照明のことが分かる講座
3-13 調光・調色の制御方式
照明の明るさを変えることはものの見え方と空間の雰囲気を変えることにつながり、人々の行動心理に与える影響は大きいです。このような光の制御に欠かせないのが調光です。
調光とは光の明るさを,例えば100%→75%→50%→20%、と段階的に変えるか連続的で滑らかに調整する機能のことです。一般的には連続調光が求められていますが、光源の中でも白熱灯の調光はやや滑らかな光の変化を安価で表現することができます。併せて調光操作を上手く使えば節電にもなり、ランプ寿命を延ばすことにも貢献します。
実はLEDも光の制御に長けた光源で、調光によって演出効果を高め省エネにもなるため、いまLED照明の普及とともにLEDの調光も注目されております。
LED照明には以下に挙げる調光方式があります。
照明電源の電圧は交流で一定周期繰り返される波(位相)になっています。この波の大きさを変える調光が位相制御で既設の電灯線がそのまま使えるため調光対応のLEDランプや器具であれば比較的安価に調光することができます。しかし光は電源変動の影響を受けやすいことと調光範囲がやや狭い(起動方式によって異なるが約5~100%)ので、主に省エネルギーを目的にしますが一般住宅を主に比較的小規模空間では雰囲気の変化を楽しむ用途もあります。
わが国では専用の調光器(ライトコントローラー)はメーカ各社独自設計のため,例え調光対応のLED器具やランプであっても自社製以外の調光器を使用するとチラツキや操作の途中で立ち切れが生じる恐れもあるので必ず適合テスト(以下、マッチングと言う)が必要になります。

写真1 調光器(位相制御)
2-1 PWM(ピー・ダブル・エム)方式
調光器からLED器具へパルス変調情報を送って調光する方式です。そのため電灯線2芯と PWM信号線2芯の計4本の配線が照明器具に接続されます。LED照明の点灯と消灯の時間を高速で調整することで、目にチラツキを感じさせずに明るさをコントロールします。位相制御に比べ電源の変動による影響を受けにくいことから安定した調光を可能にし、また調光範囲はおよそ1~100%まで(起動方式によって異なる)ちらつきなく変化させることが可能で、特に暗さを生かした照明演出に適しています。
この調光にはPWM専用調光器と調光ドライバー、調光対応のLED器具が必要のため器材がやや高価で、位相制御方式同様にそれぞれのメーカが異なる場合はマッチングが必要となります。(写真2)(図1)

