遠心ポンプの実践講座

本連載では、基礎講座に続き遠心ポンプにスポットをあて、ポンプを構成する部品の役割からポンプの点検の仕方、トラブルとその対策まで、 より実践的な知識をご紹介していきます。遠心ポンプの基礎講座はこちら>>
第2章 ポンプの構成部品と役割

2-8 ポンプに使うグランドパッキン

グランドパッキンは、グランドパッキンと主軸の冷却及び潤滑のために、図2-8-1に示すように、フラッシング液を漏らしながら使用されます。その量は「糸を引くように」が理想とされています。 グランドパッキンの近くには通常軸受ハウジングがあるので、パッキン押えに滴下穴を設けて漏れた液が軸受ハウジンング内に浸入するのを防止します。 また、図2-8-1の矢視“A”を図2-8-2に示しますが、滴下穴だけでは液が溢れ出る恐れがあるために、パッキン押えに突起を設け、その突起が下になるように取り付けることによって、漏れた液を軸受ブラケット内に落ちるようにすることもあります。 更に、軸受ブラケットに集まった液体をドレン溝などへ流すための配管をすることがあります。

図2-8-1 グランドパッキン

図2-8-1 グランドパッキン

図2-8-2 パッキン押え

図2-8-2 パッキン押え

グランドパッキンの材料は通常、炭素繊維に黒鉛を含浸させた摺動性のよいものです。そして、最初にポンプ側のグランドパッキン1個をきつく押込み、次に残りのグランドパッキンを入れて、グランド押えで押し込んでポンプに組み込みます。 そして、出荷前の性能試験のときに、グランドパッキン部からの漏れ量が適正になるように、パッキン押えのナットで調整します。

しかし、グランドパッキンの材料がテフロン(商品名)の場合、グランドパッキンをこのように組み込むと問題を起こす可能性があります。実際に起こったトラブル例を次に紹介します。

1.トラブルとは...

製紙会社から注文があった横軸単段ポンプで、軸封はメカニカルシールではなく、テフロンのグランドパッキンを指定されました。 それまで、テフロンのグランドパッキンは使用した経験がなかったので、メーカのカタログで許容周速及び許容圧力を確認して問題がないことが分かりました。しかし、出荷前の性能試験のときに、ポンプ始動直後にグランドパッキン部から煙が出ました。ポンプの吸込圧力は大気圧より高いので、スタフィングボックスには十分な水はありました。

2.メカニズムは...

グランドパッキンは許容周速以内だったのですが、初期は主軸になじんでいないため、摩擦係数が大きく面圧が高いために発熱し燃えるに至ったものと考えました。通常使用している炭素繊維系グランドパッキンは黒鉛を含浸しているので、摩擦係数が低く発熱などの問題は起こりません。このグランドパッキンも、通常の組込み方法で組み込んだのでした。

3.対処法は...

通常の組込み方法は、グランドパッキンをグランド押えでかなりきつく押し込むのですが、この場合は、グランドパッキンを緩く組み込んで、最初は多量の水を流しながら、ポンプの始動後徐々にグランドパッキンをなじませながら30分かけて締め込んでいきました。

執筆:外山技術士事務所 所長 外山幸雄

『遠心ポンプの実践講座』の目次

第1章 ポンプの仕様

第2章 ポンプの構成部品と役割

第3章 ポンプの据付けと試運転

第4章 ポンプの運転

第5章 ポンプの保守点検と省エネルギー

第6章 ポンプのトラブルと対策

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