切削工具の基礎講座

ものづくりに欠かせない「切削工具」。切削工具にはどのような種類があるのか?購入する時に気を付けることは?使い方は? 本連載では、切削工具の正しい知識について、ご紹介していきます。
第6章 手仕上げ工具

6-1 切削タップ

タップはドリルであけた穴に通して、「めねじ」を加工するための切削工具です。タップは切りくずが詰まりやすく折れやすいため、タップ加工は様々な加工工程の中でトラブルの多い加工です。タップが穴の中で折れるとタップの溝が工作物に食付いた状態になり、穴の中に残ったタップを取り除くことはほとんど不可能です。したがって、加工中にタップが折れることは絶対に避けなければいけません。

タップ

タップは切削タップと盛上げタップ(非切削タップ)の2種類に大別されます。切削タップは切りくずを出しながらめねじの溝をつくるタップで、盛上げタップは塑性変形を利用してめねじの溝をつくるタップです。盛上げタップは切りくずがでません。

日本工業規格(JIS)では数種類のタップを規定していますが、通常良く使用される切削タップはハンドタップ、ポイントタップ、スパイラルタップの3種類です。ハンドタップは「ハンド(手)」という名称ですので、手仕上げ加工で多用されますが、フライス盤やマシニングセンタでも使用できるので誤解しないようにしてください。

  • ハンドタップは最も一般的なタップで、切りくずが粉状になる鋳物のめねじ加工に適しています。切りくずは進行方向と進行方向の逆方向、両方向に排出され、比較的短い止り穴、通り穴両方に使用できます。
  • ポイントタップは切りくずを進行方向に排出しながら加工するタップで、通り穴のめねじ加工に適しています。
  • スパイラルラップはらせん状の溝によって、切りくずを進行方向と逆方向(シャンク方向)に排出しながら加工するタップで、止り穴のめねじ加工に適しています。スパイラルタップは切りくずをシャンク方向に排出するため、切りくずがシャンクに絡まりやすくなります。また、らせん状の溝によって心厚が細いため、ハンドタップやポイントタップに比べて折れやすいので注意が必要です。
タップ

切削タップの先端(食い付き部)は工作物に食付きやすくするために、完全なねじ形状になっておらず、穴の底付近は不完全なねじ形状(不完全ねじ部)になります。食い付き部を短くすることで不完全ネジ部は短くなりますが、タップが工作物に食付く瞬間の切削トルクが増大するので、欠損のリスクが高くなります。

タップ先端の不完全ねじ部

タップ先端の不完全ねじ部



執筆: 芝浦工業大学 デザイン工学部 デザイン工学科 澤 武一 准教授

『切削工具の基礎講座』の目次

第1章 切削工具とは?

第2章 穴あけ加工と穴仕上げ加工

第3章 旋盤用の切削工具

第4章 フライス加工用の切削工具

第5章 研削砥石

第6章 特徴的な切削工具

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