切削工具の基礎講座

ものづくりに欠かせない「切削工具」。切削工具にはどのような種類があるのか?購入する時に気を付けることは?使い方は? 本連載では、切削工具の正しい知識について、ご紹介していきます。
第1章 切削工具の基礎講座

1-5 刃先交換式切削工具の呼称

近年、刃先をねじなどの機械的な締結方法で簡便に刃(チップ)を交換できる刃先交換式の切削工具が多く使用されるようになってきました。金属加工で使用する切削工具だけではなく、日常的に使用する刃物は使用期間が長くなると、刃先が摩耗します。 言い換えれば、摩耗しない刃物はありません。刃先の摩耗が大きくなると、切れ味が悪くなるため、上手に金属を削れなくなるため、新しい切削工具に交換しなければいけません。 これは鉛筆と同じで、削った直後の鉛筆は鋭く尖っていて、書きやすいですが、使用期間が長くなると、芯の先端が丸くなり、書きにくくなります。

従来多用されていた切削工具は刃の役割をするチップとチップの土台の役割をするボデーが溶接されていたため、刃先が摩耗した場合、作業者が研削といしを使って研ぎ、刃先の鋭さをよみがえらせていました。 しかし、刃先を研ぐのは手間で面倒なことや作業者の研ぐ技能によって切れ味が異なるという問題がありました。そこで刃先交換式の切削工具が開発され、現在では主流になっています。これは、えんぴつからシャープペンシルが主流になったのと同じで、機能性の進化といえます。

さて、刃先交換式の切削工具は「スローアウェイ式切削工具」、チップは「スローアウェイチップ」と呼ばれます。「Throw away(スローアウェイ)」は直訳すると、「遠くへ投げる」という意味になりますが、「使い捨て」というのが名称の由来になっています。 しかし近年、「もったいない:MOTTAINAI」が世界共通語として使用されるようになるなど、環境問題に対する意識が高まり、「使い捨て」を意味する「スローアウェイ」は呼称として使われないようになってきました。最近では、「スローアウェイ」の代わりに、「挿入する(取り付ける)」という意味を持つ「Insert(インサート)」が使用されるようになり、 刃先交換式の切削工具は「インサート式切削工具」、チップは単純に「インサート」または「インサートチップ」と呼ばれるようになっています。

また、そもそも「スローアウェイ」という呼称は日本固有で、海外では刃先交換式の切削工具をインデキサブル工具(index-able:割り出しできる工具)と呼称されています。今後、呼称が統一されるかもしれません。

刃先が溶接された切削工具

刃先が溶接された切削工具

刃先交換式の切削工具

刃先交換式の切削工具

スローアウェイ(throw away)=遠くへ投げる=「使い捨て」の意味

スローアウェイ(throw away)=遠くへ投げる=「使い捨て」の意味

執筆: 芝浦工業大学 デザイン工学部 デザイン工学科 澤 武一 准教授

『切削工具の基礎講座』の目次

第1章 切削工具とは?

第2章 穴あけ加工と穴仕上げ加工

第3章 旋盤用の切削工具

第4章 フライス加工用の切削工具

第5章 研削砥石

第6章 特徴的な切削工具

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