工具の通販モノタロウ 化学製品・高分子製品の基礎講座 化学製品における事故防止関係の法規制

化学製品・高分子製品の基礎講座

私たちは、あらゆるところで多種多様な「化学製品」に囲まれています。 それらの化学製品、あるいは化学物質について、知っておくべきこととは何か。 本連載では、製品の成分や仕様説明に記載されている化学物質、高分子材料について理解できるよう、 化学製品の基礎知識をご紹介していきます。
第1章 化学製品を理解するための基本

2-1 化学製品における事故防止関係の法規制

化学製品には、燃えやすかったり、有毒であったりと、知らないで使うと危険な物質が使われていることがあります。このため、化学製品の製造はもちろん、使用にあたっても様々な法律による規制がかけられていることがあります。 もちろん使用量、保管量との兼ね合いもありますが、少量であっても、利用する方、一人一人の安全を自分で守るために、最低限の知識をもつことは必要です。ここでは利用に当たって留意すべき法規制を簡潔に紹介することによって、最低限の知識をもっていただきたいと思います。

化学製品における事故防止関係の法規制

火災、爆発、急性中毒、慢性中毒などの事故を防止するために、消防法、高圧ガス保安法、液化石油ガス法、労働安全衛生法、火薬類取締法など、たくさんの規制法があります。その中でモノタロウの利用者に特に関係の深い法規制としては、危険物に関係する消防法、 有機溶剤中毒や特定化学物質に起因する健康障害発生を予防する労働安全衛生法があります。

(1)消防法(危険物)

モノタロウの商品の説明欄に危険物とか非危険物と書いてあることがあります。消防法の規制対象になるか、ならないかを明記しているのです。消防法は火災爆発の防止のための広汎な法律です。消防法の危険物とは火災の危険性のある物品のことです。 消防法ではそのような物品を自然発火性物質、禁水性物質、可燃性固体、酸化性物質などいくつかに分類していますが、モノタロウの商品で最も関係の深いのは危険物第4類とされている引火性液体です。引火点とは点火源(スパーク、炎など)を近づけた時に液体に着火する最低限の温度を指します。 目に見えない液体の蒸気が広がって引火するので、思いがけないほど遠くにある点火源からでも引火することがあることを知っておいて下さい。一方、点火源がない状態で液体を加熱していったら燃え出す温度を発火点と言います。一般に発火点に比べて引火点ははるかに低い温度になります。

危険物第4類は1気圧での引火点に応じて、表のように第〇石油類などに分類されています。特殊引火物から第2石油類までは通常の生活している温度で引火する危険があるので、取扱いには特に注意が必要です。 第3石油類から動植物油類でも、いったん着火してしまったら、その高温によって引火が継続して燃え広がるので油断できません。

表1 消防法危険物第4類

名称 引火点 具体例
特殊引火物 -20°C以下で沸点40°C以下 ジエチルエーテル、ペンタン
第1石油類 21°C未満 アセトン、ガソリン、ベンゼン、アセトニトリル
アルコール類 炭素数3以下の
飽和1価アルコール
メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール
第2石油類 21°C以上70°C未満 灯油、軽油、キシレン、DMF
第3石油類 70°C以上200°C未満 重油、ニトロベンゼン、グリセリン、エチレングリコール
第4石油類 200°C以上250°C未満 潤滑油、フタル酸ジオクチル
動植物油類 250°C未満 ヤシ油、亜麻仁油

第〇石油類のような名称であっても、炭化水素である石油だけでなく、引火点が該当する物品(アセトンなどの有機工業薬品)がすべて含まれることに注意してください。 逆にたとえばエチルアルコールのような水溶性の危険物は、水で希釈して引火点が危険物に該当しなくなれば、その製品は非危険物になります。通常のお酒は危険物には該当しません。

(2)労働安全衛生法(有機溶剤、特定化学物質)

労働安全衛生法は労働者の安全と衛生を守るための法律です。ボイラーを含む機械などによる物理的な労働災害だけでなく、化学物質による健康障害も対象にしています。有機溶剤は1-6で説明したように広い用途に使われています。1-6で説明したほとんどすべての有機溶剤が有機溶剤障害予防規則の対象になります。 さらに、これらの有機溶剤を5%超含有する物品(たとえば塗料、接着剤)も対象になります。有機溶剤の中毒には急性中毒に加えて慢性中毒(貧血、肝機能障害、腎機能障害、神経障害など)があるので注意が必要です。タンクや船舶、車両内の洗浄等の作業はもちろん、屋内作業場など通風の不十分な作業場で有機溶剤を使う作業が幅広く規制対象になります。 たとえば有機溶剤含有物を用いる印刷業務、文字の書き込み業務、描画業務、接着業務、乾燥業務などです。ただし作業時間1時間当たり消費する有機溶剤の量が一定量以上の場合に限ります。規制対象になった場合には、蒸気発散の密閉や排気、換気装置の設置、作業主任者の選任と所要業務の履行、作業場の濃度測定、労働者の健康診断などが事業者に義務付けられます。

一方、特定化学物質障害予防規則(特化則)は、化学物質によるがん、皮膚炎、神経障害などの健康障害を予防するための規制です。とくに労働災害として過去に発がん性が確認された物質(特定化学物質第1類)は原則、製造禁止措置が採られるなど、有機溶剤に比べてはるかに厳しい規制がかけられています。 特定化学物質第2類もがんなど慢性障害を起こす約60の物質を対象としており、その中でも、特に管理を厳しくすべきものを特定第2類物質や特別有機溶剤としています。表の例に示すように、意外にありふれた物質が第2類物質、とくに特定第2類や特別有機溶剤になっているので注意が必要です。

表2 特定化学物質の一例

特定化学物質の区分 物質名 備考
第2類特定化学物質 テトラクロロエチレン 特別有機溶剤
トリクロロエチレン 特別有機溶剤
メチルイソブチルケトン(MIBK) 特別有機溶剤
エチルベンゼン 特別有機溶剤
ベンゼン 特定第2類物質
ホルムアルデヒド 特定第2類物質

特定化学物質第3類は大量漏洩によって皮膚炎など急性中毒を起こす硫酸、フェノールなど8物質を対象としています。特定化学物質は、多くの場合、特定化学物質を1%超含有する物品も規制対象になり、有機溶剤障害予防規則と違って屋内作業場などの限定もありません。 特定化学物質の種類は多く、物質ごとに細かく規制方法が定められています。該当する物品を取り扱うことになる場合には規制内容をよく調べる必要があります。モノタロウの商品説明に「MIBK、ベンゼンフリー」などとあるのは、これらの特定化学物質を使っていないことを強調しているのです。

執筆: 日本化学会フェロー 田島 慶三

『化学製品・高分子製品の基礎講座』の目次

第1章 化学製品を理解するための基本

第2章 化学製品の利用に当って留意すべき法規制

第3章 化学製品の基本

第4章 高分子製品を理解するための基本

第5章 主要な高分子材料の種類と特長

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