化学製品・高分子製品の基礎講座
2-5 化学製品における表示規制
商品の購買者に正しい商品情報、しかも最低限必要不可欠な内容を伝えるために、様々な法律によって表示規制が行われています。モノタロウで化学製品、高分子製品を購入する場合に関係の深い表示規制を紹介します。
正式な名称は「不当景品類及び不当表示防止法」です。不当な表示を規制する一般的な法律です。商品やサービスの品質、規格その他の内容について、実際のものより著しく優良であると誤認させる表示、広告が、時々この法律違反として挙げられ、報道されます。
化学製品に関しては、2014年に「二酸化塩素を利用した空間除菌を標榜する商品」が、2015年に「吊り下げ虫よけ商品」が、表示に合理的な根拠がないとして法律違反とされ、それら商品の著名な製造会社が一斉に措置命令を受けました。 そのほか、遮熱効果、紫外線遮蔽効果がない窓用フィルム、表示よりも持続時間が短い熱中症対策の首巻冷却ベルト、トイレに流せるが過大表示とされたトイレクリーナー、原産国が違っている化粧品など、毎年多くの違反事例が公表されています。
衣料などの繊維製品に繊維名称、混用率、洗濯等の取扱い方法、表示者名、連絡先を表示するタグが付いていることは良く知られており、購入時の選択判断に利用されています。このような表示を義務付けている法律が家庭用品品質表示法です。繊維製品のほか、合成樹脂製品(洗面器、食器、食品容器など指定されたもの)、 電気機械器具(洗濯機、掃除機、冷蔵庫など指定されたもの)、雑貨工業品(合成洗剤、漂白剤、塗料、接着剤、ワックスなど指定されたもの)について、それぞれの製品ごとに表示すべき項目(成分、使用上の注意事項など)が決められています。指定された製品のうち、モノタロウに関係の深い製品について表示内容を表に示します。
品質表示法で指定された化学製品の例と表示すべき内容
種類 | 指定製品 | 表示すべき内容(*) |
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合成樹脂加工製品 | バケツ | 原料樹脂、耐冷温度、容量 |
弁当箱、皿、椀、コップ、食品用シール容器 | 原料樹脂、耐熱温度 | |
ポリエチレンフィルム製またはポリプロピレン製の袋 | 原料樹脂、耐冷温度、寸法、枚数 | |
雑貨工業品 | 塗料 | 品名、色名、成分、用途、正味量、塗り面積、使用方法、用具の手入れ方法 |
接着剤 | 種類、成分、毒性、用途、正味量 | |
住宅用又は家具用洗剤 | 品名、成分、液性、用途、正味量、使用量の目安 | |
衣料用、台所用又は住宅用漂白剤 | 品名、成分、液性、正味量、使用方法 | |
住宅用又は家具用ワックス | 品名、成分、種類、用途、正味量、使用量の目安 |
(*)表示すべき内容として、取扱い上の注意、表示者名、住所または電話番号は共通するので、それ以外の特定の内容を示す
人や生態系に有害性(オゾン層破壊性を含む)があり、環境中に広く存在する又は将来的に広く存在する可能性があると認められる指定物質(2016年12月時点で562物質)を1%以上含有する化学製品を取引(譲渡、提供)する場合に、化学物質等安全データシート(SDS)を事前に提供することを義務付けた法律です。 指定物質にはプラスチック、ゴムは含まれませんが、一部の農薬は含まれます。また指定物質の追加、削除が時々あるので注意する必要があります。SDSには、化学物質の名称、性状、安定性、有害性、取扱い上の注意措置、漏出した際の措置、廃棄・輸送上の注意などを記載しなければなりません。
人や生態系に有害性(オゾン層破壊性を含む)があり、環境中に広く存在する又は将来的に広く存在する可能性があると認められる指定物質(2016年12月時点で562物質)を1%以上含有する化学製品を取引(譲渡、提供)する場合に、化学物質等安全データシート(SDS)を事前に提供することを義務付けた法律です。 指定物質にはプラスチック、ゴムは含まれませんが、一部の農薬は含まれます。また指定物質の追加、削除が時々あるので注意する必要があります。SDSには、化学物質の名称、性状、安定性、有害性、取扱い上の注意措置、漏出した際の措置、廃棄・輸送上の注意などを記載しなければなりません。
- 医薬品医療機器等法
- 表示箇所:医薬品、医薬部外品、化粧品の容器など
- 表示すべき内容:製造販売業者の名称、住所、製品名称、製造番号、内容量など(医薬部外品はその旨を表示)
- 農薬取締法
- 表示箇所:農薬の容器など
- 表示すべき内容:登録番号、農薬の種類、名称、物理的化学的性状、有効成分及びその他の成分の各成分の種類及び含有量、内容量、適用病害虫の範囲及び使用方法、最終有効年月など
- 肥料取締法
- 表示箇所:肥料の容器、包装など
- 表示すべき内容:保証票の文字、肥料の種類、名称、保証成分量、生産又は輸入業者の名称、住所、生産又は輸入年月、正味重量、登録番号など
- 毒物劇物取締法
- 表示箇所:毒劇物の容器等
- 表示すべき内容:医薬用外の文字、毒物または劇物の文字、名称、成分及びその含量など
- 消防法
- 表示箇所:危険物の貯蔵所、取扱所の標識、掲示板、注意表示
- 表示すべき内容:標識(貯蔵所等である旨を記載)、掲示板(危険物の類別、品名、貯蔵または取扱最大数量、指定数量の倍数、危険物保安監督者の氏名又は職名を記載)、注意表示(火気厳禁等の危険物に応じた記載)
- 資源有効利用促進法
- 表示箇所:指定表示製品(プラスチック容器包装、飲料・酒類・特定調味料用PETボトル、塩化ビニル製建設資材など)
- 表示すべき内容:識別表示(下記参照)。(材質表示(PE、PPなど)に法的義務はないが、望ましいとされる)

資源有効利用促進法(識別表示)
医薬品については、表示すべき事項ばかりでなく、記載してはならないことも定めています。虚偽又は誤解を招くおそれのある事項、承認を受けていない効能、効果又は性能などです。
『化学製品・高分子製品の基礎講座』の目次
第1章 化学製品を理解するための基本
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1-1化学製品の構成モノタロウで販売している製品を化学の目から理解するための基礎講座です。
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1-2化学物質の名前化学製品の成分、すなわち化学物質の名前はカタカナが並んで訳がわからないと思っておられる方が多いと思います。
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1-3酸とアルカリ酸とアルカリは小学校、中学校、高校の理科で習っており、何を今さらと思われるかもしれません。
