼ同じ値になります。また、一般的にACアダプターの寿命は、電源内部に使用している電解コンデンサーの寿命が関わってきます。このため周囲温度に注意する必要があり、風通しが良く熱が籠らない環境での使用をお勧めします。さて、電気製品のACアダプターには、「ケース、カバーを外したり、分解、改造はしないでください。感電の原因となります。」等の記載があります。そのため、壊れたときの修理は、メーカー修理、自己責任で修理、新しいACアダプターを購入から選択をすることになります。

■ACアダプターの丸いコネクターがDCプラグ、使用する機器に付いている差し込み側がDCジャックです。DCプラグは、外側と内側でプラス極とマイナス極になっています。そのACアダプターの極性ですが、極性統一型プラグが利用される前のACアダプターは、プラグの中央部がマイナス極、外側がプラス極のセンターマイナスが一般的でした。しかし、極性統一型プラグが登場してからは中央部にプラス極、外側をマイナス極としたセンタープラスのタイプが多くなりました。そのため、電池とACアダプターの切り替えスイッチ付きDCジャックでは、マイナス側が切り替わります。また、このEIAJ極性統一規格は、社団法人日本電子機械工業会(EIAJ)が、極性誤接続および電圧誤接続等を防止するために、DCプラグとジャックを標準化した規格です。特殊なプラグ形状であるため他と区別できるとともに、その形で電圧区分が分けられ、極性もセンタープラスで統一されています。さらに、ジャックもそれを前提にしているため、ACアダプターと機器の組み合わせによる障害はほぼ無いと言えます。しかし、完全に守られているわけでもないため、極性が不明のときには確認が必要です。また、DCプラグの種類には、極性統一型以外に、以前から使用されている外径φ5.5mmで内径φ2.1mmのDCプラグが多く利用されています。
■電源のプラスとマイナスを間違えると、最悪機器を壊してしまいます。ACアダプターには、わかりやすい記号で記載がありますので、必ず外側と内側のどちらがプラス極になっているかを確認してください。記載が無かったり不明な場合には、テスターで電圧を測定をしますが、極性が不明のときにはデジタルテスターが便利です。アナログテスターでは針が反対方向の左側に振り切れ、最悪テスターを壊してしまいます。ところで、注意はしていたのですが筆者はセンターマイナスの測定器に、誤ってセンタープラスのDCプラグを差し込み、定電圧回路のタンタルコンデンサーが破裂したことがあります。分解し回路を眺めながら、三端子レギュレーターとタンタルコンデンサーを交換し無事復活しましたが、白い煙と臭いは嫌なものです。同じ間違いをしないために、DCプラグ延長ケーブルとDCプラグを使って、センターの極性を変換するケーブルを製作することにします。
【参考文献】
内田 裕之、小暮 裕明 共著『みんなのテスターマスターブック』オーム社、2015年11月20日(第1版第2刷)
三和電気計器『CX506a MULTITESTER 取扱説明書』(13-1405 2040 2040)
三和電気計器『PC710 DIGITAL MULTIMETER 取扱説明書』(04-1405 5008 6010)
『テスターの基礎講座』の目次
第1章 テスターの概要
-
1-1テスターとは何をするもの?多くの人は、テスターと言われると、店頭などで化粧品の特長や使用性を体感するためのお試し用店頭見本や、コンピューターのソフトウェアなどを動作検証する人を思い浮かべるのではないでしょうか。
-
1-2テスターで何がわかるの?テスターで測れる基本的な値は、抵抗(導通)、電圧と電流です。いったい、それらを測定して、電気・電子回路の何がわかるのでしょうか。
-
1-3テスターの種類テスターには、どのようなものがあり、何が測れるのでしょうか。まず、表示方式の違いでは、アナログメーターで表示するアナログテスターと液晶画面(LCD)で表示するデジタルテスターがあります。
-
1-4アナログテスターの仕組みと構造アナログテスターは、測定値を「アナログメーター」で表示します。じつは、このアナログメーターが「直流電流計」そのものなのです。
-
1-5デジタルテスターの仕組みと構造デジタルテスターは、測定値を「液晶ディスプレイ(LCD)」などに表示します。アナログテスターは「直流電流計」でしたが、デジタルテスターは「デジタル直流電圧計」なのです。
第2章 テスターの使い方
-
2-1テスター各部の名称と役割スマートフォンなどは、説明書を読まなくとも操作ができます。それは、スマートフォンで何をするのかが、解っているからできることです。
-
2-2テスト棒の使い方アナログテスターもデジタルテスターも、赤と黒のテスト棒をテスター本体の測定端子に差し込み使用します。
-
2-3テスターの測定値の読み方アナログテスターでは、測定の前に零位調整とゼロオーム調整が必要なことは理解いただけたかと思います。
-
2-4抵抗(導通)の測り方アナログテスターで導通検査や抵抗測定を行う場合には、スポーツと同じようにウォーミングアップ(準備体操)が必要となります。
-
2-5電圧の測り方アナログテスターで電圧測定を行う場合には、前節の導通検査や抵抗測定とは異なりウォーミングアップ(準備体操)は必要ありません。
