テスターの基礎講座
3-6 抵抗器の測定
■電子部品である抵抗器には色々な種類があります。昔の真空管ラジオやテレビに使われていた、中央に穴が開きまるで土管のような形をした抵抗器には、抵抗値が直接記載されていました。また、リード部品と呼ばれるリード線が出ていて、基板の穴に挿入して実装するタイプの抵抗器は、カラーコードで抵抗値を表現しています。抵抗器に記載された帯の色と並び順で、値と精度がわかります。4桁表記の場合は、1番目と2番目のカラーコードがE24系列までの抵抗値に3番目のカラーコードが乗数、4番目が許容差となります。5桁表記の場合は、1番目から3番目のカラーコードがE96系列とE192系列の抵抗値に4番目のカラーコードが乗数となります。5番目が許容差となります。たとえば、帯が「茶・赤・黒・橙・茶」の5本である場合、数値は120で乗数は10^3(10の3乗)ですので120000[Ω] = 120[kΩ]、許容差は±1%の抵抗器ということになります。実際にテスターで測定して、118.8から121.2kΩが許容範囲です。しかし、「茶」、「赤」、「橙」は、判断しにくいときがありますので、テスターで測定することをお勧めします。
■また、抵抗器の大きさで定格電力が決まっています。電力Pは電圧Vと電流Iの積ですので、P[W] = V[V]I[A]となります。抵抗器に電流を流すとオームの法則により、抵抗器両端に電圧が発生します。たとえば、10kΩの抵抗器に10mAの電流を流せば100V(= 10[mA]×10[kΩ])の電圧が発生し、消費電力P[W] = V[V]I[A] = 100[V]×10[mA] = 1[W] となります。この電力は、抵抗の場合すべて熱となって放射されるため、消費電力が大きすぎると抵抗器の温度が上昇し、焼き切れたり溶けだしたりします。そのため、何Wまで電力を消費できる抵抗器であるのかを表しているのが定格電力です。しかし、抵抗焼損などの安全性を考えて、定格電力の1/2以下で使用してください。
●カラーコードと記号
カラー | 数値 | 乗数 | 許容差(記号) |
---|---|---|---|
茶 | 1 | 10^1 | ±1%(F) |
赤 | 2 | 10^2 | ±2%(G) |
橙 | 3 | 10^3 | |
黄 | 4 | 10^4 | |
緑 | 5 | 10^5 | ±0.5%(D) |
青 | 6 | 10^6 | ±0.25%(C) |
紫 | 7 | 10^7 | ±0.10%(B) |
灰 | 8 | 10^8 | ±0.05%(A) |
白 | 9 | 10^9 | |
黒 | 0 | 10^0 | |
金 | 10^-1 | ±5%(J) | |
銀 | 10^-2 | ±10%(K) |

■抵抗値は切りの良い整数値で揃えられているのではなく、1.3Ωや4.7Ωなど半端な数値になっています。これは1から10までを等比級数で分割した標準数「E系列」に従っているためです。12分割したE12系列や24分割したE24系列が一般的ですが、許容差1%以下の抵抗器ではE96系列やE192系列を使うこともあります。EはExponent(指数)を意味しています。たとえば、E12は1から10までを等比級数(10の12乗根)で分割したもので、等比級数ですから対数目盛では等間隔になります。対数は、抵抗値の増減が何%であるかを考えるときに適しています。
■現在、電子回路基板で使用される抵抗器の主流は、リード線がないチップ抵抗です。基板表面のパッド(穴なしのランド)に、ハンダで固定する表面実装型のチップ部品です。日本ではmm呼称ですが、欧米ではinch呼称が使われています。また、若干メーカーにより異なりますが標準的な呼称と定格電力です。たとえば、1608(イチロクゼロハチ)は、1.6mm×0.8mmで定格電力0.1Wです。また、筆者がよく使う2012(ニゼロイチニ)は、2.0mm×1.25mmで、定格電力0.25Wです。
●チップ抵抗器呼称と定格電力
mm呼称(日本) | inch呼称(欧米) | サイズ | 定格電力[W] |
---|---|---|---|
0402 | 01005 | 0.4mm x 0.2mm | 0.01 |
0603 | 0201 | 0.6mm x 0.3mm | 0.05 |
1005 | 0402 | 1.0mm x 0.5mm | 0.1 |
1608 | 0603 | 1.6mm x 0.8mm | 0.1 |
2012 | 0805 | 2.0mm x 1.25mm | 0.25 |
3216 | 1206 | 3.2mm x 1.6mm | 0.25 |
3225 | 1210 | 3.2mm x 2.5mm | 0.5 |
