工具の通販モノタロウ 切削工具 切削工具の基礎講座 フライス工具と旋盤工具(バイト)に求められる性能の違い

切削工具の基礎講座

ものづくりに欠かせない「切削工具」。切削工具にはどのような種類があるのか?購入する時に気を付けることは?使い方は? 本連載では、切削工具の正しい知識について、ご紹介していきます。
第4章 フライス加工用の切削工具

4-1 フライス工具と旋盤工具(バイト)に求められる性能の違い

フライス加工は回転する切削工具を材料に押し当て、余分な場所を削り取り、所要の形状をつくる加工法です。一方、旋盤加工は回転する材料にバイト(切削工具)を押し当て、余分な場所を削り取り、所要の形状をつくる加工法です。 このように、フライス加工と旋盤加工では回転する対象物が異なります。

フライス加工は切削工具が回転するため、フライス工具の刃部は材料と接触、非接触を繰り返すことになります。このように、刃部が材料と接触、非接触を繰り返す切削を「断続切削」といいます。 反対に、旋盤加工は材料が回転するため、バイトの刃部は材料と常に接触し続けることになります。このように、刃部が材料と接触し続ける切削を「連続切削」といいます。つまり、フライス加工は断続切削で、旋盤加工は連続切削になります。

さて、フライス加工と旋盤加工では上記の通り切削の形態が異なることから、切削工具(チップ)に求められる性能も異なります。チップが材料と衝突する際には大きな衝撃力が作用するため、フライス工具には断続的に発生する衝撃に耐え得る「粘り強さ」が求められます。 チップが材料と接触した瞬間に欠けては、切削工具としての機能を果たせません。

また、チップが材料を削っている時間(接触時間)は約800°の高温環境下で、材料を削っていない時間(非接触時間)は空気により冷却されます(切削油剤を供給している場合には水冷または油冷されます)。 このように、短時間に急加熱、急冷却を繰り返すことになるので、フライス工具には温度差に強い耐熱衝撃性が求められます。加熱冷却の温度差によって刃(チップ)が欠けることを熱亀裂(サーマルクラック)といいます。

一方、旋盤加工は材料表面に溝など凹凸がない場合には、バイトが材料に衝突するのは加工開始時の1回のみで衝撃力はこの瞬間しか作用しません。衝突後、バイトの刃先は回転する材料に常に接触していることになるため、摩耗が激しく、摩擦熱が高くなります。 このため、バイトには連続的な接触に耐え得る耐摩耗性(高温硬さ)が求められます。

このように、フライス工具と旋盤用切削工具(バイト)は切削形態の違いにより、求められる性能が異なることを覚えておいてください。

なお、一般に、フライス工具(正面フライスやエンドミル)は工具円周上に複数の刃を有し、このような切削工具を「多刃(たじん)工具」、バイトのように1枚の刃を有する切削工具を「単刃(たんば)工具」といいます。

バイト(単刃工具)

バイト(単刃工具)

正面フライス,エンドミル(多刃工具)

正面フライス,エンドミル(多刃工具)

旋盤加工(連続切削)

旋盤加工(連続切削)

各種フライス加工(断続切削)

各種フライス加工(断続切削)

執筆: 芝浦工業大学 デザイン工学部 デザイン工学科 澤 武一 准教授

『切削工具の基礎講座』の目次

第1章 切削工具とは?

第2章 穴あけ加工と穴仕上げ加工

第3章 旋盤用の切削工具

第4章 フライス加工用の切削工具

第5章 研削砥石

第6章 特徴的な切削工具

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