転がり軸受の組立と分解のポイント
転がり軸受の組立のポイント
ベアリングはあくまで精密機械。高い性能を持った機械のため、精密さを保つ必要があります。
そのためには、繊細な取り扱いが求められます。ベアリングを組み立てる際も、取り扱いに注意して作業を行う必要があります。
転がり軸受の組み立てのポイントを見ていきましょう。
転がり軸受の組立について
転がり軸受は、機械の回転軸を支える上で重要な部品です。一般的な機械と比較すると、非常に高精度ですので、サビ・汚れ・キズや異物の侵入を防ぐため、取り扱いも慎重に行う必要があります。
転がり軸受の組立には、事前の準備をはじめ、取り付け方法の種類など、さまざまなポイントがあります。

組立前の準備
転がり軸受を取り付ける前には、次のポイントを意識して、準備作業を行うようにしましょう。
- 取り付けるベアリングが設計通りの製品かどうか確認する。
- ベアリングの包装は、組立直前まで開封しない。
- ゴミや埃、水分のない環境でベアリングを取り扱う。
- 開放型のベアリングや、グリスが封入されているベアリングは、防錆油を洗浄しないで使用する。(高速回転に使用するベアリングなど、グリスを使用する場合は、防錆油を洗浄してから使用します)
- 組立に使用する部品は寸法をしっかりと確認する。
- 部品のサビやカエリなどがあれば取り除く。ゴミや埃が付着していれば、ウエスで拭き取る。
- 部品のベアリングが触れる箇所に油を薄く塗る。
上記のポイントでは、細かなポイントも解説していますが、とにかくベアリングは精密部品です。その取り扱いに注意するのが何より大切。ベアリング自体はもちろんのこと、作業周りを清潔に保つ点、ベアリングに衝撃を与えないよう配慮する点、素手で触ったまま放置したり、洗浄したまま放置したりしてサビを発生させないよう、十分な注意を払うことを意識して作業しましょう。
はめあいの寸法と仕上げ状況の確認
転がり軸受の取り付けには、はめあい部分の寸法の確認と、仕上げ状況の確認は欠かせません。これらの確認時は、ベアリングやその周囲は清潔を保った上で作業をしましょう。また、取り付け部分の下側にはビニールシートを敷くなど、しっかりと清浄を意識して確認を進めることがポイントです。
まずは、軸の外径やハウジングの内径のはめあい寸法が、設計通りの値かどうかチェックします。また、軸に段が付いている丸みを帯びた部分が、ベアリングの肩の高さより低くなっているかどうかもしっかりとチェックしましょう。もし、軸肩が内輪より高くなっている場合は、引き抜き治具が引っかけられないため、丸みのチェックを欠かさないと同時に、肩を低くする処理も忘れず行いましょう。
組立のポイント
転がり軸受の組立時には、さまざまなポイントがあります。はめあいの選定はもちろんのこと、取り付けの方法や取り付け後の確認など、チェックすべきポイントはたくさんありますが、まずは、はめあいの選定と、ベアリング取り付け後の確認について解説します。
内輪が回転し外輪が静止する場合には、内輪は「しまりばめ」、外輪は「すきまばめ」。一方、内輪が静止、外輪が回転する場合には、内輪は「すきまばめ」、外輪は「しまりばめ」にします。
内輪と外輪のどちらかを固定し、他方を動かした場合の移動量を示し、軸受の「内部すきま(すきま)」と呼びます。ラジアル方向の動き量を「ラジアルすきま」、アキシアル方向の動き量を「アキシアルすきま」と呼びます。運転すきまについては、正の数値になるように選定をするのが一般的です。
ベアリングの取り付け後は、確認作業が欠かせません。まずは、手で軸をゆっくりと1回転させます。その際に、一定の重みを感じれば、正常に取り付けられていると言えます。チェックのポイントは、半周ごとに重さと軽さを感じる箇所がないかどうかを確認することです。
また、手回しした際に、ペンなどで軸が見えるところに印を付けておくようにしましょう。常に同じ箇所で止まるといった場合は、軸のバランスが悪かったり、ベアリングがまっすぐ取り付けられていなかったりする可能性もあるため要注意です。