5025 | 2010 | 5.0mm x 2.5mm | 0.5 |
6432 | 2512 | 6.4mm x 3.2mm | 1 |
抵抗値は3桁あるいは4桁の英数字で抵抗器の表面に表示されています。ただし、小さなサイズのものには表示が無い場合もあります。3桁表記の場合は、1番目と2番目の数字がE24系列までの抵抗値に3番目の数字が乗数となります。4桁表記の場合は、1番目から3番目の数字がE96系列とE192系列の抵抗値に4番目の数字が乗数となります。また、Rは小数点を意味し、LはmΩ単位の小数点となります。
●チップ抵抗器呼称と定格電力
表記 | 数値[Ω] |
---|---|
1R0 | 1.0 |
1R2 | 1.2 |
1L3 | 1.3m |
100 | 10 |
101 | 100 |
102 | 1k |
103 | 10k |
1242 | 12.4k |
1R24 | 1.24 |
12L4 | 12.4m |
■抵抗器(レジスター)の抵抗値(レジスタンス)を測るときには、「3-2 人体の抵抗測定」で注意したように、指でテストピンをつまんでしまうと、人体の抵抗値によっては正しく測定できなくなります。抵抗器の正しい測り方は、抵抗器のリード線両端に、それぞれテストピンを押し当てます。もちろん、抵抗器は絶縁体の上に置く必要があります。そのため、「2-2 テスト棒の使い方」で述べた、ミノムシクリップやワニグチクリップなどの測定箇所を挟み込むクリップが便利です。また、チップ抵抗器の抵抗値を測るときには、専用クリップなどを使用することをお勧めします。テストピンで無理矢理押さえ込むと飛び跳ねることがあり、大切なチップ抵抗器が行方不明になってしまいますのでご注意ください。
【参考文献】
内田 裕之、小暮 裕明 共著『みんなのテスターマスターブック』オーム社、2015年11月20日(第1版第2刷)
三和電気計器『CX506a MULTITESTER 取扱説明書』(13-1405 2040 2040)
三和電気計器『PC710 DIGITAL MULTIMETER 取扱説明書』(04-1405 5008 6010)
『テスターの基礎講座』の目次
第1章 テスターの概要
-
1-1テスターとは何をするもの?多くの人は、テスターと言われると、店頭などで化粧品の特長や使用性を体感するためのお試し用店頭見本や、コンピューターのソフトウェアなどを動作検証する人を思い浮かべるのではないでしょうか。
-
1-2テスターで何がわかるの?テスターで測れる基本的な値は、抵抗(導通)、電圧と電流です。いったい、それらを測定して、電気・電子回路の何がわかるのでしょうか。
-
1-3テスターの種類テスターには、どのようなものがあり、何が測れるのでしょうか。まず、表示方式の違いでは、アナログメーターで表示するアナログテスターと液晶画面(LCD)で表示するデジタルテスターがあります。
-
1-4アナログテスターの仕組みと構造アナログテスターは、測定値を「アナログメーター」で表示します。じつは、このアナログメーターが「直流電流計」そのものなのです。
-
1-5デジタルテスターの仕組みと構造デジタルテスターは、測定値を「液晶ディスプレイ(LCD)」などに表示します。アナログテスターは「直流電流計」でしたが、デジタルテスターは「デジタル直流電圧計」なのです。
第2章 テスターの使い方
-
2-1テスター各部の名称と役割スマートフォンなどは、説明書を読まなくとも操作ができます。それは、スマートフォンで何をするのかが、解っているからできることです。
-
2-2テスト棒の使い方アナログテスターもデジタルテスターも、赤と黒のテスト棒をテスター本体の測定端子に差し込み使用します。
-
2-3テスターの測定値の読み方アナログテスターでは、測定の前に零位調整とゼロオーム調整が必要なことは理解いただけたかと思います。
-
2-4抵抗(導通)の測り方アナログテスターで導通検査や抵抗測定を行う場合には、スポーツと同じようにウォーミングアップ(準備体操)が必要となります。
-
2-5電圧の測り方アナログテスターで電圧測定を行う場合には、前節の導通検査や抵抗測定とは異なりウォーミングアップ(準備体操)は必要ありません。
-
2-6電流の測り方アナログテスターで電流測定を行う場合には、前節の電圧測定と同様ウォーミングアップ(準備体操)は必要ありません。
-
2-7アナログ向きの使い方デジタルテスターは、測定モードによりテスト棒を当てたときに数字が細かく変化します。そのため、安定した表示に定まるまで少し時間がかかります。
-
2-8デジタル向きの使い方デジタルテスターで測定を行う場合に、アナログテスターようなウォーミングアップ(零位調整やゼロオーム調整)は必要ありません。
