ねじの基礎講座

私たちの身近にあって欠かせない存在、「ねじ」。
ねじにはどのようなはたらきや歴史があり、どんな種類があるのか。
本連載では、ねじに関するさまざまな事項をご紹介していきます。
第5章 ねじのつくり方

5-8 ナットの加工

ボルトとナットはおねじとめねじの違いがある通り、製造する工作機械は大きく異なります。そのため、ボルトとナットのどちらも製造している工場はあまり見かけません。 規格品として代表的なナットは外形が六角形の六角ナットです。ここでは六角ナットを中心として、ナットの加工を紹介します。

六角ナットの加工は六角棒を用意するところからはじまります。その製造はめねじを加工する前の下穴であるブランクの成形とめねじの成形に大別されます。 ブランクの成形は、製造する材料や寸法に応じて、冷間圧造や熱間圧造および切削加工のいずれかで行われます。 一般的にはおねじの圧造と同様に、呼び径がM10以下程度のナットの成形は冷間圧造、それ以上大きな呼び径のナットには熱間圧造が用いられています。 圧造の場合には、六角棒を必要な厚みで切断した後、一度で下穴の成形はできないため、何段階かに分けて少しずつ変形させます。 切削加工の場合には六角棒を回転させながらドリルで下穴をあけ、その後に必要な厚みで切断します。

ブランクを成形したら、次にめねじの加工に入ります。手仕上げでのタップ作業は量産には向かないため、ボール盤に主軸の逆回転機能を備えたタッピングボール盤が便利です。 ボール盤を操作するようにしてレバーを押し下げながらタップをブランクにあて、めねじ立てが所要の位置に来たところで主軸を逆回転させることでめねじを成形できます。 タッピングボール盤を使用しても、工作物の取り付けなどは手作業になるため、より大量生産を行いたい場合には、ブランク加工後の工作物を自動的に供給してタップに送るタッピングマシンが用いられます。 タッピングマシンに用いられるベントタップは、一本に先タップ、中タップ、上げタップの刃部をもつ先端部が90度に曲がった工具です。 ホッパーで一列に整列してベンドタップに送られたブランクをもつ工作物は、回転しながら三段階のタップを通ることで、めねじが成形されます。

図1 タッピングマシン

90度に曲がった部分が回転し、遠心力でナットが飛び出します。

フランジ付きナットなど、六角部をもちながらも部材からはみ出すようなフランジ部をもつような形状のものは、六角棒を切断するのではなく、丸棒を圧造する工程でフランジ部を成形します。 袋ナットは圧造のみで製造するのではなく、六角ナットにキャップ形状の部品を溶接して製造します。この他にも、ナットにはさまざまな形状のものがあります。 めねじ部はもちろん、外形をどのように製造しているのかを考えてみるのもおもしろいでしょう。

  • 図2 六角ナット
  • 図3 フランジナット

図4 袋ナット

執筆:神奈川工科大学 門田和雄 教授

『ねじの基礎講座』の目次

第1章 ねじのキホン

第2章 ねじの種類

第3章 ねじの強さ

第4章 ねじの材料

第5章 ねじの作り方

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