グリスの使用上の注意と管理方法
グリスの使用上の注意について
グリスには、液体の潤滑油が持つような摩耗粉や発生熱を取り除く性質はありません。また、グリスの適用速度の限界値は油の潤滑よりも低くなるといった特徴も持っています。石けんグリスでは、一部、溶解の力が高い芳香族分と呼ばれる化合物を含んだ基油を使っているものがあります。そういった製品では、皮膚に接触しないようPL表示がなされていますので注意しましょう。
次に、グリスを使う上で注意しなければならない主なポイントをご紹介します。
異種のグリスを混和してしまうと、本来の性能が低下してしまうことがあります。補充する場合は、既存のグリスと同じ種類のものを使用する、もしくは、全て入れ替えることが望ましいとされています。
グリスに異物が混入しないよう、「容器のふたを不完全なままにしない」「ウエス・砂・ゴミの混入を防止する」などの点に注意しましょう。
グリスの給脂量は多すぎたり少なすぎたりすると作動不良を起こしたり、性能低下や劣化を早めたりする原因になります。
グリスを加熱してしまうと、酸化による劣化によって、その寿命が短くなってしまいます。一定以上の加熱を受けると、たとえその後、室温に戻ったとしても、初期の状態には復元しませんので、注意しましょう。
グリスにエアーが溜まってしまうと、給油ポンプの圧送不能や給油不足などの原因になります。集中給油をはじめ、グリスガンでの給油や手差し給油など、いずれの場合も注意するようにしましょう。
グリス管理のポイント
グリスの使用において、日常管理は欠かせません。グリス本来の潤滑効果を発揮させるためには、以下のような点に注意し、日常管理を行いましょう。
グリスの温度をしっかりと管理しないと、基油の酸化をはじめ、増ちょう剤が持つ網目構造が破壊されていまい、本来の機能を失ってしまいます。一般的にグリスは、70℃以上になると短命になるとされています。グリスが加熱してしまうと、たとえその後室温に戻ったとしても、元の状態には完全に復元しないので、高温多湿を開けた冷暗所に保管するのが良いでしょう。
配管の接続部分やシールからグリスが漏れている場合や、給脂する際にはみ出してしまった場合は、しっかりと拭き取るようにしましょう。
ポンプタンクに補給する際は、空気がタンクに入ってしまう恐れがあるため、上蓋を外して上から入れないよう注意してください。集中給油の場合はもちろんのこと、グリスガン給油や手ざしなど、いずれの補給の場合もよく注意してください。また、横倒しにして管理するのも気泡を作ってしまうので避けるべきでしょう。
グリスは水分が混入してしまうと、乳白色になる特徴を持っています。水分は錆びの原因でもあります。また、グリスの性質を変えてしまったり、時には潤滑不良を起こしたりしてしまいますので、水分の侵入には気をつけましょう。
グリスの日常管理では、汚れの発生源対策を行うことが重要。たとえば、蓋をしっかりと閉める。容器の天部を開けたまま放置しない。取扱者の管理を怠らない。ベアリングにグリスを詰める際は、洗浄し異物がないことを確認してから行う。砂やゴミなどの混入を防止する。グリスを使用する際は、容器やヘラなど、清潔なものを使用して行う。これらのポイントを意識して、グリスの管理を行いましょう。
異種のグリスを混ぜると、性能が低下するおそれがあります。基本は同じグリスを補充するようにしましょう。
グリスは、使用用途に応じて増ちょう剤やちょう度の種類が異なるため、適切なものを選定しましょう。グリスを使用する環境を考慮し、使用最高温度や滴点を正しく選ぶこともポイントです。
グリスの日常使用におけるポイント
グリスを日常使用するにあたって、以下のようなポイントに注意するとよいでしょう。給脂でグリスが漏れてしまった場合、ウエス等で拭き取りましょう。拭き取ったグリスの色をチェックすることで、異物や汚れ、気体や水分などの混入状態も確認できます。
グリスを集中給脂する場合、「規定の量だけきちんと給脂しているか」「給脂した部分では少量の漏れが起こっているか」を確認するようにしましょう。
また、給脂の管理については、給脂量を記入しておくことがポイントです。前回より給脂の量が多い場合は、漏れをチェックしましょう。また、給脂量が前回よりも少ない場合は、給脂の目的箇所に正しい量が給脂されているかの確認を行います。
また、漏れの発生は、しっかりと目視で観察するようにしましょう。
適正量を給脂することも重要です。例えば、ころがり軸受におけるグリスの適正給脂量は、軸受とハウジング空間の2分の1から3分の1とされています。充填のポイントは、運転しているときに行うこと。また、補給グリスが排出を始めるまで充填することもポイントとなります。