スイッチの種類と選び方
スイッチとは
スイッチとは、外部操作や検出といった機械的動作によって電気信号の切り替えを行う部品のことです。電気の通り道を開いたり遮断したりする「電気回路のオン/オフ」、電気を流す道を変える「電気回路の切り替え」によって電流をコントロールします。
電気を流すには、電源と負荷(照明など)を繋ぐ導線による「輪」=「回路」を成立させることが必要です。スイッチの内側には金属片が設置されており、これが電気の通り道となります。「オン/オフ操作」ではスイッチを操作して金属片が動くことで、開いていた回路が閉じて電気が流れ、照明が点くなどの結果に繋がるのです。また「切り替え操作」の場合は2通りの電流経路があり、スイッチを押す度に電気が流れる道が変わることで、2ヶ所の照明を交互に点灯させることなどができます。
これらを応用すれば、ひとつの回路でも2ヶ所のスイッチを取り付けることも可能です。たとえば1階と2階にスイッチがある階段の照明では、各所のスイッチを押す度にそれぞれ配線を変更しています。その度に回路が成立したりしなかったりするため、別々の場所でもひとつの照明の操作を共有できるというわけです。
スイッチには、押しボタン式やスライド式、トグル式など様々な大きさ・形状があります。目的や用途に合わせて、適したタイプを選ぶと良いでしょう。
スイッチの種類と選び方
汎用的な目的で使用されるスイッチは、種類ごとに選ぶ必要があり、特定の動作環境で使用する場合はスイッチの動作方法で選ぶ必要があります。スイッチは形状ごとにさまざまなタイプに分類されます。

もっとも一般的なスイッチで、ボタンを押すことで電流のオン・オフを行います。
通常は「ボタン」が操作部ですが、中にはボタンなしの「プランジャー」(スイッチを押す軸部分)タイプもあります。

24Vの電気信号により回路をオン・オフさせるリレー装置を搭載しています。照明など幅広い用途で採用されています。

動作させるために鍵が必要なタイプです。安全性を求められる工作機械などに導入されています。

スナップスイッチともいいます。ホビーや工作などに使用される小さめのスイッチです。
形状は「バット」と呼ばれる標準タイプ以外に、レバーキャップをつけたもの、短いもの、長いもの、フラットなもの、レバーの上部を上に持ち上げないと操作できない誤操作防止用のレバーロックタイプなど様々な形状があります。
トグルスイッチで使われる用語です。レバーの動く位置が2箇所のものは「2ポジション」、3箇所のものは「3ポジション」と言います。
※単極双投の場合、「ON-ON」の2ポジションのものと、「ON-OFF-ON」の3ポジションのものがあります。

出っ張りが少ないため多くの電化製品に利用されています。部屋の照明などもロッカースイッチの一種です。
操作部が横から見てTの字やYの字を逆にしたようなものもあります。

ロッカー式と同じく出っ張りが少なくサイズも小さいため、おもちゃやホビー、小型の電化製品など広く採用されています。

パソコンのキーボードのようなプッシュ感を持つスイッチです。電子機器などに採用されています。構造的にはボタン式と同じですが押し込むことで電流が流れ離すと遮断されるといった目的で使用されます。

