治具・取付具の正しい使い方

ものづくりのあらゆる場面ででてくる道具の一つである「治具(JIG)」についての基礎知識と、実際に使われている治具やそれに類する道具の基礎知識から、実際の加工場面における治具の使い方まで、図や写真を通してご紹介していきます。
第1章 治具の基礎知識

1-3 治具の種類

治具というと大量生産の大きな工場にある生産設備のように思われますが、工作物を固定したり、刃物を固定して使いやすくする道具と考えれば、身近なものも「治具」として使うことができる。このことは前の章の説明で理解していただいたと思います。

こうした視点から「治具」として使える(使っている)道具や工具を紹介します。

 

(1)バイス(万力)

手にもって小さな工作物を加工しやすいように挟むハンドバイスから、フライス盤などの工作機械 のテーブルの上に乗せて精密な加工を手助けする「マシンバイス」まで多くの種類があります。特徴は固定側と移動側の二つの顎(ジョー)で四角い工作物をしっかり固定できることです。2つの顎(ジョー)の平行度が重要です。マシンバイスは顎と下面との直角度も重要となります。

以下に様々なバイスの写真を掲載します。

写真1はどこの鉄工所にもある万力ですね。この他に、ハンドバイス(写真2)は、ボール盤用のベタバイス(写真3)、同じくボール盤作業でよく使うヤンキーバイス(写真4)、フライスなど精密な加工に用いるミーリングバイス(写真5)、めったに使わないがあると便利な傾斜バイス(写真6)などがあります。

写真1
写真1

写真2
写真2


写真3
写真3

写真4
写真4


写真5
写真5

写真6
写真6

 

(2)チャック

バイスは立方体の工作物が相手ですが、丸棒や円盤を掴む道具はチャックです。電気ドリルやボール盤でおなじみのドリルを固定するドリルチャック(写真7)、旋盤作業でおなじみのスクロールチャック(写真8)、フライス盤の主軸に刃物を取り付けるコレットチャック(写真9)が代表的なチャックです。チャックは円筒の中心軸を精度よく固定できることが重要です。

この他にも最近ボール盤用に広く普及したオートチャック(写真10)、電気ドリル用のオートチャックなど、便利なチャックが次々に出ています。

写真7
写真7

写真8
写真8


写真9
写真9

写真10
写真10

 

(3)クランプ

バイスやチャックでは固定できない大きな工作物や、板状のものは上から固定するクランプ類を使います。クランプは単に工作物を上から固定するだけですが、クランプと位置決めのガイドを組み合わせれば立派な治具となります。(2)で紹介した穴加工用の治具はまさにこれです。

ボール盤作業や手作業で便利なフリークランプ(写真11)、フライス盤やボール盤のテーブルに工作物を固定するクランピングツール(写真12)、同じくステップクランプ(写真13)などです。

写真11
写真11

写真12
写真12


写真13
写真13

 

 

この他にも治具として役立つものは無数にあります。パラレル、並行ピン、位置決めピン、角度を正確に決めるサインバー、締め付け具を治具の一部として用いるクランプパーツなど、創意工夫の玉手箱となっています。

 

執筆: 株式会社日本中性子光学 河合 利秀

『治具・取付具の正しい使い方』の目次

第1章 治具の基礎知識

第2章 タップ加工における治工具

第3章 穴加工における治工具

第4章 旋盤加工における治工具

第5章 フライス盤加工における治工具

第6章 マシン(ミーリング)バイス

第7章 クランプシステムとは

第8章 フライス加工を助ける補助的な治工具

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