テスターの基礎講座

テスターとは、電気・電子回路の状態や状況を知るために電気量を目に見える形に変換し間接的に測り、必要な電気量を判断をするために活用する機器です。本連載では、テスターの仕組み・構造から、測定方法まで、テスターを活用する上で知っておくべき基本的な事項を紹介していきます。
第2章 テスターの使い方

2-6 電流の測り方

■アナログテスターで電流測定を行う場合には、前節の電圧測定と同様ウォーミングアップ(準備体操)は必要ありません。しかし、すっかりお馴染みの「零位調整」を、測定するときには必ず確認してください。もしも、アナログメーターの零位置がズレているようであれば、零位調整器を回して正しい位置に調整します。また、アナログテスターでは、電流測定モードと電流レンジがセットになっていますので、電流を測定する最適なレンジのファンクションを選択します。

■たとえば、前節でも登場した簡単なLED点灯回路の電流測定では、抵抗器の電圧を1.2Vとすると、オームの法則から電流[A] = 電圧[V] / 抵抗[Ω] = 1.2[V] / 240[Ω] = 5.0[mA]であることが解ります。そこで「DCmA 30レンジ」を選択します。さて、実際の測定では回路の一部を切断して、テスターを直列に接続します。赤のテスト棒を切断した回路のプラス側(電池の+に接続側)へ、黒のテスト棒を切断した片側(電池のマイナスに接続側)へ押し当て測定します。指針は5mA付近を示すはずです。このように、電流は測定対象と直列に測定することになります。電流値が不明のときには、大きいレンジから確認し最適なレンジで最終測定することをお勧めします。また、電流レンジの切り替えとOFFにするときには、テスト棒を測定対象から必ず離してから行ってください。特に電流測定のときには、大切なテスターを壊さない鉄則です。

テスターの使い方

■デジタルテスターで電流測定を行う場合にも、ウォーミングアップ(準備体操)は必要ありません。また、デジタルテスターでは、電流レンジは自動で判断され単位も自動表示されます。そのため、安定した表示になるまで少し待ってから値を読み取る必要があります。たとえば、前述の簡単なLED点灯回路の電流測定では、数mAの直流であることが解りますので、ファンクションスイッチとセレクトスイッチにより「DCmAレンジ」を選択します。アナログテスターと同じように、回路の一部を切断しテスト棒を押し当て測定します。このとき約5mA(レンジにより表示桁数は異なる)が表示されます。さらに、レンジホールド機能を持っているテスターでは、手動で単位と小数点位置を設定することが可能です。この機能により、電流を測定するために最適なレンジを選択することができます。しかし、抵抗測定や電圧測定のように桁数をできるだけ多く表示するレンジを選ぶと、内部抵抗の高いレンジを選択することになります。すなわち、実際に動作している電流より少ない電流を測定することになり、無視できない誤差を生じる可能性があります。そこで、できるだけ内部抵抗の低いレンジを選択します。内部抵抗については、「1-8 デジタル向きの使い方」で解説いたします。また、アナログテスター同様、電流レンジの切り替えとOFFにするときには、テスト棒を測定対象から必ず離してから行ってください。特に電流測定のときには注意が必要で、大切なテスターを壊さない鉄則です。

■交流電流でも直流電流と同じように、電流は測定対象と直列に測定します。しかし、通常では交流電流を測る機会は多くなく、アナログテスターCX506aにも交流電流測定モードはありません。デジタルテスターPC710では、ファンクションスイッチとセレクトスイッチにより「ACAレンジ」「ACmAレンジ」「ACμAレンジ」を選択することができます。また、クランプメーターでは、回路を切断せずに、回路の一部である電線等を挟むだけで電流を測定することができます。機種に依りますが、デジタルクランプメーターDCL31DRでは、直流と交流の両方を測定することができます。

【参考文献】

内田 裕之、小暮 裕明 共著『みんなのテスターマスターブック』オーム社、2015年11月20日(第1版第2刷)

三和電気計器『CX506a MULTITESTER 取扱説明書』(13-1405 2040 2040)

三和電気計器『PC710 DIGITAL MULTIMETER 取扱説明書』(04-1405 5008 6010)

三和電気計器『DCL31DR デジタルクランプメータ取扱説明書』(01-1507 2040 6011)

執筆: 横浜みどりクラブ(JH1YMC)広報 内田 裕之(JG1CCL/W3CCL)

『テスターの基礎講座』の目次

第1章 テスターの概要

第2章 テスターの使い方

第3章 テスターの測定方法

第4章 テスターの活用法

第5章 使用上の注意点、トラブル対応

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