工具の通販モノタロウ タップ・ダイス 加工現場の手仕上げ作業の勘どころ タップおよびダイスによるねじ立て作業

加工現場の手仕上げ作業の勘どころ

ものづくりの現場において機械を頼らず手作業で行なう、「手仕上げ加工」。本連載では、各工程に沿って、加工現場における手仕上げ加工のコツをお教えします。
第8章 ねじ立て作業

8-2 タップおよびダイスによるねじ立て作業

1.下穴加工

タップ作業を行う前にはドリルやリーマによる穴あけが行われます。下穴が小さすぎて無理をしてねじ立ててを行うとタップが折損します。また、大きすぎるとねじのかみ合いが弱くなるのでねじ山が破損することがあり適正な下穴をあけることが大切です。ねじの下穴径は(8-1)式で求めることができます。なお、引っかかり率はJISで表示されています。

下穴径≦おねじの外形-(おねじ外径-おねじ谷径)×引っかかり率-------(8-1)

一般のねじはJIS2または3級の範囲のため、下穴径は(8-2)式で求めると容易です。

下穴径=おねじの外径-ねじのピッチ-------(8-2)

2.手作業によるタップ立ての留意点

タップを立てる工作物の面は水平に置いて万力などに取り付けます。タップハンドルはタップ径に適したものを使用します。タップ径に比べ長いタップハンドルを使用して過度な力を入れて作業をするとタップが折損する恐れがあります。また、タップが傾斜をした状態でねじ立ててを行うと折損の原因となるため、先タップを使用して喰い込ませた後、下穴とタップの軸芯を一致させるために図8-6に示すようにスコヤを当てて曲がりを確認します。曲がっていればタップハンドルを反対方向に力を入れながら修正します。なお、下穴の口もとの面取りをしておくとタップの食い込みが容易となります。

スコヤによる曲がりの確認

図8-6スコヤによる曲がりの確認

ねじ立てては図8-7のように両手でハンドルをしっかり持って均一に力をかけるようにして行います。曲げたり、強くねじったりして作業を行うとタップが折損します。また、続けて回さずに、2/3程度回転したら少し戻す作業を繰り返しながら行とよいでしょう。これは切りくずを刃先から取除くとともに刃先へ加工油剤を流し込む効果があるためです。

ハンドルの持ち方

図8-7ハンドルの持ち方

先タップの後に中タップ、上げタップを順次使用して加工を行います。タップの曲がりを防ぐためにボール盤を使用してねじ立ててを行う場合があります。図8-8のように、タップを下穴に立ててボール盤のスピンドルにセンタを取り付け、センタをタップの柄のセンタ穴に合わせタップハンドルを回しながらセンタを下に送ります。

ボール盤の活用によるねじ立てて

図8-8ボール盤の活用によるねじ立てて

止まり穴の場合にはタップ底部が穴の底部に接触して大きなねじれ力が加わると折損します。そのため、加工前に細い棒やノギスを用いて下穴の深さを求めておく必要があります。ねじりの力が重くなったら作業を止めることが大切です。加工油剤の使用は工具の長寿命化や良好な加工面を得るために必要です。油剤の他にタッピングペーストも広く使用されています。

3.ダイスによるねじ立てて作業の留意点

丸棒の先端を面取りして回転しないように真直ぐにしっかりと万力に固定します。ダイスをハンドルに取り付けるには、ダイス呼びマークが打ってある食付き部の長い方を外向きにして取付け、ダイスの外周にあけられた止め穴をハンドルの止めねじ部にあわせて固定します。タップと同じように食付きが大切で、調整ねじでダイスの口部を大きくして食付かせ、曲がりを確認して調整ねじを戻して作業を行ないます。 作業は図8-9のようにしっかりハンドルを握り2~3回ぐらい回転させてはもどして作業します。

ダイスの作業

図8-9ダイスの作業

執筆: APTES技術研究所 代表 愛恭輔

『加工現場の手仕上げ作業の勘どころ』の目次

第1章 切断作業

第2章 きさげ作業

第3章 やすり作業

第4章 磨き作業

第5章 けがき作業

第6章 穴あけ作業

第7章 リーマ作業

第8章 ねじ立て作業

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