快適空間へ導くLED照明実践講座
1-3 LEDダウンライト器具とその取り付け
進化しているLEDダウンライト
LEDダウンライトはLED電球用とLEDモジュール一体型があります。さらにLEDモジュール一体型器具には専用電源ユニット内蔵型と別置型があります。LEDは直流電流で点灯するため、器具の点灯には商用電源である交流を直流に変換する電源ユニットが必要になります。
内蔵型は取り扱いが簡単です。しかし電源ユニットそのものが熱を発するため、器具本体が熱くなり、LEDチップを保護している樹脂の劣化などで明るさや寿命の低下を招く恐れがあります。そこで器具はヒートシンクなどを使用して放熱させる必要があります。器具によっては構造やデザインに制約を受けますが、最近は放熱性能の進化によって、その制約が少なくなっています。(写真1)
写真1 様々なヒートシンクの例
住宅やオフィスでLEDダウンライト器具を複数灯使用する場合は、内蔵型ではなく電源ユニット別置型を選ぶことがあります。交流電源を別置の電源ユニットでまとめて直流に変換してから器具に送ります。
LEDダウンライトの取り付け
一般照明用のLEDダウンライト器具はますます小型化しております。ダウンライト器具は開口部が円形(角形もある)の場合、天井に開ける穴の大きさは埋込径で表示されます。トリム(枠)を入れた器具径とは違います。器具は大半が後付け(先付け用もある)のため、天井が貼られてから錐またはダウンライトカッタ―を使って天井に穴を開けてから取り付けます。(写真2,3)
写真2 自在錐
写真3 ダウンライトカッター
電源ユニット内蔵型器具は器具本体に電線を接続させる端子台が付属されており、そこには送り配線用の穴もあるので、複数灯を同時に点灯する場合に使います。また器具本体は天井ボードに挟む金具によって固定され、最後にトリムをつけて仕上げます。(写真4)
写真4 LEDダウンライト(ヒートシンク、天井に挟むばね状金具、トリム)
なお、器具の取り付けは建物側からの配線が直接ダウンライト器具の端子台へ接続されるため電気工事士の資格が必要です。
既設ダウンライトをLED用に交換したい場合
従来光源用の既設ダウンライトをLEDダウンライト器具に交換したい場合あります。一般的に既設ダウンライト器具の埋込穴は代替のLED器具に比べ大きいので、そのままでは取り付けができません。そこで取り付けを補助するプレート(リニューアルプレートなどと称す)が必要になります。これを使用すれば、既設のダウンライトの埋込穴を利用して新規にLEDダウンライト器具の取り付けが可能です。(図1)
なお、既設の穴の大きさに対して対応可能なプレートを選ぶ場合、メーカによって若干の寸法違いがあります。またパネルの色が同じでも(白色が多いが黒色もある)メーカによって微妙に違うため、できるだけプレート自体が天井の色や材質に溶け込むものを選びます。
新たな天井にLEDダウンライト器具を取り付ける場合、小さいもので開口径が30mmφのものが市販されています。従来光源用のダウンライト器具は100φ~150φが多く、その大きさの穴をあけられる錐は多いですが、30mmφになると限られます。
図1 φ175の穴が開いている天井にφ150のLEDダウンライト器具を新たに設置する例
光の調整は安全を考慮
ダウンライト器具の中には器具の設置後に照射角度の調節ができるユニバーサルダウンライや、レンズやフィルター、ルーバーのオプションが装着できるタイプがあります。これらは家具や調度などの設置位置の変更に合わせたり、照明効果を少し変えたりするために使用されます。
その際、地上から2m以上の作業は労働安全衛生法では高所作業になります。高所作業はヘルメットや安全帯の着用などが義務付けられています。2mというと一般住宅の天井より低い高さです。しかし一般住宅ではランプの交換作業を含め、ほとんどその義務は守られていないのが現状と言えます。
例えば脚立を使用しての作業は安定した場所に設置し、人の出入り近くではドアにロックをかけるなど安全対策を怠ってはならないようにします。日曜大工でも脚立を使ってこのくらいの高さで作業をする方も多いでしょう。しかし、わずか2mとはいえ平地で作業をするより事故が発生する可能性はぐっと高くなるので、注意を要します。
『快適空間へ導くLED照明実践講座』の目次
第1章 ベースライトの選び方
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1-1シーリングライト(大型)の選び方と取り付け大型のシーリングライト器具は一灯で基準の明るさが得られ、給電口があれば電気工事の資格なしで器具の取り付け可能なことから、日本では住宅照明用として普及しています。
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1-2シーリングライト(小型)の選び方シーリングライトとは天井直付け器具のことを言います。
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1-3ダウンライト器具の選び方と配灯LEDダウンライトはLED電球用とLEDモジュール一体型があります。
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1-4壁付け器具の形状と取り付け壁付け器具は以前「照明のことが分かる講座」で紹介しましたが、今回は壁直付け(以下、ブラケットライト)の用途と取り付けにについて紹介します。
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1-5直管LEDベースライトの種類と使い方全般照明とは室内の主要部を一様な明るさにする照明で、それは集光する器具より光の拡散するベースライトによって実現されます。
第2章 スポットライトの選び方
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2-1卓上ライトの形状と照明効果卓上ライトを安定して取り付けるためにはおもに4つの方法があります。
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2-2フロアスタンドライト(意匠照明用スタンド器具)の選び方シーリングライトのLED化が一段落すると、LEDのスタンド器具を購入する人が日本でも増えています。
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2-3シャンデリアの形状と取り付け吊り下げ型器具には一灯用と多灯用があります。一般的には前者をペンダントライト、後者をシャンデリアと言われています。
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2-4スポットライトの配光と照射位置LEDスポットライトは従来光源である白熱電球用スポットライトに比べ様々な利点があり、性能が向上しています。
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2-5ライティングレールの種類2本の電線を配管の中に入れて通電させる装置をライティングレール (ライティングバー、ライティングダクト、配線ダクトなどと呼ばれる。以下、配線ダクト)と言います。
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2-6ライン型LEDモジュールの種類と用途LEDモジュール(module)とはLEDパッケージを基板に取り付け、点灯可能にした最小構成の商品です。
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2-7コーブ照明の効果とランプ位置コーブ照明は天井面を照らす建築化照明です。天井の隅や壁の高い位置にくぼみ(アゴや庇などとも言う)、を設け、その内部に連続した光源を隠して天井面を照明します。
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2-8コーニス照明の効果とランプ位置何故、壁面全体を明るくするのでしょうか?壁面は通常の生活視点で最も目に入りやすいため、その面をどう照らすかによって空間全体の雰囲気や印象に大きな影響を与えるからです。
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2-9ガーデンライト(庭園灯)の選び方と配置庭園とは草花や樹木、石、池などを計画的に配し、整えられた空間を言います。
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2-10投光器と演出効果LED投光器はLEDの光を柱状に集めて、特定の方向や場を効率よく照らす屋外用照明器具のことです。
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2-11キッチンライト(流し元灯)の種類と照明効果LEDの特長の一つに器具の小型化があります。小型である故、今まで器具の設置が難しかった小スペースや狭スペースに取り付けを可能にしています。