照明のことが分かる講座

照明とは人々の生活に役立つ光の仕事のことを言います。 照明の主光源がLEDに変わりつつあるなか、照明を知ることで生活はより豊かに変わります。 そこで本連載では照明の基礎知識から光源や照明器具の種類、照明方式、照明がもたらす心理・ 生理効果を分かりやすくご紹介していきます。
第4章 照明のことが分かる講座

4-3 直接照明と間接照明

強い影が生じやすい直接照明

直接照明は天井に設置されたダウンライトやスポットライト器具などによって作業面や見せたい対象(視対象)を直接照らすため、照明効率が高く省エネ照明に寄与します。しかし一方で影が生じやすく、照射角度や配光によって生じる陰翳は人の顔や立体物の見え方を変えて見せます。(写真1)

写真1 同じ彫像でも光の当て方で表情が異なる 写真1 同じ彫像でも光の当て方で表情が異なる

写真1 同じ彫像でも光の当て方で表情が異なる



特に人の顔は直接照明による光の当て方で表情が著しく変わるため、照明によって適切に表わすことが重要で、これを「モデリング」といいます。

直接光を間接照明として使う

スポットライト器具は取り付け位置や照射方向が変えられます。従って直接、視対象を照らすこと以外に天井や壁面を意図的に照らすことで、その反射光で間接照明効果が得られます。(写真2スポットライト器具を天井面に向けて使用、アッパースポットとも言われ、間接照明効果がある)

写真2

写真2



しかし、器具の配光と照射角度、距離によって効果は異なります。仮に狭角配光のスポットライト器具を近距離で天井に向けると、器具の角度によっては天井のごく一部だけが、まるで乳白カバー付きの大型シーリングライトのように輝き、間接照明のより柔らかな光のイメージとは少しかけ離れた感じになってしまいます。(写真3)

写真3

写真3



従ってこの場合はできるだけ広角配光で天井面を広く照らすことが奨められます。そして天井面の輝度は最大でも100cd/m2 以下(白熱灯の提灯くらい)の低輝度であることが望まれます。

直接照明を間接照明に変える考え方はスポットライト器具以外に可動式の反射板付きのアームスタンド器具でも応用が可能で、少し気分を変えたいときなどに光を壁や天井に向けて使うと効果的です。

また住宅レベルの小規模空間では以下のような間接照明専用の器具も市販されています。一般的に白や明るいベージュなど反射率高い仕上げの天井であれば以下のような照明器具で間接照明の雰囲気を楽しむことができます。

〇間接照明用器具

1、トーチ型のフロアスタンド器具。昔の高め台に乗せられた松明のような器具でアッパーライトの得られる器具です。灯具の高さは眩しさを感じさせないために立った人の目線より上の1.5~1.8mが理想です。(写真4)

写真4 アッパーライトの得られるフロアスタンド器具

写真4 アッパーライトの得られるフロアスタンド器具



2、ペンダント器具。少し高い天井に有効で、天井より60~90cmの位置に光源のある器具が良いでしょう。大型のペンダント器具は部屋の支配的存在になるため器具の色が重要になります。器具は天井面をより均一に照らすのであればツインビームの配光が奨められます。(図1)

図1ツインビームに近い配光とペンダントのイメージ 図1ツインビームに近い配光とペンダントのイメージ

図1ツインビームに近い配光とペンダントのイメージ



3、ブラケット器具。器具は不透過材を使用した逆三角錐や半円球などのデザインがあり、特に狭い通路などへの使用に適しています。器具の出幅が邪魔にならにように横から見た器具の寸法と取り付け高さに注意が必要です。

写真5 間接照明用ブラケット

写真5 間接照明用ブラケット



間接照明の起源と間接照明用器具

北米照明学会の資料によると、間接照明は今からおよそ100年前にアメリカで考えられた手法のようです。光源が生活視点で直接目に入らないようにして、天井や壁面を広く照らすことで空間全体が目に優しい雰囲気に包まれます。

このような間接照明はインテリアに溶け込みやすく、例えば天井一面に対して光ムラが少ないほど視覚的ノイズも少なく、空間が広く見えたりします。一方で天井にアネモや煙感知器などがあると、それを照らしてしまうことで効果が半減してしまいます。さらに部屋の仕上げが白いほど、相互反射で均質な照明になりやすく、空間を退屈な気分にさせてしまう恐れもあります。

建築デザインを重視した施設の中には特に天井をアーチ、付け梁、格子、折り上げ天井などと工夫し、そのような天井を明るく照らす間接照明は雰囲気を高めながら空間のスケールや造形美を強調することも可能です。

執筆: 執筆: 中島龍興照明デザイン研究所 中島龍興

『照明のことが分かる講座』の目次

第1章 照明の基礎知識

第2章 光源の種類と特徴

第3章 LED照明器具の選び方

第4章 照明方式

第5章 照明の視覚心理・生理

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