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ねじの基礎講座

私たちの身近にあって欠かせない存在、「ねじ」。
ねじにはどのようなはたらきや歴史があり、どんな種類があるのか。
本連載では、ねじに関するさまざまな事項をご紹介していきます。
第2章 ねじの種類

2-4 ねじのくぼみのいろいろ

ねじ頭部のくぼみの形状には十字穴付きやすり割り付き以外にもさまざまな種類があります。アメリカのカムカー社が開発したトルクスは、ねじ頭部のくぼみが六角形の星形をしています。 この形状はドライバーとのかみ合いが強く、力の伝達効率が良いなどの特徴があります。アップル社のコンピュータやiPhoneには、トルクス(図1)が多く用いられています。なお、トルクスという名称は登録商標であるため、規格ではへクサロビューラやへクスグローブなどと呼ばれます。

図1 トルクス

図1 トルクス

ところで、他にも三角形のくぼみや変わった形状のくぼみをもつねじもありますが、見かけたことはあるでしょうか。

ピン・ボタン六角穴ねじ(図2)は、六角穴のくぼみの中央にピンのついたものであり、締付け時のトルク伝達が良好な形状です。トライウィングねじ(図3)は右回転で締め付けることができ、左回転は空回りします。 ワンサイド(図4)は締め付け時の右回転はマイナスドライバーが使用できますが、戻し回転はできません。くぼみにホコリが溜まらないため、屋外での使用に適しています。ツー・ホール(図5)は2つ穴が特徴で装飾用としても用いられます。

  • 図2 ピン・ボタン六角穴ねじ
  • 図2 ピン・ボタン六角穴ねじ
  • 図3 トライウィングナベ小ねじ
  • 図3 トライウィングナベ小ねじ

  • 図4 ワンサイド・ナベ小ねじ
  • 図4 ワンサイド・ナベ小ねじ
  • 図5 ツー・ホール皿小ねじ
  • 図5 ツー・ホール皿小ねじ

ところで、これらのくぼみをもつねじはどんな場所で用いられているのでしょうか。たとえば、子どものおもちゃに十字穴付きねじがあったら、ドライバーがあれば簡単に外すことができてしまい危険です。 また、建物の出入口の留め具に十字穴付きねじがあったら、これも簡単に外すことができてしまい泥棒に入られてしまいます。すなわち、防犯の観点からもこれらのねじは役立つのです。これらのはたらきをするねじを総称して、いたずら防止用ねじと呼んでいます。

ところで、これらのいたずら防止用ねじはどのようにして緩めるのでしょうか。もちろん、ねじとして用いる以上、必要な場合には外すことができないと困ります。一般的なドライバーでは外すことができないことがこれらのねじの大きな特徴ですが、ねじの製造者はねじの締結工具もセットで用意しています。 ただし、これらの工具が各地に出回ってしまうと防犯の効果がなくなってしまうため、登録商標や特許をもつ者しか製造や販売ができません。それでも残念ながら、ねじを外していたずらどころか大きな犯罪を引き起こすことあるので、新たなくぼみ形状のねじが必要となるのです。

なお、いたずら防止ねじを使わない場合の防犯対策としては、数多くのねじで締結を行い全体を外す時間をかけるようにすることや、一本だけ左ねじで締結しておき、外すことができないように見せかけるという工夫をすることもあります。

執筆:神奈川工科大学 門田和雄 教授

『ねじの基礎講座』の目次

第1章 ねじのキホン

第2章 ねじの種類

第3章 ねじの強さ

第4章 ねじの材料

第5章 ねじの作り方

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