測定工具の基礎講座
測定工具にはさまざまな種類があり、それぞれに特徴があります。
本連載では、各測定工具の使い方や寸法の読み取り方に関して、実際の写真や図を通してご紹介していきます。
2-1 マイクロメータの使い方
マイクロメータは手軽に0.01mm(百分の1ミリメートル)の精度で長さを測ることができる便利な道具です。しかし、0~25mm、25~50mmというように、測定できる長さが25mm刻みになっているので要注意。実際に測りたい物の長さをスケールやノギスで確認しておきます。

写真1:色々な長さを測るマイクロメータ
写真1を見てください。上段は外測マイクロメータで、左から0~25mm、25~50mm、50~75mm、75~100mmとなります。このように25mmおきに大きくなっていきます。 下段は内測マイクロメータ、5~30mm、25~50mm、50~75mm、75~100mmです。ノギスは一本で外形、内径、段差、穴の深さなど様々な寸法を測ることができたのに対し、 マイクロメータはたった一つしか測れず、しかも25mm毎に揃えなければならないのですが、何といっても測定精度の高さと測定の信頼性が高い。 デジタルノギスで0.01mmまで読めるようになったといってもやはりマイクロメータの信頼性の方が「ものつくりの現場」では役に立っているのです。

写真2:マイクロメータ(0~25mm、外測用)の各部の名称
写真2は0~25mm用のマイクロメータ、各部の名前です。
フレームはマイクロメータの測定範囲によって大きさが異なりますが、アンビル、クランプ、マイクロメータヘッドは共通です。さらに、マイクロメータヘッドは、スリーブ(主目盛)、シンブル(目盛環)、スピンドル、ラチェットとなっています。
マイクロメータヘッドは一回転0.5mmの精密なネジになっていて、目盛環に50等分の目盛があるため、0.5mmの50分の1、つまり0.01mmが読みとれるようになっています。 マイクロメータはこのマイクロメータヘッドが共通の測定工具で、測定したい形状や測定方法に合わせてマイクロメータヘッドを上手に使って独自の測定工具を作ったり、装置の中に組み込んで微動装置兼測定装置として使っている事例を多く見ます。 ネジの回転軸に目盛環を付けて寸法を細かく見るのは旋盤の刃物台やフライス盤のテーブルのハンドルも同じ原理です。
マイクロメータは一回転が0.5mmのネジになっているため、目盛環の目盛は50等分になっていますので、スリーブの主目盛とシンブルの目盛の位置を注意深く見ないと0.5mm間違ってしまう可能性があります。
それではマイクロメータの目盛から寸法を読み取ってみましょう。

例1 これはちょうど10.00mmです。

例2 これは12.22mmです。

例3 これは12.72mmです。
例2と例3の違いに注目してください。0.5mmの違いです。目盛環のエッジが主目盛のどこにあるかが見にくいですね。ベテランでも時々読み違えることがあるので要注意です。
デジタル式マイクロメータなら読み違えることがないですが、表示が0.001mmなので最後の桁がわずらわしいこともあります。目標とする測定精度に合わせて選びましょう。
それではマイクロメータを使って手頃なものを測ってみることにしましょう。

