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溶接棒の基礎知識

初心者が溶接棒と聞くと単純に一種類の工具としか思いつかないかもしれません。しかし、実はこの溶接棒はさまざまな種類に分かれています。では、一体どのぐらいの種類があって、どんな基準で分類されているのかなど初心者にもわかるよう解説してみたいと思います。

その1:溶接棒の種類について

「溶接棒」を正しくいうと「被覆アーク溶接棒」になります。被覆アーク溶接棒が溶接の際に、センター部分に使われるスラグ剤やガス発生剤などのフラックス(被覆剤)の種類によって、溶接棒の種類が区別されているのです。フラックスの種類は、「イルミナイト系」、「ライムチタニヤ系」、「低水素系」や「高酸化チタン系」などの四大系列に分かれています。これらによって、溶接棒もそれぞれ四種類に分類されています。

その2:被覆剤の役割 

溶接棒を利用してアーク溶接をしているとき、被覆剤が溶融することによって、発生した複合作用が溶接部にシールドをつくり、溶接の仕上げや維持をよくしてくれます。もう少し詳しく説明すると、被覆剤の存在によってアークの発生が容易になるため、アークを安定して発生させることができます。また、ガスを発生させたとき溶融金属を覆っている大気の酸素や窒素が溶接金属に入るのを防ぐことができます。また、発生したスラグはビードの外観を良くし、冷却速度を遅らせてくれます。冷却の速度が遅くなることにより、さまざまな姿勢での溶接がしやすくなります。被覆剤が含む成分によって酸素をスラグとして強制除去することができるので、脱酸や清浄作用ができます。さらに、合金元素を付け加えることによって、目的の性能に達することも可能になります。

溶接棒の種類その1:イルミナイト系

イルミナイト系とは、チタンと鉄の酸化物を結合した鉱物を主原料としている被覆剤で、それを主としている溶接棒のことを指しています。メリットは、スラグの流動性がよく、溶け込み、機械的性質がいいという点です。また、デメリットは、水素が多いので、厚板や拘束の大きい構造物には向いていません。このイルミナイト系は日本が独自に発展させたもので、今ではまだ諸外国ではあまり見かけない系列の一種だといえます。たとえば、神戸製鋼でいうと「B-10」「B-14」「B-17」などBシリーズと呼ばれているものがこれに含まれます。また日鉄でいうと「G-200」「G-300」というGシリーズがこれにあたります。

溶接棒の種類その2:ライムチタニヤ系

ライムチタニヤ系は、ライム(石灰)とチタン(酸化チタン)を主原料としている被覆剤で、それを主としている溶接棒のことをさしています。メリットは、アークは穏やかでスラグ流動性がよく、多孔質なので立向上進溶接は簡単にできます。デメリットは、耐プローホール性が劣るので、放射線透過試験が要求される場合は注意が必要です。たとえば、 神戸製鋼でいうと「Z-44」、日鉄でいうと「NS-03Hi」、ニッコー溶材の「LC-3」「LC-08」などが代表的な銘柄です。

溶接棒の種類その3:低水素系

低水素系とは、炭酸カルシウム、フッ化カルシウムを主原料としている被覆剤で、それを主としている溶接棒のことを指しています。メリットは、溶接金属中の水素量がもっとも低く、強力な脱酸作用があり酸素量が少ないので、溶着金属のX線性能、機械的性質や溶接作業性に非常に優れています。デメリットは、湿気に弱いため、床面や壁から10cm以上離す必要があり、通風性の良いところで保管する必要があります。たとえば、 神戸製鋼でいうと「LB-26」、「LB-52U」のLBシリーズがこれに含みます。日鉄住金でいうと「S-16」、ニッコー溶材の「LS-16」などが代表的な銘柄です。

溶接棒の種類その4:高酸化チタン系

高酸化チタン系とは、高酸化チタンを主原料としている被覆剤で、それを主としている溶接棒のことを指しています。メリットは溶け込みが浅いので光沢のあるビード外観をもたらせることができます。外観重視の薄板や、軽構造物などの溶接に適しています。デメリットは、機械的性質には劣るので、主要部分の溶接にはあまり使われていません。たとえば、 神戸製鋼でいうと「B-33」、日鉄住金でいうと「S-13Z」、ニッコー溶材の「SK-260」などが代表的な銘柄です。

  イルミナイト系 ライムチタニヤ系 低水素系 高酸化チタン系
溶け込み
ビードの伸び
ビード外観
スパッタ
作業難易