遠心ポンプの実践講座

本連載では、基礎講座に続き遠心ポンプにスポットをあて、ポンプを構成する部品の役割からポンプの点検の仕方、トラブルとその対策まで、 より実践的な知識をご紹介していきます。遠心ポンプの基礎講座はこちら>>
第3章 ポンプの据付けと試運転

3-3 ポンプの据付け

超大形のポンプやモータでない限り、ポンプとモータは図3-3-1に示すように、共通ベースに取り付けられた状態で現地に到着します。そして、一体になったままで、ポンプは通常は基礎面に据え付けられるのですが、この場合、具体的には次の順番で設置されます。

1.基礎ボルトの固定

基礎に基礎ボルト用穴をあけて、モルタルを使って基礎ボルトを固定します。

2.共通ベースの据付け

ポンプ、モータ及び共通ベース一体の状態で、共通ベースにある基礎ボルト用穴に基礎ボルトを通過させて基礎面に置きます。そして、共通ベースの水平度を調整します。ポンプの吐出しフランジ面やモータ脚の座など加工面に水準器などを置いて、 基礎ボルトの両側に、図3-3-2に示すように、テーパライナと平行ライナを使って水平を調整します。 調整が完了したら、テーパライナと平行ライナはお互いに点溶接し、また共通ベースにも点溶接して固定します。水平度の基準は、ポンプメーカの推奨値によりますが、共通ベースの長さ1 m当たり0.3 から2 mm以内が一般的です。

3.モルタル流し込み

共通ベースの中にモルタルを流し込み固化させます。このとき、テーパライナと平行ライナ、及び基礎と共通ベースのすき間にもモルタルを入れます。モルタルは乾燥しても収縮しない「無収縮性モルタル」が優れています。

4.ポンプとモータの心出し

カップリングボルトを外し、カップリングを使って「面振れ」と「水平度」を調整します。「面振れ」は図3-3-3に示すように、テーパゲージなどを使って、ポンプ側のカップリングとモータ側のカップリングのすき間を上下左右4個所測定します。 そして、ポンプメーカの推奨値になるように、モータの脚の下にシムを抜き差しして調整します。 「水平度」は図3-3-4に示すように、定規などをポンプ側のカップリング面に当てて、モータ側のカップリングを手回ししながらすき間を測定します。 そして、ポンプメーカの推奨値になるように、モータの脚の下にシムを抜き差しして調整します。実際には、「面振れ」と「水平度」を何度か繰り返しながら調整します。調整後はポンプとモータの軸間距離を確認します。推奨値は、カップリングの大きさにもよりますが、「面振れ」は0.1 から0.5mm以内、「平行度」は0.1 から0.5mm以内です。

シムはポンプにではなくモータのほうに入れます。ポンプには吸込配管及び吐出し配管が取り付けられているので、ポンプを動かさないほうがよいからです。

図3-3-1 ポンプ、モータ及び共通ベースの一体図

図3-3-1 ポンプ、モータ及び共通ベースの一体図


図3-3-2 テーパラナと平行ライナ

図3-3-2 テーパラナと平行ライナ


図3-3-3 面振れ測定

図3-3-3 面振れ測定


図3-3-4 平行度測定

図3-3-4 平行度測定

上記で説明したポンプは、カップリングにスペーサがない場合です。図3-3-5に示すように、カップリングにスペーサが付いていると少し方法が異なります。ポンプとモータの心出しは、カップリングボルト及びスペーサを外し、図3-3-6に示すように、ダイヤルゲージを使って「面振れ」と「水平度」を調整します。

また、大形ポンプの場合、共通ベースの水平度を調整するための容易な方法として、図3-3-7に示すように、押しボルトを使うこともあります。

図3-3-5 スペーサ付きカップリング

図3-3-5 スペーサ付きカップリング


図3-3-6 面振れ及び平行度測定

図3-3-6 面振れ及び平行度測定


図3-3-7 押しボルトによる調整

図3-3-7 押しボルトによる調整

執筆:外山技術士事務所 所長 外山幸雄

『遠心ポンプの実践講座』の目次

第1章 ポンプの仕様

第2章 ポンプの構成部品と役割

第3章 ポンプの据付けと試運転

第4章 ポンプの運転

第5章 ポンプの保守点検と省エネルギー

第6章 ポンプのトラブルと対策

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