ねじの基礎講座

私たちの身近にあって欠かせない存在、「ねじ」。
ねじにはどのようなはたらきや歴史があり、どんな種類があるのか。
本連載では、ねじに関するさまざまな事項をご紹介していきます。
第2章 ねじの種類

2-7 ナットの種類

ボルトとともに用いられるめねじをもつ部品の総称をナットといいます。代表的なナットは外形が六角形の六角ナットです。六角ナットには、面の端部に丸みを持たせた面取りが片方の面にある1種、面取りが両方の面にある2種、厚みが薄い3種などがあります(図1)。 ナットの厚さは1種と2種ではねじの呼び径の約80%、3種では約60%です。


図1 六角ナット

六角ナットの向かい合う二辺の距離のことを二面幅といい、六角ボルトの規格ではその寸法が規定されています。この寸法が日本工業規格のJISと国際規格であるISOでは若干異なっていました。具体的には、M10、M12、M14の二面幅は国内規格が国際規格より1mm小さく、M22では逆に1mm大きかったのです。 これらは市場性が大きかったこともあり、何年後かに廃止するとして附属書という形で暫定的に残っていました。しかし、これが2014年で廃止されるという問題が発生したのです。 わずか1mmの大小なのですが、日本の寸法が国際規格として認定されなくなることで、輸出入の際に貿易問題になることも懸念されていました。しかし、関係者の尽力もあり、附属書として当面存続すること、ただしグローバル化への対応のため、国際規格に移行するこということに落ち着きました。

六角ナットのほかにもナットにはいろいろな種類があります。溝付ナットは、ナットの側面にいくつかの溝をもち、緩み止めの割りピンを差し込んで用いるものです(図2)。英語ではこれがお城のように見えるためかキャッスルナットと呼ばれています。袋ナットは、おねじの先端が隠れるように片面に丸みをもたせたものです(図3)。 ねじ山を隠すことができ、外観がよいということで、外面が人の目につきやすい場所などに用いられています。蝶ナットは頭部が蝶のような形をしたものであり、英語でもバタフライナットやウイングナットとよばれています(図4)。手で締め付けができるため、取り外しがしやすい場所などに用いられます。 アイナットは頭部がリング状をしており、アイは目を意味するeyeからきています(図5)。ここに重量物を吊るして使用するため、その使用荷重が規定されており、大きなものではM40以上のものもあります。蝶ナットには蝶ボルト、アイナットにはアイボルトというようにおねじとめねじを入れ替えたものもあります。

  • 図2 溝付ナット
  • 図2 溝付ナット
  • 図3 袋ナット
  • 図3 袋ナット

  • 図4 蝶ナット
  • 図4 蝶ナット
  • 図5 アイナット
  • 図5 アイナット

なお、ナットは多くの場合、緩み止めのための座金を締結する部材との間に挟んで使用します。フランジと呼ばれる円錐形のつばをもつフランジナットは座金を用いたような広い座面をもつもので、座金を入れる工程を省くことができるため、自動車関係などの組み立てラインなどで広く用いられています(図6)。

図6 フランジナット

図6 フランジナット

執筆:神奈川工科大学 門田和雄 教授

『ねじの基礎講座』の目次

第1章 ねじのキホン

第2章 ねじの種類

第3章 ねじの強さ

第4章 ねじの材料

第5章 ねじの作り方

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