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1-4無機薬品の特徴と種類人工のものも含めると元素は110以上知られており、このうち安定に存在できる最大の元素は原子番号82、質量数208の鉛です。
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1-5有機薬品とモノマー医薬品、化粧品、洗剤、プラスチック製品など、私たちの身の回りにある化学製品の多くは有機化合物です。
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1-6有機溶剤の用途と種類有機溶剤の用途を表に整理して示します。まず化学物質を溶解するという、字義通りの用途自体にも様々な使い方がある上に、そのほかにも様々な用途があ
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1-7界面活性剤の用途と種類界面とは物質と物質の境のことです。気体と固体、気体と液体の境は、通常は固体や液体の表面と呼んでいますが、界面のひとつです。
第2章 化学製品の利用に当って留意すべき法規制
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2-1化学製品における事故防止関係の法規制化学製品には、燃えやすかったり、有毒であったりと、知らないで使うと危険な物質が使われていることがあります
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2-2有害化学物質の安全規制火を使うことによって人類は他の動物からの攻撃や寒さを防ぐことができるようになったばかりでなく、食生活はもちろん、道具づくりにおいても大きく進歩しました。
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2-3化学物質の効能と安全の両方を求める規制化学物質の安全規制法の中には、化学物質を使用するからには必要とする性能を確保し、なおかつ安全性を厳しく要求するものがあります。医薬品、農薬、肥料などへの規制です。
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2-4環境保全を目指す法規制環境保全対策には、身近な公害対策、ごみ処理、自然環境保護から、地球規模の環境対策まで様々なものがあります。
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2-5化学製品における表示規制商品の購買者に正しい商品情報、しかも最低限必要不可欠な内容を伝えるために、様々な法律によって表示規制が行われています。
第3章 化学製品の基本
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3-1農薬の特徴と分類様々な化学製品について、その製品を理解するための基本知識を説明します。
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3-2化学肥料の特徴と分類田畑では育てた農作物が持ち出されるため、植物に必要な養分の自然循環ができません。
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3-3洗剤の特徴と分類洗剤は、図のように家庭用、業務用、工業用に分けられます。
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3-4塗料の特徴と分類塗料は、ものの表面を覆うことによって表面を保護し、また美観を与える化学製品です。
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3-5接着剤の特徴と分類接着剤は、ものの表面にくっついて、ものとものとを接合させる化学製品です。
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3-6印刷用化学品の特徴と分類ヨーロッパの歴史において中世から近世への開幕の主役は、羅針盤、火薬、紙と印刷でした。
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3-7染料・顔料の特徴と分類染料も顔料も色を付けるために使われる化学製品です。
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3-8試薬の特徴と分類試薬とは文字どおり「試験研究用薬品」のことです。
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3-9殺菌剤・消毒剤・抗菌剤の特徴と分類人間の目に見えない細菌、カビ、ウイルスなどは、食中毒や伝染病などの原因になる可能性があり、その対策は人類にとって長年の課題でした。
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3-10香料・消臭剤・脱臭剤の特徴と分類空気中を漂ってきた化学物質の分子が鼻の奥の嗅粘膜に溶け込んで嗅細胞が電気信号を発し、これが脳に伝達されて「におい」を感じます。
第4章 高分子製品を理解するための基本
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4-1高分子製品の構成高分子は、包装材料、日用品雑貨、衣料などの身の回り品から器具・機械の部品、土木建築材料、さらには漁船・プレジャーボート、航空機本体や翼のような大型製品にまで広く使われています。
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4-2高分子成形加工法多くの高分子製品は、フィルム・袋、繊維、シート、カップ・トレイなどの容器、管、板、部品などに成形加工されて使われます。
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4-3樹脂添加剤4-1で述べたようにプラスチック製品は、高分子だけから成っている訳ではありません。着色するために着色剤が加えられ、また発泡製品をつくるために発泡剤が加えられることは分かりやすい例です。
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4-4ゴム薬品4-5で説明しますが、ゴムの成形加工製品には加熱すると再度溶融するゴムと、加熱してももはや溶融も軟化もしないゴムがあります。
