工具の通販モノタロウ チップ 切削工具の基礎講座 超硬合金チップの使い分け

切削工具の基礎講座

ものづくりに欠かせない「切削工具」。切削工具にはどのような種類があるのか?購入する時に気を付けることは?使い方は? 本連載では、切削工具の正しい知識について、ご紹介していきます。
第1章 切削工具とは?

1-3 超硬合金チップの使い分け

切削工具用の超硬合金チップはP、M、K、N、S、Hの6種類があり、削る材料の材質によって使い分ける必要があります。言い換えれば、すべての材料を1つの超硬合金チップで削ることはできないということです。Pは鉄鋼、Mはステンレス鋼、Kは鋳鉄、Nはアルミニウム合金、Sはチタン、Hは高硬度材料や焼入れ鋼を削る際に使用します。金属加工ではチップと材料が接触する点(チップが材料を削り取る点:切削点)は高温になるため、化学反応が活発になる環境です。このため、チップには高温環境下でも化学反応しにくいことが求められ、各種材料と化学反応しにくいように、超硬合金の含有成分を微妙に調整したものが6種類あるということです。なお、超硬合金の分類を示すPやMなどのアルファベットを識別記号といいます。

DIY(Do it yourself)など趣味や日曜大工程度で金属加工を行い、切削点が短い時間しか高温にならない場合には、削る材料に合わせて超硬合金チップの使い分けを必ず行う必要はありませんが、金属加工を仕事として行い、切削点が長い時間高温なる場合には、削る材料に合わせて超硬合金チップを使い分けることをお勧めします。適正に使い分けることによって、寿命が長く、加工精度が安定し、仕上げ面粗さも良好になります。料理でも、すべての食材を1つの包丁で切ると使いにくいですが、食材に合わせて包丁の種類を使い分けると使いやすいことと同じです。

さて、上記のとおり、切削工具用の超硬合金チップは6種類ありますが、色や質感などチップの外観からは判別できないため、識別色が設定されており、Pは青色、Mは黄色。Kは赤色、Nは緑色、Sは茶色、Hは灰色と決まっています。図に示すように、超硬合金チップの付け刃バイトの場合には、シャンクの端に識別色が示されており、スローアウェイチップの場合には、チップケースに識別記号が記載されているか、識別色が印刷されている場合もありますが、カタログまで遡らないと不明なこともあります。識別色で超硬合金の種類を判別できることを覚えておいておくとよいでしょう。

なお、現在市販されている超硬合金のスローアウェイチップはコーティングされているものが多く、コーティングされていないものは稀です。コーティングは超硬合金の性能を補うために施されるものですが、コーティングされていても超硬合金の使い分けは必要です。コーティングに関しては別頁で解説します。

表1 超硬合金チップの使い分け

P(青色) 鉄鋼
M(黄色) ステンレス鋼
K(赤色) 鋳鉄
N(緑色) 非鉄金属 アルミニウム合金
S(茶色) チタン合金 耐熱合金
H(灰色) 高硬度材料 焼入れ鋼

 

図1 超硬合金付け刃バイトの識別色

図1 超硬合金付け刃バイトの識別色

図2 スローアウェイチップのチップケース

図2 スローアウェイチップのチップケース

執筆: 芝浦工業大学 デザイン工学部 デザイン工学科 澤 武一 准教授

『切削工具の基礎講座』の目次

第1章 切削工具とは?

第2章 穴あけ加工と穴仕上げ加工

第3章 旋盤用の切削工具

第4章 フライス加工用の切削工具

第5章 研削砥石

第6章 特徴的な切削工具

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