加工現場の手仕上げ作業の勘どころ
7-3 リーマ作業の方法
リーマ加工は、要求される寸法よりわずかに小さい下穴にリーマを通して真円で滑らかな面の穴を得る作業です。リーマ作業には、手回しによる方法と機械による方法があります。いずれも下穴を適切に開ける必要があります。
リーマは下穴に倣って加工が行われるため、適正な取りしろの下穴を適確な寸法にあける必要があります。取りしろが少ないと仕上げ面が良くならず、反対に多すぎると切りくずが溝につまって加工が難しくなります。どの程度の取りしろにするかはリーマの種類や工作物の材質によって若干異なりますが、およその目安を表7-1に示します。
表7-1 リーマの取りしろの目安
リーマ直径 | 取りしろ(直径について) | 注意事項 |
---|---|---|
5mm以下 | 0.1~0.2mm | ねばい材料や軽合金の場合には5%増しにします。 |
5~20mm | 0.2~0.3mm | |
20~50mm | 0.3~0.5mm | |
50mm以上 | 0.5~1.0mm |
リーマ作業にあたっては、リーマの径に応じたリーマ回しを選択します。径が小さいリーマに大きいハンドルを使用すると過度な力がかかりリーマが破損することがあるので注意を要します。 また、刃に付いた切りくずは仕上げ面の出来具合に影響するためきちんと取除くとともに、刃を観察し、刃に傷がある場合には油砥石で刃部をきれいに修正しておきます。リーマは下穴に対して同芯となるようリーマを真直ぐに通す必要があります。 そのためには、工作物の下穴が垂直になるように保持するとともに食付きが始まったときに図7-10のようにスコヤを当てて垂直度を確認するとよいでしょう。

図7-10 スコヤによる垂直度の確認
リーマの回転はゆっくりと一定の速さで円滑に行ないます。リーマ作業で特に注意することは、加工時または抜くときも逆回転を与えてはいけません。これは、加工で形成された切りくずがドリルのように排出されず、溝にたまってしまうためです。 この状態で逆回転を与えると、切りくずが背部からランドと工作物の加工穴面の間に入り込んで仕上げ面に傷を発生させます。 穴加工が終わって抜くときも同じ方向で回転して抜くことが必要です。また、切りくずの排出を良くしたり、食付きを防いで良好な穴加工を行うために加工油剤を十分に供給する事が大切です。テーパリーマの作業では、下穴の径を数段に変えてあけリーマの抵抗を少なくして作業をします。
機械によるリーマ作業はボール盤による方法が一般に行なわれています。リーマ作業に当たっては手回しリーマ作業と同様の留意点となりますが、ボール盤を使用するため、主軸やチャック、スリーブなどの振れやガタ、ごみなどを確認するとともに工作物の下穴の口が水平になって正しく取り付けられているか確認をします。 切削速度の設定は鋼の場合は3~6m/min を標準にして検討し、硬めの工作物にはやや遅めに、軟らかめの工作物にはやや早めにします。アルミや黄銅などの非鉄金属は8~14m/minをもとに検討すると良いでしょう。 送りはリーマの直径が大きくなると大きく設定しますが、鋼では直径10mm前後ては0.2~0.4mm/rev、アルミや黄銅では0.5~1mm/minを基準に選択すると良いでしょう。 切削油は十分供給する必要がありますが、材質や加工条件によって油剤の種類が選定されます。黄銅は油剤を使用しなくとも加工面の良否にあまり影響を受けません。なお、リーマのはコーナ部の逃げ面摩耗が約0.5mm前後の摩耗幅を示したら工具寿命と捉え再研削を行なう必要があります。
『加工現場の手仕上げ作業の勘どころ』の目次
第1章 切断作業
-
1-1弓ノコとノコ刃弓ノコはフレームにノコ刃を取り付けて手作業で工作物を切断するために使用される工具です。
-
1-2弓ノコによる切断作業切断作業にあたっては、工作物の材質や形状によって有効な刃数のノコ刃を選びます。 一般には、1インチ当たり刃数が14~18のものを使用しますが、薄い板などには細かい24~32のものが使用されています。 切る時は、図1-10のように切る位置に親指を置いてノコ刃を当て、片手で軽く押して切り込みを与えノコ刃を安定させてから作業をします。
-
1-3電動工具による切断作業電動丸鋸は、丸ノコ刃を電動工具の軸に取り付けて回転させ、直線に切断する工具です。
第2章 きさげ作業
-
2-1きさげの基本と摺り合わせきさげ作業は英語でHand Scrapingと呼ばれ、きさげという一枚刃の工具を使用して、押すまたは引っ掻くことで金属表面をわずかに削り取る手作業の仕上げ技術です。 最終的に高い精度の面(平面、直角面、V面、円筒内面など)を得ることが出来ます。
-
