グリスとは 選び方とちょう度の使い分け
グリスの選定のポイント
グリスはとても広い範囲で使用される潤滑剤です。その特徴から、転がり軸受けやすべり軸受けをはじめ、機械の摺動面・歯車・圧延機軸受けなどに使用されます。グリスを選定する際には、使用する部分のさまざま条件を考慮するのはもちろんのこと、機械の種類や使用温度の範囲・機械の運転条件・給脂方法・雰囲気やコストといったポイントを考慮した上で、最適なものを選びます。
すべり軸受けで潤滑する際のグリス選定を例に挙げると、まずは、グリスのちょう度番号1を基準とします。その上で、回転速度や温度によって、ちょう度を加えたり減らしたりします。回転速度が大きい場合や使用温度が低い場合には、ちょう度番号が1ランク低い、柔らかいグリスを選ぶことがポイントとなります。
グリスの一般的な性質に対する試験方法は、JISの化学工業部門で規格化されています。規格に基づいた試験によって、各グリスの成績表が作られます。また、それらの成績は、グリスを販売しているメーカーのパンフレットなどにも掲載されています。
ただし、グリスの使用特性そのもの(音響・温度上昇・グリスの漏れ・寿命など)については、規格化されていないのが現状です。これらの使用特性は、使用される条件によってさまざまなため、標準化が困難とされています。

グリスを使用する場面とは
グリスは機械トラブルの対策に用いられるため、トラブルの状態によって、選定すべきグリスが異なってきます。ここでは、トラブルの状態に応じた推奨のグリスをご紹介します。
動力伝達シャフトでは、耐高負荷・耐高荷重の潤滑剤を選ぶ必要があります。中でも、二硫化モリブデングリスを等速ジョイント部の細部まで塗り込むことで、摩耗によるガタの発生を防ぐことができます。荷重のかかる潤滑部分では、焼付きや摩耗が起こることがありますが、極圧性の優れたグリスが最適とされています。
このケースでは、ナトリウムグリスやカルシウムグリスのような、あまり質の高くないタイプのグリス、あるいは、基油の粘度が低いタイプのグリスを使っていることが考えられます。
グリスが耐久せず、焼付きが起こってしまうケースでは、ウレアグリスやリチウムグリスが最適とされています。
このケースでは、固形物が発生する原因は何かをチェックしてください。また、高温下にあることで漏れやすいタイプのグリスを使っている可能性があります。これらのトラブルの対策としては、非石けん基系のグリスが最適です。
油分離の多いグリスを使っていたり、ごみが入ってしまっていたりする可能性があります。また、配管や接続部に油にじみができていないか、グリスの給脂もスムーズに行なえているかどうかもチェックポイントといえるでしょう。
こういったトラブルの対策には、配管への抵抗が少なく、圧送性に優れたグリスが最適とされています。
このケースでチェックするポイントは、漏れやすいタイプのグリスを使っていないかどうか。また、ギヤオイルが混入していないかどうかもチェックしましょう。
この場合、ホイールベアリング専用のグリスを使うのが良いでしょう。
このケースでは、一般のころがり軸受用のグリスを使っていることが考えられます。この場合、低温特性の優れたグリスを使うと良いでしょう。