写真3:マイクロメータで丸棒を測る
写真3のように、アンビルとスピンドルの先端に測定したいものを入れて、一度シンブル(目盛環)を回し測定したいものを軽く挟みます。次に、少しシンブルを逆転させて緩め、ラチェットを回して測定物をはさみます。ラチェットは測定する時の締め付け力を一定にするためのものなので、必ずラチェットを使ってください。
この時のスリーブの主目盛とシンブルの目盛環を見て寸法を読み取ります。シンブル一回転が0.5mmなので、読み違えると0.5mm測定値がずれてしまいます。
『測定工具の基礎講座』の目次
第1章 ノギス
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1-1ノギスの使い方と寸法の読み取り方ノギスは手のひらサイズの「物の長さ」や「太さ」を手軽に精度よく測ることができる便利な工具です。
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1-2ノギスの4つの測定方法ノギスにはいろいろな種類がありますが最も一般的なものはM型ノギスです。M型ノギスはものを挟むジョーの外にも便利な測定部分があります。
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1-3デジタルノギスとダイヤルノギス第1章で述べたように、0.01mmまで読み取れるデジタルノギスも、メーカー保証は±0.2mmです。
第2章 マイクロメータ
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2-1マイクロメータの使い方マイクロメータは手軽に0.01mm(百分の1ミリメートル)の精度で長さを測ることができる便利な道具です。
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2-2マイクロメータのゼロ合わせ外測マイクロメータは、目盛のあるマイクロメータヘッドと測定物を一直線上に挟んでいるため、アッベの原理の見本のようになっています。
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2-3デジタル式マイクロメータの上手な使い方デジタル式マイクロメータもマイクロメータヘッドを使った一般のマイクロメータと同様25mm毎になっています。
第3章 ダイヤルゲージ
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3-1ダイヤルゲージの特徴と種類寸法を直接測れるノギスやマイクロメータに対し、曲がりや偏心などを細かく読み取ることができる測定器があると便利です。
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3-2ダイヤルゲージを上手に使うためにズバリ寸法が測れるノギスやマイクロメータがあれば工作はこれで十分と思うかもしれません。しかし、町工場やちょっとした工作では、寸法が正しく測れるだけでは困ることがたくさんあります。
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3-3その他の測定工具前節までに、ノギス、マイクロメータ、ダイヤルゲージ、の特徴と使い方を解説してきました。しかし、世の中にはこのほかにも多くの測定工具があります。この章ではそうした測定工具を紹介します。
第4章 定盤
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4-1定盤とは寸法を直接測れるノギスやマイクロメータに対し、曲がりや偏心などを細かく読み取ることができる測定器があると便利です。
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4-2定盤の材質による違いここからは定盤についてもう少し踏み込んだ解説です。定盤は、設備投資としてはそれほど大きな存在ではありませんが、ものつくりの基礎技術・技能の最も大切な「基準面」であることから、その手入れには神経を使います。
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4-3定盤のメンテナンス鋳鉄製定盤は基準平面を錆びさせないように時々油を塗ります。写真1のようにスプレー式の潤滑油でもOKです。特に梅雨は要注意、台風が来た後もよく錆びるので台風が来る前に多めの油を塗っておきます。
第5章 ブロックゲージ
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5-1ブロックゲージとはブロックゲージとは、写真1にあるように、縦横が同じで厚さの異なる小さなブロックを順に100個程度セットにしたものです。
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5-2リンギング(密着)を覚えようブロックゲージの小片どうしを密着させて一本の棒のように扱う手法を「リンギング」と言います。
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5-3ブロックゲージのメンテナンスセラミックス製のブロックゲージは錆びる心配がないため取り扱いがとても簡単になりましたが、油断は禁物。
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5-4ブロックゲージアクセサリを併用した高さ基準として使うブロックゲージを購入するとき、予算が許せばぜひともブロックゲージアクセサリを購入されることをお勧めします。
第6章 水準器
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6-1水準器の特徴と使い方写真1は色々な水準器です。左から、機械据え付け用の精密水準器、建築現場用水準器、カメラ用水準器です。
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6-2精密水準器の校正精密水準器はちょっとした振動や温度変化によって気泡管を支える部分がわずかにずれることから、どうしても誤差が出ます。従って、使う直前に水平を正しく表示するように調整する必要があります。これを「校正」と言います。
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6-3さまざまな水準器写真1のように、一方にマイクロメータが付いているものを傾斜水準器といいます。傾斜水準器は便利ですが支持端のヒンジやマイクロメータの取り付け部分、マイクロメータで押している部分などの可動部(写真2)があるため普通の水準器に比べて誤差が生じやすいので、丁寧に取り扱う必要があります。
第7章 基準器
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7-1直角の基準<イケール、マス、Vブロック、スコヤ>定盤は水平面の基準であることを第4章で紹介しましたので、ここではその他の基準器を紹介します。
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7-2直線の基準<ストレートエッジ>直線の基準は、その測定方法によって基準の形状も違ってきます。
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7-3直角の基準<ハイトゲージ>定盤の上で行う作業で最も利用頻度が高いのは高さ基準となるハイトゲージです。ハイトゲージの高さを表示する機構はノギスと同じです。写真1のように、高さ寸法の表示方法で、バーニア式、ダイヤル式、デジタル式がありますが、基本的な形状は同じです。