快適空間へ導くLED照明実践講座
2-11 キッチンライト(流し元灯)の種類と照明効果
LEDの特長の一つに器具の小型化があります。小型である故、今まで器具の設置が難しかった小スペースや狭スペースに取り付けを可能にしています。さらに従来光源と比べ明るさも得られることから、例えば店舗では什器に器具を内蔵したり、住宅では棚やラック、カーテンボックスなどに設置したりして、いわゆる小スペースを部分的に演出する照明が注目されています。
薄くて小型のキッチンライト
キッチンの照明はキッチン全体を照らすものと、調理をしたり食器を洗ったりするための手元を照らすキッチンライト(流し元灯、手元灯ともいう)があります。キッチンライトは従来、吊戸棚の下に蛍光灯用が付けられていましたが、この種の器具は目の前に設置されるとやや大きく見え、あまりスマートではなかったりすることが多々ありました。しかしLEDキッチンライトは器具が薄いため、棚下に直付けしても器具の存在はあまり主張されず、キッチン全体をすっきり見せることができます。(写真1)
キッチンライトは独立したキッチンルームで使う場合、高演色で4000~5000Kの光色を持つLEDがよく、このような白い光は調理する人の味覚を高める効果が期待されます。なおキッチンライトの点滅は作業に水を扱うのでスイッチに直接手が触れないですむよう、人の気配や手の動きで点滅できる人感センサー付きが勧められます。(写真2)
写真1 器具の高さが30mm
写真2 人感センサー付き(手をかざすだけでON、OFFができる。)
棚下照明
一口に「棚」といっても、壁面の大部分を占める大型のシステム収納から既製品の棚、下駄箱まで、棚の種類は豊富です。なかでもコレクションや写真などを飾る棚は中を明るく照らしたいはずです。そこで求められるのが棚下灯です。
棚の中をすっきり照明したい場合は浅型のダウンライトが有効です。(写真3)
写真3 埋込の棚下灯
例えば(写真4)の器具は18mm厚の薄い棚板に埋め込みができます。さらに電源装置を内蔵しているため直接AC100Vへ接続できます。この種の器具には電源装置別置型もあるので、その場合は装置を隠して置けるスペースが必要になります。


写真4 LEDスリムライト(埋め込みタイプ)
棚下灯には小型のライン型(バー型とも言う)LEDもあります。一般的には棚下前面にライン形LEDを配灯しますが、通常視点でランプが見えるとまぶしいので、棚に溝を切って、そこに直付けしたり遮光板を設けたりして、できるだけ器具を隠して使用します。(写真5)
写真5 棚の前面に付くライン型LED
導光板と言われる面発光
導光板とは、一般に特殊加工したアクリル板で、狭い側面にライン型LEDを点灯させることで面発光する板材のことです。(写真6)
例えば導光板で構成された什器は透過性のあるガラス製品の照明に最適です。(写真7)
写真6 下側面にライン型LEDがあるアクリル導光板
写真7 導光板の照明でガラス商品が光る
小スペースの背面照明
4Kの放送開始で50インチ以上の大型テレビが普及しています。画面の解像度が高くなっているためTV画面から比較的近い位置で視聴することができます。そのため夜にTVを見るとき、部屋の照明を消すとテレビが明るく見え、またTV画面と周辺の明るさ対比が強くなるため、長時間の視聴は眼精疲労の原因になります。
就寝1,2時間前までであれば、部屋の照明を明るくしてTVを見ることが奨められますが、部屋が明るくなることでTVの明るさセンサーが働いてより画面が明るくなることもあります。そこで考えられるのがTVの背面にあたる台上に少しのスペースがあればライン型LEDを隠して背面の壁をほんのりと照明します。(写真8)
写真8 TVの背景照明
写真9は便器の背面に少し物を置くスペースあるため、そこに装飾を施し、中にアダプタ付きプラグを持ったライン型LEDを隠して照明効果を高めている例です。給電は近くのコンセントからです。
写真10は鏡の背面に光源を内蔵して、壁を間接的に明るくして鏡の照明とする方法です。
写真9 便器の背面照明
写真10 鏡の背面照明
以上のように小スペースを利用して光源を上手く隠しながら目的とする照明効果を得る方法は、まさにLEDが従来光源より得意とする照明と言えます。ただLED器具は全般に熱に弱いので、密閉に近い状態で使用すると器具によってはランプ寿命などに悪影響を与えるため使用時はメーカの注意書きに則って施工、または活用することが求められます。
『快適空間へ導くLED照明実践講座』の目次
第1章 ベースライトの選び方
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1-1シーリングライト(大型)の選び方と取り付け大型のシーリングライト器具は一灯で基準の明るさが得られ、給電口があれば電気工事の資格なしで器具の取り付け可能なことから、日本では住宅照明用として普及しています。
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1-2シーリングライト(小型)の選び方シーリングライトとは天井直付け器具のことを言います。
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1-3ダウンライト器具の選び方と配灯LEDダウンライトはLED電球用とLEDモジュール一体型があります。
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1-4壁付け器具の形状と取り付け壁付け器具は以前「照明のことが分かる講座」で紹介しましたが、今回は壁直付け(以下、ブラケットライト)の用途と取り付けにについて紹介します。
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1-5直管LEDベースライトの種類と使い方全般照明とは室内の主要部を一様な明るさにする照明で、それは集光する器具より光の拡散するベースライトによって実現されます。
第2章 スポットライトの選び方
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2-1卓上ライトの形状と照明効果卓上ライトを安定して取り付けるためにはおもに4つの方法があります。
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2-2フロアスタンドライト(意匠照明用スタンド器具)の選び方シーリングライトのLED化が一段落すると、LEDのスタンド器具を購入する人が日本でも増えています。
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2-3シャンデリアの形状と取り付け吊り下げ型器具には一灯用と多灯用があります。一般的には前者をペンダントライト、後者をシャンデリアと言われています。
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2-4スポットライトの配光と照射位置LEDスポットライトは従来光源である白熱電球用スポットライトに比べ様々な利点があり、性能が向上しています。
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2-5ライティングレールの種類2本の電線を配管の中に入れて通電させる装置をライティングレール (ライティングバー、ライティングダクト、配線ダクトなどと呼ばれる。以下、配線ダクト)と言います。
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2-6ライン型LEDモジュールの種類と用途LEDモジュール(module)とはLEDパッケージを基板に取り付け、点灯可能にした最小構成の商品です。
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2-7コーブ照明の効果とランプ位置コーブ照明は天井面を照らす建築化照明です。天井の隅や壁の高い位置にくぼみ(アゴや庇などとも言う)、を設け、その内部に連続した光源を隠して天井面を照明します。
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2-8コーニス照明の効果とランプ位置何故、壁面全体を明るくするのでしょうか?壁面は通常の生活視点で最も目に入りやすいため、その面をどう照らすかによって空間全体の雰囲気や印象に大きな影響を与えるからです。
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2-9ガーデンライト(庭園灯)の選び方と配置庭園とは草花や樹木、石、池などを計画的に配し、整えられた空間を言います。
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2-10投光器と演出効果LED投光器はLEDの光を柱状に集めて、特定の方向や場を効率よく照らす屋外用照明器具のことです。
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2-11キッチンライト(流し元灯)の種類と照明効果LEDの特長の一つに器具の小型化があります。小型である故、今まで器具の設置が難しかった小スペースや狭スペースに取り付けを可能にしています。