足で電流の流れを操作するタイプです。旋盤や業務用ミシンなどに利用されています。

回転させて電流をコントロールします。電気の強弱などを制御しやすく、家電ではホットプレートなどに採用されています。

基板上で動作する小型のスライドスイッチ、ロータリスイッチです。通電検査を施さなくても設定状態がわかるといったメリットがあります。
スイッチの回転と回路
スイッチには接点と呼ばれる箇所があり、固定接点に可動接点がついたり離れたりすることで回線がつながります。
その固定接点の数(回路の数)により、種類が分かれます。
- 単投式 1回路のON/OFFを切り替えます
-
双投式 2回路のONを切り替えます
※単投式のスイッチとしても使うことが出来ます -
三投式 3回路のONを切り替えます
※ちょっと珍しいスイッチになります。イメージで言うと、赤青黄の信号を切り替える感じです。
※スイッチを入れる操作を英語で「throw」という動詞で表すので、「投」という専門用語が使われています。
1つのスイッチで「同時に」回線を切り替えたい場合は2極、または、3極、4極のスイッチを使います。
音楽プレイヤーで再生すると、左右両方をイヤホンから曲を流す場合などがイメージです。
「投」と「極」を組み合わせて、下記のような表現をします。
- 単極単投 SPST(Single Pole Single Throw)
- 単極双投 SPDT(Single Pole Double Throw)
- 2極単投
- 2極双投 2極2投でも構いませんが、2極双投がよく使われます。
- 3極単投、2極3投などなど・・・・
※英語では極がPole、投がThrowになります。
※ロータリスイッチの場合のみ、「極」「投」を使わず、「回線」「接点」を使うので、3極3投式のロータリスイッチは「3回線3接点」と表現します。
スイッチの動作方式
スイッチを目的別で選ぶ場合、その特性をよく把握しておく必要があります。
押し込んでいる間だけ電流が流れ、手を離すと遮断されるスイッチです。キーホルダー型の小型LEDライトなどに搭載されています。その他にも、バスの降車ボタンなどもモーメンタリ動作が応用されています。

