シリカゲルの種類と特長

シリカゲルは、食品包装などの日常よく目に触れる部分から、床下調湿材のような隠れた部分に至るまで、我々の生活のさまざまなところで使用される吸湿・調湿剤です。 そしてA型とB型の違い、また包装資材の違いによって、それぞれ異なる特長を持っているのですが、その種類と特長とはどのようなものなのでしょうか。

シリカゲルとは

シリカゲルとは、優れた吸湿性・化学的安定性・安全性を持ち、さらに繰り返し使用でき経済性にも優れた物質です。様々な分野で使用されていますが、特に包装用乾燥剤としての用途は、JIS規格に認定されている唯一の素材となります。

シリカゲル

またシリカゲルは、ケイ酸ナトリウム水溶液に酸を加えることで生産される化成物質です。二酸化ケイ素のコロイド粒子が、無秩序に結合して出来る多孔質構造の物質で、凝集したコロイド粒子間の不規則な隙間、つまり「細孔」を有しています。この無数の細孔がシリカゲルの吸湿性能を左右しているのです。

A型、B型の違い

コロイド粒子が緻密に凝集し、細孔が密であるシリカゲルがA型です。細孔の容積が小さいため、吸湿量ではB型に劣りますが、低湿度環境における吸湿力に優れています。150℃以上での加熱によって水分を放出させ、再利用することも可能です。 主な用途は、食品乾燥剤、電子部品や光学機器、医薬品などの湿気の防止となります。

一方、細孔が疎であるシリカゲルがB型です。細孔容積が大きく、高湿度時にはA型よりも高い吸湿性能を持ちます。また常温でも高湿度下では盛んに水分を吸着し、低湿度下では放出するのも特長のひとつ。したがって、建物・船舶の調湿資材や楽器用の調湿剤など、環境を一定の湿度に調節したいシーンには最適です。

なお、25℃環境下で両者の吸着特性を比較すると、A型は湿度上昇につれてゆるやかに吸湿率が上昇し、最高吸湿率は約40%程度に留まります。 一方でB型の吸湿率は、低湿下では約1割程度ですが、湿度60%前後から急激に上昇し、最終的にはA型の2倍近い数値に。とはいえ、どちらのタイプも水溶性、腐食性はなく、空気中の水分を含んで水溶液化する(潮解)こともありません。長期間の使用でも安定した物質であると言えます。

包装別シリカゲルの特長

シリカゲルの吸湿剤は、包装資材の選択によってさまざまな特質を持たせることができます。代表的な包装材とその特長をご紹介しましょう。

MP(防塵袋)

防塵性能の高い包装材です。表層はポリエチレンフィルム、内側の層には粉塵の粒子を通さない包材を使用しており、粉塵発生率が低く抑えられています。その防塵性から、精密部品、医薬品、電子部品などの防湿剤の包装に適していますが、その反面で吸湿スピードは緩やかです。

HD・QP(ポリフィルム)

食品の乾燥剤に適した、ポリエチレンフィルムで出来た安価な包材です。HDは背貼りタイプの袋型であり、最小で0.5gの製品にも活用できるため、小容量の食料品などにも使用されます。一方のQPは四方シールの製品です。 ポリエチレンフィルムには微細な穴が開けられ吸湿性能を調節しているので、せんべいや乾物食品など湿気に弱い製品の品質を守ることができます。またHD・QPタイプの包装材は、粉塵発生量、吸湿スピードともに中程度の性能です。

PC・N(不織布)

不織布製の包装材であり、高強度で保存性の高い不織布を使用しているため、長期間の利用が可能です。不織布はフィルム系の包装に比べて強靭であるため、金属部品などが当たってこすれるような環境下でも破袋することがさほどありません。さらに不織布は繊維がランダムに配置されている特性から、高い通気性を備えています。 そのため、不織布包装のシリカゲルは、吸湿スピードがもっとも早い製品となりますが、その一方で粉塵発生量がもっとも多いことは欠点となるでしょう。

PC・N(不織布)

まとめ

シリカゲルは、幅広い分野で使用される吸湿・調湿性能のある素材です。たとえば食品用吸湿剤などの安価な用途、医薬品用防湿剤などの高い防塵性能・防湿性能が求められる用途、あるいは建築用調湿資材などの大型の用途まで、さまざまな場面で優れた防湿・調湿性能を発揮します。 それだけにA型、B型の違い、そして包装資材の違いによるそれぞれの特性は、上記を参考にきちんとおさえておくと良いでしょう。