2-2きさげ作業の種類と仕上げ面の性状図2-6のような平面を得るには、摺り合わせ定盤(当たり見定盤)とを工作物表面と摺り合せ、目視できる凸部(当たり)だけを平きさげで削り取り、それを何度も繰り返して仕上げます。 きさげ作業は平面を得るだけでなく接合面の剛性や振動減衰性を得るために、平面度や粗さ、角度の形成なども行ないます。
第3章 やすり作業
-
3-1やすりの目と種類やすりは、炭素工具鋼や合金工具鋼に目と呼ばれる切れ刃をたがね、または機械で打ち込んで熱処理をして製作した工具です。
-
3-2やすりかけ作業を行なうためにやすりの柄の付け方は図3-5のように柄とやすりを垂直になるよう支えて、図3-6のように柄の頭部を万力の胴のような硬いところで打ちつけて慣性でやすりのこみを柄に真直ぐに深く入れます。 柄からやすりをはずすときには、図3-7のように万力の角などに柄を当てて、やすりを引き抜く方向に引っかけて滑らせながら軽く打ちます。
-
3-3やすりかけ作業平面のやすりのかけ方には、やすりを長手方向に進ませる方法、やすりを右方向に斜めに進ませる方法、工作物に対しやすりを横に動かす方法などがあります。
第4章 磨き作業
-
4-1磨き用研磨剤磨き作業には、工作物の表面を磨く、滑らかにする、光沢を出すなどの技術や定められた形状を高精度、高品質に作りあげる技術など目的によりいろいろな技術があります。 磨くためには、研磨剤(ラップ剤ともいわれる)を使用します。研磨剤は硬い粒子の砥粒で構成されています。
-
4-2遊離砥粒による磨き作業遊離砥粒による磨き作業は、工具(ラップともいいます)と工作物の間に研磨剤を入れて擦り併せ、工作物表面の凸部を微量に取り除きながら順次細かい研磨剤に変えて寸法精度が高く、滑らかな表面を得る技術です。 この磨き作業をラッピングやポリシングもといいます。
-
4-3固定砥粒による磨き作業砥粒を固定した手作業の磨き工具には、スティック砥石や砥粒を布や紙、無機材料、樹脂フィルムなどの基材に接着剤で砥粒を保持した工具などがあります。
-
4-4電動工具による磨き作業紙や布などの基材の表面に砥粒を接着剤で固着させた図4-23のような帯状の研磨ベルトを使用した加工をベルト研磨といいます。図4-24に手作業で用いられる卓上ベルト研磨盤を示します。ベルト研磨では図4-25のようにベルト研磨布紙に工作物を押し付けて研磨をします。
第5章 けがき作業
-
5-1けがき用工具の種類けがき作業は、工作物を要求された形状に加工するために、図面に指示された寸法や形状をけがき工具を用いて直線、円、中心線を描いたり、穴あけの中心点にポンチを打ったりする作業です。けがき工具にはいろいろなものがありますが、作業に当たってはこれら工具を正しく用いて行う必要があります。
-
5-2けがき作業を始めるにあたってけがき作業をはじめる時には、図面の確認や工作物の形状の確認も大切ですが、けがき針やトースカン、ポンチの刃先など道具の整備や点検も必要です。
-
5-3けがき作業の方法けがき作業では、どこを基準にしてけがくかが課題となります。また、丸棒の中心を求める、水平線を引く、垂直線を引くなど工作物に応じてさまざまなけがき線の引き方があります。
第6章 穴あけ作業
-
6-1卓上ボール盤の使い方穴加工をする加工方法には、ボール盤やマシニングセンタを用いる方法、放電加工やレーザ加工などさまざまな加工方法がありますが、手作業で穴あけ作業を行なうためには、卓上ボール盤が欠かせません。
-
6-2ドリルの各部の名称穴あけ作業用工具としてドリルは欠かせません。ドリルには材質で分類すると超硬やハイス、形状からは直刃形状や段付形状のものがありますが、ここでは広く活用されているハイスのツイストドリルについて示します。
-
6-3ドリルの種類と特徴ドリルといえば一般にツイストドリルを指しますが、用途に応じてさまざまな種類があります。
-
6-4ドリル作業の方法卓上ボール盤の作業は比較的容易に行なうことが出来るため、作業を安易に行なっている場合が多いのですが、トラブルをなくして作業をするためには、基本的な取り組みを理解する必要があります。
-
6-5ハイスツイストドリルの手研ぎの方法
卓上ボール盤で穴加工を行なっていると、手送りに抵抗を感じたり、真円があかなかったりといったことが発生した場合は角部や切れ刃が摩耗したためで、再研削をして切れ刃を修正します。
第7章 リーマ作業
-
7-1リーマの各部名称あらかじめ開けられた下穴を仕上げ面粗さの向上や良好な寸法精度を得る方法として、ファインボーリングや内面研削などがありますが、これらの加工法と比較して
-
7-2リーマの種類と特徴JIS(日本工業規格)ではリーマの種類を、(1)刃部の材料および表面処理、(2)構造、(3)取り付け方法、(4)機能または用途の4種類で分類しています。
-
7-3リーマ作業の方法リーマ加工は、要求される寸法よりわずかに小さい下穴にリーマを通して真円で滑らかな面の穴を得る作業です。