遠心ポンプの実践講座

本連載では、基礎講座に続き遠心ポンプにスポットをあて、ポンプを構成する部品の役割からポンプの点検の仕方、トラブルとその対策まで、 より実践的な知識をご紹介していきます。遠心ポンプの基礎講座はこちら>>
第2章 ポンプの構成部品と役割

2-13 ポンプのオリフィス

ポンプそのものに付く部品ではないのですが、流量を調整するためにオリフィスという部品があります。 ポンプでは、軸封に使うオリフィス、ミニマムフロー用オリフィス、ウォーミング用オリフィスなど、ポンプの吸込圧力と吐出し圧力の差などを利用して必要になる流量を調整するために、オリフィスがよく使われています。

オリフィスは図2-13-1に示すように、穴があいた単純な板です。オリフィスの前後の差圧及び必要になる流量によって、1枚だけの単段または複数枚のオリフィスを使う多段があります。オリフィス前後の差圧は単位を mに換算し、50から150 m程度は単段にします。 それを超えると多段になります。1段当たりの差圧を大きくすると、オリフィス後流直後に発生する液の急拡大による高周波の騒音が大きくなります。また、配管が浸食されることもあります。

オリフィスは、図2-13-2に示すように鋼管の内側に溶接で取り付ける方法、図2-13-3に示すようにフランジとシートパッキンで挟んで取り付ける方法などがあります。 オリフィスの材料は、浸食に強い18Cr-8Niステンレス鋼を使うのが一般的です。

図2-13-1 オリフィス

図2-13-1 オリフィス

図2-13-2 鋼管の内側に溶接で取り付ける方法

図2-13-2 鋼管の内側に溶接で取り付ける方法

図2-13-3 フランジで挟んで取り付ける方法

図2-13-3 フランジで挟んで取り付ける方法

オリフィスの流量とオリフィス径を決めるための計算式を表2-13-1に示します。流量係数Cは、図に示すオリフィス径dとオリフィス前流の鋼管の内径Dの比などによって決まりますが、実際は計算ではなく実験によって求めています。図2-13-4に流量係数Cの参考値を示します。流量係数Cは、オリフィス径dを大きくしていって鋼管の内径Dに近づけていくにつれて直径比は大きくなりd/D=1のとき、すなわちオリフィスがない状態でC=1、逆にオリフィス径dを小さくしていって0に近づいていくにつれて直径比は小さくなり直径比d/D=0のとき、すなわちオリフィス径d=0の場合C=0になります。そして、C=0から1までは数次曲線で変化します。

表2-13-1 オリフィスの流量

表2-13-1 オリフィスの流量
図2-13-4 流量係数

図2-13-4 流量係数

それでは、計算例を示します。図2-13-5に示すように、吐出し側からオリフィスを介して、スタフィングボックスにフラッシング液を流します。条件は次のとおりとします。

  • 吐出し側の圧力を10kg/cm²
  • スタフィングボックス内の圧力を3kg/cm²
  • 流量Q=3m³/h
  • 液の密度を1g/cm³
  • 鋼管の内径D=14.3 mm

1.流量係数C=0.75と仮定してオリフィス径dを計算します。計算式は表2-13-1にあります。その結果、d=6.2 mmになるので、直径比d/D=0.432になります。

2.直径比d/D=0.432なので、図2-13-4から流量係数C=0.86として再計算します。結果は、d=5.8 mmになるので、直径比d/D=0.404になります。

3.直径比d/D=0.404なので、図2-13-4から流量係数C=0.84としてさらに計算します。結果は、d=5.8 mm、直径比d/D=0.408になります。

4.直径比d/D=0.408のとき、図2-13-4の流量係数はC =0.84なので、計算はこれで終了です。

これらの計算結果を表2-13-2に示します。オリフィス径dは小さいとごみなどで詰まることがあるので、最小直径は2 mm程度にします。

図2-13-5 フラッシング配管

図2-13-5 フラッシング配管


表2-13-2 オリフィス径の計算

No. 項目 単位 計算1 計算2 計算3
1 流量 Q 3/h 3 3 3
2 吐出し側の圧力 kg/cm2 10 10 10
3 スタフィングボックス内の圧力 kg/cm2 3 3 3
4 液の密度 g/cm3 1 1 1
5 差圧 △H 70 70 70
6 鋼管の内径D mm 14.3 14.3 14.3
7 流量係数C   0.75 0.86 0.84
8 オリフィス径d 0.00618 0.00577 0.00584
9 オリフィス径d mm 6.2 5.8 5.8
10 検算 Q m3/s 0.000833 0.000833 0.000833
11 検算 Q m3/h 3.000 3.000 3.000
12 直径比 d/D   0.432 0.404 0.408
執筆:外山技術士事務所 所長 外山幸雄

『遠心ポンプの実践講座』の目次

第1章 ポンプの仕様

第2章 ポンプの構成部品と役割

第3章 ポンプの据付けと試運転

第4章 ポンプの運転

第5章 ポンプの保守点検と省エネルギー

第6章 ポンプのトラブルと対策

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