N/O(ノーマリーオープン)
いつもはオープン(開)で押した時だけクローズ(閉)になる

N/C(ノーマリークローズ)
いつもはクローズ(閉)で押した時だけオープン(開)になる
スイッチを押すたびにオン・オフが切り替わってゆく動作を行います。モーメンタリのように手を離しても電流が遮断されることはありません。テレビなど家電製品の主電源などに広く利用されています。
ONの時にボタンが押された状態で固定されます
ボタンを押し込むと、ロックがかかり電流が流れた状態が維持されます。解除するにはスイッチをターンさせることでロックが外れ、電流の流れが遮断される仕組みです。b接点(N/C)のものは非常停止用押しボタンスイッチとして利用されています。
ボタンを押し込むと、ロックがかかり電流が流れたままの状態になります。押しボタンを手で引き戻すことでロックが外れ、電流の流れが遮断されます。スイッチによっては、押し込んで電流が止まるなど逆の動きをするものもあります。
スイッチの接点の構成
スイッチを操作すると接点が閉じるなど、回路における接点がスイッチによってどう変化するかを表したものを接点構成と言います。接点構成の違いがわからないと回路図を誤って読んでしまう恐れがあるので、しっかりと確認しておきましょう。
スイッチを操作することで、開いていた回路が閉じる接点構成です。通常は通電しておらず(オフ状態)、スイッチによって接点を繋ぐことで電流を流す(オン状態)タイプで、「NO」と表すことも。スイッチを入れることで負荷を動作させたい時に使用します。
スイッチを操作することで、閉じていた回路が開く接点構成です。常に通電しており、スイッチを入れることで接点を離して電流を断つタイプで、「NC」と表すこともあります。スイッチによって負荷の動作を止めたい場合(緊急停止装置など)に使用するものです。
a接点とb接点の両方の機能が組み合わさってひとつのスイッチに入っている接点構成です。スイッチの中には共通端子(COM)・常閉端子(NC)・常開端子(NO)が含まれており、通常状態では共通端子と常閉端子が接しています(b接点)。 スイッチを押すことで共通端子と常閉端子が離れ、共通端子と常開端子が接します(a接点)。スイッチの操作によって2つの回路を切り替えたい時に使用する方法です。
接点の構成は、以下のように数字と記号で表します。1.2.3といった数字は回路数(動作する接点の数)を表しています。
- 1a…1個の回路を通電に切り替える
- 2a…2個の回路を一度に通電に切り替える
- 1b…1個の回路の通電を切る
- 2b…2個の回路の通電を一度に切る
- 1c…a接点とb接点を切り替える
- 2c…2個の回路のa接点とb接点を一度に切り替える
- 3a1b…3個の回路を通電にし、1個の回路の通電を切ることを同時に行う
- 1a1b…1個の回路を通電にし、1個の回路の通電を切ることを同時に行う
- 2a2b…2個の回路を通電にし、2個の回路の通電を切ることを同時に行う
耐環境性
スイッチの防塵性・防水性を定義するためIEC規格があります。
「IP-□□」と表示され、□にそれぞれ決まった数字が入ります。
防塵性を表します。「粉塵が内部に侵入しない」という意味で通常「6」が入ります。
防水性を表します。
- 0 水の浸入に対して保護がない
- 4 水の飛沫に対する保護がある
- 5 噴流水に対する保護がある
- 7 水圧がかかっても大丈夫(水深1mに30分漬けてもOKの場合 ※スイッチ操作はしないことが前提)
2つの数字の組み合わせでIP-64、IP-65、IP-67などがあります。
この防塵・防水性の表示が、スイッチのある場所に限定される場合があります。
パネルに取り付けた場合に、パネル表面にだけ防塵性・防水性が働く場合です。その際は、「パネルシールIP-67」というように表現されます。
また、簡易的に防塵性・防水性を得る為に、「防水キャップ」が用意されているスイッチや、「丸洗い洗浄」に対応したスイッチもあります。
防水キャップは、ゴム製で、スイッチの操作部とナット部を覆うことで、パネル裏面への粉塵や水の浸入を防止するものです。
丸洗い洗浄対応スイッチは、はんだ付け用フラックスの短時間での自動洗浄に対応するだけの簡易的な防水性を持っているが、IPグレードで示されるまでの防水性は持っていないものになります。
IP規格の概要はこちらの記事でも説明されています。
規格と負荷
定格とは、そのスイッチがどれくらいの電流・電圧まで使えるか、という目安で、スイッチを選ぶ際に最も重要な基準です。
「AC125V6A」といった表現になります。
※定格の数値は、「抵抗負荷」と呼ばれる、もっとも楽な負荷の時の値になり、実際の回路では、なんらかの誘導分や容量分が含まれるので、定格電流の80%を目安とすることが多い。
※抵抗負荷以外では、誘導負荷、ランプ負荷、モータ負荷、コンデンサ負荷、そして、直流負荷などに対しては注意が必要です。
※あくまで目安ですので、スイッチを選ぶ際は、使用条件を確認し、十分に余裕を持ったスイッチを選んでください。
回路中にモータ、トランス、ソレノイドなどのコイルが使用されている場合、遮断時に大きな逆誘導起電圧が発生し、アークによってスイッチ接点の消耗が大きくなります。
ランプ(白熱電球)をつないだ時の負荷で、フィラメントが冷えた状態でスイッチを入れると、定常電流の10~15倍の過渡電流が流れ接点が溶け、溶着してしまうことがあります。
モータは起動する際に、定常電流の3~8倍の突入電流(=スイッチを入れた瞬間に流れる電流)が流れる為、接点の消耗が大きくなります。種類によって突入電流の大きさが違っています。
コンデンサ負荷は、スイッチを入れた瞬間にコンデンサが電流を吸い込むため、非常に大きな突入電流が流れるために発生します。実負荷で突入電流の大きさを確認し、それが定格電流を超えない範囲で使用する必要があります。
直流の場合は、交流と違い、電圧・電流が零になる点がないため、小負荷でも大きなアークが発生します。特に50V以上ではアークの持続時間も極端に長くなり、しゃ断できなくなることもあります。
スイッチは、種類や動作方法、接点構成などを考慮したうえで採用する必要があります。とくに種類と動作方法には密接な関係があり、まちがった種類のスイッチを選んでしまうと目的としていた動作が得られないこともあるのです。そのためには接点構成をよく把握し、それぞれのスイッチの特性を知ることが大事なのです。