-
2-6電流の測り方アナログテスターで電流測定を行う場合には、前節の電圧測定と同様ウォーミングアップ(準備体操)は必要ありません。
-
2-7アナログ向きの使い方デジタルテスターは、測定モードによりテスト棒を当てたときに数字が細かく変化します。そのため、安定した表示に定まるまで少し時間がかかります。
-
2-8デジタル向きの使い方デジタルテスターで測定を行う場合に、アナログテスターようなウォーミングアップ(零位調整やゼロオーム調整)は必要ありません。
-
2-9機種によって違う測定機能これまでは、テスターの基本機能である電圧・電流・抵抗の測定について、テスターの仕組みと構造を交えて解説してきました。
-
2-10テスターでやってはいけないことアナログテスターとデジタルテスターに共通する最大の御法度は、ファンクションを電流測定モードにして電圧を測ることです。
第3章 テスターの測定方法
-
3-1導通の測定デジタルテスターには、導通検査ファンクションを持っているものが多くあります。
-
3-2人体の抵抗測定人体の抵抗を測ってみたことはありますか。
-
3-3電池の電圧測定「1-2 テスターで何がわかるの?」では、電池が消耗していると、豆電球が明るく点灯しないことを説明しました。
-
3-4家庭用電源の電圧測定家庭用コンセントに供給されている電気は、交流電圧100Vの電源です。
-
3-5カーバッテリーの電圧測定電気自動車やハイブリッドカーなど、車の進化とともにカーバッテリーも大きく進化を遂げています。バッテリーはエンジンの始動など、ランプ系(ヘッドライト、ブレーキランプなど)、電装系(パワーウインドウ、ワイパー、カーオーディオやカーナビなど)に電力供給をしています。
-
3-6抵抗器の測定電子部品である抵抗器には色々な種類があります。
-
3-7コンデンサーの測定日本ではコンデンサー、欧米ではキャパシターと呼ばれている電気を充放電する電子部品で、色々な種類があります。
-
3-8コイル・トランスの測定コイルはインダクターとも呼ばれ、線材をらせん状にクルクルと巻いた構造をしています。
-
3-9ダイオードの測定ダイオードを測定するためには、その特性を知っておく必要があります。
-
3-10バイポーラトランジスターの測定最近の電子機器には、トランジスター等を内部に形成したICなどのモジュールが多く搭載され、3本足のトランジスターは見かけなくなりました。
-
3-11電界効果トランジスターの測定「3-10 バイポーラトランジスターの測定」では、動作に関わるキャリアが2種類あるバイポーラトランジスターをご紹介しました。
第4章 テスターの活用法
-
4-1ケーブルの断線チェックケーブルには、電源ケーブル、ステレオミニプラグケーブル、USBケーブルなど多くの種類があります。
-
4-2電池ボックスのチェック電子機器には電源が必要不可欠ですので、色々な電池が使われています。
-
4-3ACアダプターのチェックACアダプターのチェックをする場合には、短絡することもあるため、ケーブルを前後左右に折り曲げることをお勧めしません。
-
4-4USB機器のチェックUSBは、ユニバーサル・シリアル・バス(Universal Serial Bus)の略称で、コンピューターに周辺機器を接続するためのシリアルバス規格の一つです。
-
4-5スピーカーとイヤホンのチェックスマートフォンやパソコン、テレビやオーディオ機器の音の出口として、スピーカーやヘッドフォン、イヤホンなどがあります。ラジオを聞くにも欠かせない、音の出口となる部品の一つです。
-
4-6オーディオアンプのチェック電子工作には欠かせない、あると便利なのがオーディオアンプです。
-
4-7一石低周波増幅回路のチェックラジオは方式にもよりますが、同調・高周波増幅・中間周波増幅・検波・低周波増幅・周波数変換・局部発振など、高周波から低周波までの多くの回路から構成されており、チェックするにはそれなりの知識と経験が必要です。
-
4-8さらにテスターを活用する方法(LEDチェッカー)LEDは色々なところに利用されていて、もはや生活には無くてはならない電子部品のひとつです。
-
4-9さらにテスターを活用する方法(磁気チェッカー)磁石は身近にあり多くの電子機器にも利用されています。
第5章 使用上の注意点、トラブル対応
-
5-1初心者が扱うと危険な測定大切なテスターを壊す最大の原因は、直流電流測定モードで電圧を測ってしまうトラブルです。
-
5-2テスターの故障確認方法テスターも電子機器ですので、使用していると「測定値がおかしい」、「指針が振れない」、「電源が入らない」などの故障をすることが当然あります。
-
5-3テスターとオームの法則「オームの法則」とは、電圧(V)[V] = 電流(I)[A]×抵抗(R)[Ω]の関係式です。
-
5-4テスターの保守方法テスターは測定器ですので、安全と確度の維持のために1年に1回以上は、保守と校正の点検を行うことをお勧めします。
-
5-5テスターの管理方法テスターは、測定に使っているとパネルやケースがどうしても汚れてきます。その汚れを落とそうと、シンナーやアルコール等で拭くことはしないでください。