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4-5熱可塑性高分子、熱硬化性高分子すでに4-2で簡単に説明しましたが、高分子には熱可塑性高分子と熱硬化性高分子があります。
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4-6高分子材料に期待される特性第4章の冒頭で述べたように合成高分子が現在のように幅広く使われるようになったのは20世紀後半からです。人類は文明の始まる以前から天然高分子を大量に使ってきました。
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4-7強度金属、セメント、ガラス、セラミックス、木材、高分子製品など様々な材料の力学的性質を比較する場合、強度(つよさ)は最も基本となる指標です。
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4-8耐熱性、耐寒性4-2で説明しましたように高分子は、その熱挙動や分子構造から熱硬化性高分子と熱可塑性高分子に分類できます。
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4-9透明性物質に光が入った時に可視光すべてを吸収して熱に変換する場合には透明になりません。金属が不透明なのはこれに該当します。
第5章 主要な高分子材料の種類と特長
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5-1ポリエチレンポリエチレンは、世界においても、日本においても、最も生産量・消費量の多い高分子材料です。
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5-2ポリプロピレンポリプロピレンPPは、プロピレンCH2=CH-CH3というガス状炭化水素を重合した高分子です。
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5-3スチレン系樹脂スチレン系樹脂はスチレンC6H5-CH=CH2を主成分とするプラスチックです。主要なスチレン系樹脂にはポリスチレン、AS樹脂(SAN)、ABS樹脂があります。
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5-4ポリ塩化ビニルポリ塩化ビニルは塩化ビニルを主成分とするプラスチックです。塩化ビニル単独のポリマーが圧倒的に多くを占めますが、加工性や性能などを改善することを目的に酢酸ビニルやアクリロニトリルと共重合させたコポリマーも少量つくられています。
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5-5PET繊維・樹脂(A-PETも)ポリ塩化ビニルは塩化ビニルを主成分とするプラスチックです。塩化ビニル単独のポリマーが圧倒的に多くを占めますが、加工性や性能などを改善することを目的に酢酸ビニルやアクリロニトリルと共重合させたコポリマーも少量つくられています。
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5-6ナイロン繊維・樹脂ナイロンは1939年に最初の合成繊維としてアメリカのデュポン社によって工業化され、大成功を収めたので、合成繊維の王座をすでにポリエステル繊維に奪われたとは言え、現在でも合成繊維の代名詞になるほど有名です。
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5-7エンジニアリングプラスチック5-1から5-4で説明した汎用プラスチック(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル)は耐熱性がおおむね100℃以下であるのに対して、耐熱性が100℃以上で、しかも強度が高い熱可塑性プラスチックをエンジニアリングプラスチックと言います。
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5-8ポリウレタンポリウレタンはウレタン結合-NHCOO-をもつ高分子です。ウレタン結合はイソシアネート(-NCO)という非常に反応性の高い化合物群とアルコール(-OH)の反応によって生成します。
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5-9エポキシ樹脂エポキシ樹脂は、図に示すように高分子の両末端にエポキシ基をもつプレポリマーと硬化剤(ポリアミン、酸無水物、ポリアミドなど)を反応させて生成する網目状の分子構造をもつ熱硬化性高分子です。
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5-10アクリル樹脂(PMMA,アクリル繊維、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル)アクリル樹脂と呼ばれる高分子は、図に示す広義のアクリル系ポリマー全体を指すこともありますし、ポリアクリル酸エステルだけ、あるいはメタクリル樹脂だけを指すこともあります。
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5-11フッ素樹脂、ケイ素樹脂(含むシリコーンオイル)フッ素樹脂、ケイ素樹脂はともに1940年代前半に米国で工業化された古い高分子材料です。
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5-12汎用合成ゴムゴムはエラストマー(弾性体)とも呼ばれ、常温で著しく大きな弾性をもつ物質の総称です。
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5-13特殊合成ゴム特殊ゴムは、すべての非ジエン系ゴムとジエン系ゴムのうちブチルゴム(IIR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)が該当します。
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5-14その他の高分子材料(熱可塑性ゴム、スーパーエンプラ、機能性高分子)高分子材料には、今まで紹介した高分子以外にも多数あります。その中で、大くくりして重要なものを最後に3つ紹介します。