-
2-9機種によって違う測定機能これまでは、テスターの基本機能である電圧・電流・抵抗の測定について、テスターの仕組みと構造を交えて解説してきました。
-
2-10テスターでやってはいけないことアナログテスターとデジタルテスターに共通する最大の御法度は、ファンクションを電流測定モードにして電圧を測ることです。
第3章 テスターの測定方法
-
3-1導通の測定デジタルテスターには、導通検査ファンクションを持っているものが多くあります。
-
3-2人体の抵抗測定人体の抵抗を測ってみたことはありますか。
-
3-3電池の電圧測定「1-2 テスターで何がわかるの?」では、電池が消耗していると、豆電球が明るく点灯しないことを説明しました。
-
3-4家庭用電源の電圧測定家庭用コンセントに供給されている電気は、交流電圧100Vの電源です。
-
3-5カーバッテリーの電圧測定電気自動車やハイブリッドカーなど、車の進化とともにカーバッテリーも大きく進化を遂げています。バッテリーはエンジンの始動など、ランプ系(ヘッドライト、ブレーキランプなど)、電装系(パワーウインドウ、ワイパー、カーオーディオやカーナビなど)に電力供給をしています。
-
3-6抵抗器の測定電子部品である抵抗器には色々な種類があります。
-
3-7コンデンサーの測定日本ではコンデンサー、欧米ではキャパシターと呼ばれている電気を充放電する電子部品で、色々な種類があります。
-
3-8コイル・トランスの測定コイルはインダクターとも呼ばれ、線材をらせん状にクルクルと巻いた構造をしています。
-
3-9ダイオードの測定ダイオードを測定するためには、その特性を知っておく必要があります。
-
3-10バイポーラトランジスターの測定最近の電子機器には、トランジスター等を内部に形成したICなどのモジュールが多く搭載され、3本足のトランジスターは見かけなくなりました。
-
3-11電界効果トランジスターの測定「3-10 バイポーラトランジスターの測定」では、動作に関わるキャリアが2種類あるバイポーラトランジスターをご紹介しました。
第4章 テスターの活用法
-
4-1ケーブルの断線チェックケーブルには、電源ケーブル、ステレオミニプラグケーブル、USBケーブルなど多くの種類があります。
-
4-2電池ボックスのチェック電子機器には電源が必要不可欠ですので、色々な電池が使われています。
-
4-3ACアダプターのチェックACアダプターのチェックをする場合には、短絡することもあるため、ケーブルを前後左右に折り曲げることをお勧めしません。
-
4-4USB機器のチェックUSBは、ユニバーサル・シリアル・バス(Universal Serial Bus)の略称で、コンピューターに周辺機器を接続するためのシリアルバス規格の一つです。
-
4-5スピーカーとイヤホンのチェックスマートフォンやパソコン、テレビやオーディオ機器の音の出口として、スピーカーやヘッドフォン、イヤホンなどがあります。ラジオを聞くにも欠かせない、音の出口となる部品の一つです。
-
4-6オーディオアンプのチェック電子工作には欠かせない、あると便利なのがオーディオアンプです。
-
4-7一石低周波増幅回路のチェックラジオは方式にもよりますが、同調・高周波増幅・中間周波増幅・検波・低周波増幅・周波数変換・局部発振など、高周波から低周波までの多くの回路から構成されており、チェックするにはそれなりの知識と経験が必要です。
-
4-8さらにテスターを活用する方法(LEDチェッカー)LEDは色々なところに利用されていて、もはや生活には無くてはならない電子部品のひとつです。
-
4-9さらにテスターを活用する方法(磁気チェッカー)磁石は身近にあり多くの電子機器にも利用されています。
第5章 使用上の注意点、トラブル対応
-
5-1初心者が扱うと危険な測定大切なテスターを壊す最大の原因は、直流電流測定モードで電圧を測ってしまうトラブルです。
-
5-2テスターの故障確認方法テスターも電子機器ですので、使用していると「測定値がおかしい」、「指針が振れない」、「電源が入らない」などの故障をすることが当然あります。
-
5-3テスターとオームの法則「オームの法則」とは、電圧(V)[V] = 電流(I)[A]×抵抗(R)[Ω]の関係式です。
-
5-4テスターの保守方法テスターは測定器ですので、安全と確度の維持のために1年に1回以上は、保守と校正の点検を行うことをお勧めします。
-
5-5テスターの管理方法テスターは、測定に使っているとパネルやケースがどうしても汚れてきます。その汚れを落とそうと、シンナーやアルコール等で拭くことはしないでください。