アーク溶接機の使用率とは
アーク溶接機の使用率とは
溶接機には使用率を定め、それに伴い一定時間で電源がカットされる仕組みが組み込まれています。この仕組みで故障を防いでいますが、それを表す表示が定格使用率です。この表示は10分間のうち何%の使用率で安全に使えるかを示しています。
使用率とは、休止時間込みの全時間中の通電時間を表したものです。数値は%で表示します。1回の通電と休止時間の周期を指し、アーク溶接機の場合、10分間周期とするのが一般的です。 つまり、使用率が40%だとすると、10分間中4分間が定格電流として利用可能となり、6分間は休止となります。
溶接機を使用する全時間と通電時間を利用し次のような使用率が計算できます。
使用率=全時間÷通電時間×100(%)
たとえば溶接機の銘板に、定格出力350A、定格使用率60%と記載されていたとしましょう。この場合10分間に6分間だけ350Aで使用できることを意味します。さらに4分間は休止しなければならないということです。
しかし、実際に使用する場合は使用電流が定格電流よりも小さいことがあります。このときは、定格使用率よりも高い使用率で溶接機を使用可能です。これを許容使用率とよび、次のような式で表します。
許容使用率(%)=(定格出力電流/実際の溶接電流)2×定格使用率(%)
ただし溶接機は複数の機器で構成され、それぞれに定格使用率が定められる装置です。実際にはもっとも使用率の低めのもので制限されることになります。電源、トーチ、送給装置などで定格使用率が異なれば、一部が高い使用率でも最低のものに制限されてしまいます。
たとえば溶接機にトーチを使用した場合、トーチの使用率が100%であっても、溶接機の電源が30%であれば、一番低い30%に制限されるのです。
用途に合わせて最適な使用率の溶接機を選ぶ
また、溶接機によっても使用率は異なります。DIY向けのものでは使用率が20%しかない製品も多く、この場合は10分間で2分しか使用できないことになります。もし溶接途中で使用率がオーバーすると、防止機能が働き電源がカットされてしまうため、その間は溶接することはできません。
溶接途中で何度も使用率オーバー防止機能が働けば、作業の効率が悪くなってしまいます。業務用として使用する場合これでは使用時間が短くなってしまうため、使用率の高いものや使用率100%で時間制限のない溶接機を選ぶようにしましょう。
ただし、電源の調節機能がある溶接機の場合、電源を最大限に使用しなければ定格使用率の範囲よりもっと長く使えます。もし使用率が高い溶接機を選ぶことができないなら、電源調節機能のものがおすすめです。
また、整流器がある直流アーク溶接機の場合、整流器の熱容量は小さくなっているため、安全に使用するためには、定格出力電流を超えてはならないとされています。
業務であっても、家具や小物を作る程度なら使用率20%でも問題ありません。しかし、溶接機を使う頻度が高い場合や溶接量が多くなる業務に使用するケースでは、迷わず使用率が高いものを選ぶべきです。 さらに注意したいのが定格電流で、電流を最大限で使用しなければならないなら、できるだけ使用率が高いものを選ぶ必要があるといえます。逆に電流を落とすことができるなら、定格使用率より長く使うことができます。
アーク溶接機の選定ポイント
(1)電源電圧(V)
単相100V または 単相200V
(2)定格出力電流(A)
使用する溶接棒に必要な溶接電流値をカバーしているか
(3)定格使用率(%)
10分間周期のうちアークを出せる時間の割合
【例】使用率40%の場合、アークを出す合計時間は10分のうち4分間です。
(4)交流または直流
溶接電流が交流か直流かによって下記の違いがあります。
交流 | 直流 | |
---|---|---|
アークの安定性 | やや不安定 | 良い |
保守点検 | 容易 | 難しい |
重さ | 重い | 軽量 |
極性 | なし | 選択可能 |
溶け込み | 浅い | 棒マイナス:深い |
棒プラス:浅い | ||
2次側ケーブル | 長いほど電流値が下がる | 延長時でも電流値は変わらない |
磁気吹き ※ | 出にくい | 出やすい |
※電流が一方向に流れることで磁力線が生じ、アークが横になびく現象
アーク溶接機の使用率についてはよく比較して選ばないと、溶接機本体の故障の原因にもなります。使用率が低いものを選択し無理して使用していれば、修理不能な故障にも結びついてしまうかもしれません。溶接機をどのような現場で使用するか考え、適切なものを選ぶようにしてください。