快適空間へ導くLED照明実践講座
1-5 直管形 ベースライト用器具の種類と選び方
直管LEDベースライトの種類と使い方
全般照明とは室内の主要部を一様な明るさにする照明で、それは集光する器具より光の拡散するベースライトによって実現されます。
全般照明は多くの人たちが同時に生産活動を行う事務室や工場、また人が安全に行き来できる駅のコンコース、お客でにぎわうスーパーマーケットなどに求められますが、このような空間では直管形ランプを用いたベースライトが欠かせません。(写真1)
写真1 ベースライトの多いオフィスビル
直管形ランプは、今日では蛍光灯からLEDランプ(メーカによって直管形LEDとか直管LED蛍光灯、LED直管ランプなどと呼ばれる)に代替されています。政府方針の発表を受け、2020年までに蛍光ランプ、及び蛍光灯器具の製造中止の流れが大手メーカを中心に加速しているからです。
LEDベースライトは角(スクエア)形や長方形が多く、全般照明用のダウンライトに比べ器具の大きさ(開口部)が目立ちますが、パワーがあるのでより明るさを必要とする空間に使われます。
LEDベースライトにはランプ交換型とランプ一体型に大別されます。前者は従来の蛍光灯ベースライトに似たデザインが踏襲されており、その種類と用途、特長を以下に紹介します。
1.ランプ交換型
おもにトラフ形や富士形、反射笠付きの器具があり、直管形蛍光ランプの20Wと40Wの代替タイプが主流です。器具の長さは器種によって異なりますが、約600mmと約1200mmが多いです。ランプが直に見えるため、まぶしさを感じることで安っぽさがありますがランプのエネルギー消費効率と器具効率(器具から放射される初光束÷ランプの全光束)に優れているため省エネ照明になります。
そのため設備投資に費用をあまりかけたくない、例えば店舗ではバックヤードや薄利多売を目的にしたディスカウントショップなどに使われています。しかし一灯用トラフ形器具に関しては建築の躯体に隠すことで、間接照明になり高級な雰囲気を求める空間にも活用されています。(写真2)
写真2 2灯用トラフ形
この種の器具はおもに4種類あります。
(1)下面開放形
ランプが直に見えるためまぶしさを感じやすく、トラフ形に比べると器具効率は若干劣ります。しかし光がやや絞られているので床面や作業面に対する照明効率が高ことから、結果的に省エネ照明になります。通常の生活視点で天井面があまり目に入らない比較的狭い一般事務室ではグレアを気にする必要がないのでよく使われています。(写真3)
写真3 2灯用下面開放形埋込器具
(2)白色ルーバ付き
器具の開口部がやや明るく光って見えますが、通常視点ではランプが直に見えないことから少し広めの空間を持つ一般事務室に適しています。店舗ではキッズ売り場のような明るく賑わい性の雰囲気を求めたいところに適しています。(写真4)
写真4 2灯用白色ルーバ付器具
(3)アルミ鏡面ルーバ付き
下面開放形に比べ固有エネルギー消費効率20~40%ほど低下しますが、器具がほとんど光って見えないのでまぶしさがなく、またPC画面への光の映り込みや反射が少ないためVDT(Visual Display Terminals)作業空間に適しています。また高級店ではスポットライトと併用することで、商品が空間から魅力的に浮かび上がる効果が期待できます。一方で天井が暗く見える心配もあります。(写真5)
写真5 アルミ鏡面ルーバ付器具
(4)乳白カバー付き
柔らかく拡散する光が特徴で、明るさや光色の設定によっては落ち着いた雰囲気が得られることから、例えば役員室や待合室などの照明に相応しいです。
なお、既存の蛍光灯埋め込み器具をLED器具ごと交換したい場合、天井を張替えることなく設置できる器具もあります。
2.LED一体型
器具一体型はランプ交換ができないことが前提になるため、ランプの寿命が器具の寿命になります。一般に交換型に比べ固有エネルギー消費効率(器具から放射される初光束÷消費電力)が高くなります。発光部の形状が蛍光ランプと違ってかまぼこ状や平たい感じ(写真6)など様々です。
写真6 LED一体型(スクエア)
例えば発光部がかまぼこ状のトラフ形は固有エネルギー消費効率がメーカや器種によって異なりますが約150~200lm/W(2019年現在)あり、ランプ交換型に比べ高くなっています。さらに連結しても器具と器具のつなぎ目が目立たないタイプもあり、すっきりした配灯と照明効果が期待できます。(図1)
図1 トラフ形器具 左:LED交換型 右:LED一体型
『快適空間へ導くLED照明実践講座』の目次
第1章 ベースライトの選び方
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1-1シーリングライト(大型)の選び方と取り付け大型のシーリングライト器具は一灯で基準の明るさが得られ、給電口があれば電気工事の資格なしで器具の取り付け可能なことから、日本では住宅照明用として普及しています。
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1-2シーリングライト(小型)の選び方シーリングライトとは天井直付け器具のことを言います。
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1-3ダウンライト器具の選び方と配灯LEDダウンライトはLED電球用とLEDモジュール一体型があります。
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1-4壁付け器具の形状と取り付け壁付け器具は以前「照明のことが分かる講座」で紹介しましたが、今回は壁直付け(以下、ブラケットライト)の用途と取り付けにについて紹介します。
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1-5直管LEDベースライトの種類と使い方全般照明とは室内の主要部を一様な明るさにする照明で、それは集光する器具より光の拡散するベースライトによって実現されます。
第2章 スポットライトの選び方
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2-1卓上ライトの形状と照明効果卓上ライトを安定して取り付けるためにはおもに4つの方法があります。
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2-2フロアスタンドライト(意匠照明用スタンド器具)の選び方シーリングライトのLED化が一段落すると、LEDのスタンド器具を購入する人が日本でも増えています。
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2-3シャンデリアの形状と取り付け吊り下げ型器具には一灯用と多灯用があります。一般的には前者をペンダントライト、後者をシャンデリアと言われています。
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2-4スポットライトの配光と照射位置LEDスポットライトは従来光源である白熱電球用スポットライトに比べ様々な利点があり、性能が向上しています。
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2-5ライティングレールの種類2本の電線を配管の中に入れて通電させる装置をライティングレール (ライティングバー、ライティングダクト、配線ダクトなどと呼ばれる。以下、配線ダクト)と言います。
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2-6ライン型LEDモジュールの種類と用途LEDモジュール(module)とはLEDパッケージを基板に取り付け、点灯可能にした最小構成の商品です。
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2-7コーブ照明の効果とランプ位置コーブ照明は天井面を照らす建築化照明です。天井の隅や壁の高い位置にくぼみ(アゴや庇などとも言う)、を設け、その内部に連続した光源を隠して天井面を照明します。
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2-8コーニス照明の効果とランプ位置何故、壁面全体を明るくするのでしょうか?壁面は通常の生活視点で最も目に入りやすいため、その面をどう照らすかによって空間全体の雰囲気や印象に大きな影響を与えるからです。
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2-9ガーデンライト(庭園灯)の選び方と配置庭園とは草花や樹木、石、池などを計画的に配し、整えられた空間を言います。
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2-10投光器と演出効果LED投光器はLEDの光を柱状に集めて、特定の方向や場を効率よく照らす屋外用照明器具のことです。
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2-11キッチンライト(流し元灯)の種類と照明効果LEDの特長の一つに器具の小型化があります。小型である故、今まで器具の設置が難しかった小スペースや狭スペースに取り付けを可能にしています。