加工現場の手仕上げ作業の勘どころ

ものづくりの現場において機械を頼らず手作業で行なう、「手仕上げ加工」。本連載では、各工程に沿って、加工現場における手仕上げ加工のコツをお教えします。
第5章 けがき作業

5-1 けがき用工具の種類

けがき作業は、工作物を要求された形状に加工するために、図面に指示された寸法や形状をけがき工具を用いて直線、円、中心線を描いたり、穴あけの中心点にポンチを打ったりする作業です。けがき工具にはいろいろなものがありますが、作業に当たってはこれら工具を正しく用いて行う必要があります。

1. けがき塗料

がき線をはっきりさせるために用いるけがき用塗料には、胡粉や青竹、マジックインキなどがあります。胡粉は、炭酸カルシウムを主成分とする顔料を水に溶いて、にかわなどを加えた白色の塗料で黒皮や鋳物などの粗い表面の工作物にけがく場合に使用します。仕上げ加工した表面には、青ニス(青竹とも呼ばれる)という青色の速乾性の塗料が使用されます。青ニスは図5-1(a)のようなスプレー缶があり、吹き付けることで作業が容易にできます。青ニスを取り除くには図5-1(b)の除去剤が使用されます。その他に、簡単なけがきにはマジックインキを使用する場合もあります。

図5-1 けがき用塗料の青ニスと除去剤

図5-1 けがき用塗料の青ニスと除去剤

2. けがき針

工作物にけがき線を引くときに使用する工具で先端が硬く尖っています。先端が摩耗した場合には油砥石で尖らせます。けがき針には図5-2に示すようなものがあります。

図5-2 けがき針

図5-2 けがき針

3. ポンチ

けがき線を示すための線上やコンパスで円をけがく時の中心点、穴あけ加工を行うときの中心を示す場合に使用します。ポンチの先端は60°が一般的ですが、用途により角度を変えて使用する場合があります。図5-3にポンチを示します。

図5-3 ポンチ

図5-3 ポンチ

4. コンパスおよび片パス

円をけがいたり、穴の中心を求めたり、線を分割する場合に使用されます。大きさはかしめの中心から足先までの長さで示します。コンパスには図5-4(a)のような標準形や図5-4(b)のようにナットで開閉されるスプリングコンパス、図5-4(c)のようなコンパスの足の片方が曲がっている片パスなどがあります。

図5-4 コンパス及び片パス

図5-4 コンパス及び片パス

5. トースカン

工作物に定盤面と平行な直線を引いたり円柱状の工作物の中心をきめる時などに使用する工具です。図5-4にトースカンおよび各部の名称を示します。トースカンの針先は円錐形に鋭くしておくことが大切です。針は締め付けねじによって固定します。また、大小数台用意して使い分けることも必要となります。

図5-5トースカン

図5-5トースカン

6. ハイトゲージ

トースカンと同様に、工作物の平行線や中心をきめる時などに使用する工具です。バーニアスケールで読み取る方法やダイヤル式、デジタル式のものがあります。デジタル式は高さが数字で表示されるため作業が容易です。図5-にハイトゲージを示します。

図5-6 ハイトゲージ

図5-6 ハイトゲージ

7. 金ます(ます形ブロック)

一面にV溝や固定用のボルトが取り付けてあり、工作物を固定ボルトで締め付けて使用します。図5-7に金ますを示します。面を置き換えることでいろいろなけがき線を引くことができます。

図5-7 金ます

図5-7 金ます

8.Vブロック

円筒計の工作物をV溝に乗せてけがく場合に使用します。大きさは長さで表します。図5-8にVブロックを示します。

図5-9 イケール

図5-8にVブロック

9. イケール

図5-9のように直角な2つの面になっています。溝にボルトを取り付けて工作物を固定するのに使用されます。アングルプレートとも呼ばれます。

図5-9 イケール

図5-9 イケール

執筆: APTES技術研究所 代表 愛恭輔

『加工現場の手仕上げ作業の勘どころ』の目次

第1章 切断作業

第2章 きさげ作業

第3章 やすり作業

第4章 磨き作業

第5章 けがき作業

第6章 穴あけ作業

第7章 リーマ作業

第8章 ねじ立て作業

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