さらに、異音が発生していないかどうかの確認も重要です。手で軽く回しながら、一定の音が鳴るかどうかをチェックして、異常がないか判断しましょう。
ベアリングを組み立てた後で異常が確認された場合は、再度分解した上で、異常が発生している要因を特定し、対策を行うことが重要なポイントです。
転がり軸受の分解のポイント
ベアリングの取り外しには、分解作業を伴います。特に転がり軸受は、機械部品の中でも精度が高く、取り扱いには注意が必要です。転がり軸受の分解作業のポイントを見ていきましょう。
分解のポイント
転がり軸受の分解の際は、次のポイントを意識して行うようにしましょう。
- 規定のベアリングの種類や構造、取り付け方を確認し、分解手順や方法を決定する。
- 分解用の工具は、使用するベアリングの大きさに適したものを準備する。
- ベアリング外側の軸受カバーを取り外し、グリスの充てん量や色をチェックする。
- ころ軸受の場合、当て金(当盤)を当てた状態で、ハンマーで軽く叩きながら、シールドから抜く。
- 取り外しの際は、摩耗状態やキズ、サビ、圧こん等がないかをチェックする。
- ベアリングを清掃し、軸の外径やハウジングの内径が規定どおりかチェックする。はめあいがゆるくなっていれば、同時に修正する。
ゆるさのチェックポイントととしては、以下の通りです。
- 軸の外径が+0.005mm以下の場合→はめあいの基準を確認した上で、修正や交換を検討しましょう。
- ハウンジングの内径が+0.02~0.03mmの場合→修正が必要です。
- ハウンジングの内径が+0.03mm以上の場合→修正や交換をする必要がありますので、注意してください。
分解方法
転がり軸受の分解ポイントは、取り付けた際の状態が重要です。内輪のはめあいが硬い場合は、外輪はゆるくすることが一般的で、軸受箱から外輪を取り外した後にベアリングを抜くようにしましょう。
ここでは、さまざまな取り外しの方法をご紹介します。
プレスでベアリングを引き抜くためには、受金が引き抜く際にかかる負荷で変形せず、高精度の厚さを持っており、内輪・外輪にそれぞれしっかりとかかったものであるか確認しましょう。引抜き時のプレスの圧力は、ゲージをチェックしながら、一気にかけず、ゆっくりと上げていくことが重要です。
引抜き治具を使用する場合、内輪の側面に治具の爪の部分が完全にかかるようにする必要があります。ハンドルでねじ込む場合は、ボールやころに力が加わらないように注意しましょう。また、プーラーを用いる方法もあります。ボールや内輪、外輪を損傷しないよう、支えとなる部分がきちんと内輪にもかかるようにしてください。
取り外しスリーブを使って軸に取り付けられたテーパ穴軸受は、専用ナットの締込みによってベアリングを取り外すことができます。取り外しスリーブナットに数箇所ボルト穴を設け、ボルトのねじ込みを利用した取り外しも可能です。
また、ハンマーでスリーブを抜き出す方法もあります。軸に締め付けたクランプで内輪の側面をしっかり支え、ナットを数回ゆるめた後、金属片を使用して、ハンマーでスリーブを叩いて取り外します。
ラビリンス切欠きを使う場合は、ラビリンスの裏側に2点の切り欠きを設けておきます。切り欠きにクサビを打ち込めば、容易な取り外しが可能です。
大型軸受の取り外しの際は、油圧を活用したオイルインジェクションによる方法が効果的です。内輪の軸部分が先細り(テーパ)になっているのが、大型転がり軸受の特徴。この方法では、軸に油穴を設け、そこから圧油を入れることで、内輪を膨張させます。その結果、摩擦を減少させて取り外すことができます。
はめあいがゆるい場合は、ベアリングのハウジングに対し、内輪を打ち出すためのキリ穴を数個設け、銅棒を用いて打ち出します。上記の方法で内輪を打ち出せない場合は、内輪の側面が当たる部分の対称となる位置に対し、切り欠きを2箇所設け、銅棒を用いて打ち出します。
ベアリングを加熱させ、熱膨張により取り外すこともできます。ベアリングを破棄可能な場合は、トーチランプなどで直接加熱します。再利用する場合には、水蒸気を吹き付けることで加熱し、取り外します。