写真2、調光ドライバーと調光対応のLED器具

図1、PWM調光のシステム概略図(24V用LED器具)
写真3 PWM調光で昼白色から電球色の調色例
写真4 PWM調光で昼白色から電球色の調色例
2-2、デジタル信号方式(専用通信、DALI、DMXなど)
電灯線2芯とデジタル制御信号線2芯の計4本の配線が照明器具につくため比較的容量の大きいデータが送れます。調光器から照明器具へデジタル信号を送って調光する方式で、調光対応のLED器具個々にアドレスを持った電気制御ギアが設定され,器具の個別制御やエリア単位の変更など高度な調光制御を可能にします。例えば欧州ではDALI(Digital Addressable Lighting Interface)システム(5本線)が普及していますが、日本では照明メーカ各社が独自に開発したDALIに変わるシステムがあります。いずれにしても多彩な制御ができる一方で使いこなせないとオーバースペックになりやすいです。
幾つかの方式がありますが、例えば無線方式は既存の電灯線を使って調光を行うもので、無線モジュール付きLED器具とコントローラがあれば比較的容易に器具一灯一灯を個別に調光制御させることができます。
なお白熱灯は調光によって明るさを落とすと光源の色温度も低下して、より火の光に近い温かみを増した雰囲気になります。しかしLEDの場合は調光しても色温度はほとんど変わりません。(疑似的に変わる製品はある)
LED器具の中には光の制御によって色温度やカラーライトの変化が楽しめる機能を持ったシステムもあります。(写真 6、5)また人感センサや照度センサとの連動で自動的に必要な明るさや光色に変わる、いわゆる調光調色の応用も進んでいます。
写真5 無線調光でカラー照明を演出
写真6 無線調光でカラー照明を演出
『照明のことが分かる講座』の目次
第1章 照明の基礎知識
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1-1光とは光には私たちの目に見える光と見えない光があります。太古の昔から人が見てきた光は太陽や星の光、そして火の光です。
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1-2照度のお話し照度とは光で照らされた場の明るさのことを言います。
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1-3光束と照度の関係一般照明用の白熱電球(普通電球とも呼ばれる)は40Wより60Wの方が明るいです。そのためW(ワット)数の高いほど「明るいランプ」と思われがちですが、例えば蛍光ランプの40Wは電球60WよりW数が低くとも数倍明るいです。 この例でもわかるようにW数は明るさを表す単位ではないのです。
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1-4照度の黄金比明るさ感は照度の高い低いだけではなく、照度対比によるところも大きいです。例えば写真1と写真2を見て下さい。
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1-5輝度とは街の明かりが届かない自然豊かな場所で、懐中電灯を夜空に向けて照らすと、まるでレーザービームのような一筋の光芒を見ることができます。
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1-6白色光源の色温度照明ではよく「白色光」と言う名称が使われます。太陽の光や青空光は白色光です。またキャンドルや白熱電球・蛍光ランプなどの人工光源も白色光を放ちます。
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1-7色温度を測定してみるとCIExy色度図(以下xy色度図)はCIE(国際照明委員会)によって承認された光色の表し方です。照明関係者だけでなく色彩の勉強をされている方にもおなじみの図表です。
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1-8演色性とはお店で見た肉や魚の赤身がおいしそうに見えたのに家で見たら少し違って見えた、という経験をされた方は少なくないと思います。
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1-9配光と配光分類一般照明用白熱電球(以下、普通電球)を点灯するとフィラメントを中心に四方八方へ360度にわたって光の放射していく様子がイメージできます。
第2章 光源の種類と特徴
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2-1白熱電球、その進化白熱電球は1878年アメリカのトーマス・エジソンによって発明された、と言われています。
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2-2豊かな種類を誇る白熱電球白熱電球を用途別に分類すると前回紹介したように一般照明用、投光照明用、装飾照明用に大別されます。
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2-3蛍光ランプ、その進化とプロセスいままで家庭やオフィス照明などで欠かせない 蛍光ランプ(熱陰極蛍光ランプ)は1935年アメリカの大手電気メーカであるGE(ゼネラルエレクトロニクス社)のインマンによって発明されました。
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2-4蛍光ランプの種類蛍光ランプを形状別に分類すると、おもに直管形、環形(丸形)、小型変形があります。
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2-5HIDランプの種類と性能HIDランプは高輝度放電ランプのことで「High Intensity Discharge Lamp」の頭文字をとった略称です。
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2-6LEDランプ、その進化プロセス今、照明=LED(発光ダイオード)と言われるほど、LEDがあらゆる空間の照明に注目されています。
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2-7LEDに関する用語の解説LEDに関する専門用語は多々ありますが、特にLED照明を理解するために必要な用語を整理して次に紹介いたします。
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2-8LED電球の種類LED電球(電球形LEDとも言われる)は白熱電球の代替になるLED光源で、口金の形状がE形(エジソンベース),B,GX53形のいずれかを備えたものを言います。
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2-9LED電球の選び方今日、一般照明用LED電球は多くの白熱電球用器具(以下、白熱灯)に使われています。そのなかで最近注目されているのが密閉対応型です。
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2-10直管形蛍光ランプ代替のLEDランプ直管LEDランプ(LED蛍光灯、直管形LEDなどともいわれる)とは直管形蛍光ランプの代替用途になるものです。
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2-11特殊照明用LEDランプ一般照明用のLEDランプ以外に特殊な用途を持ったLEDランプがあります。ここではその幾つかを紹介いたします。
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2-12有機ELと無機ELLED照明が普及しつつあるなかで、いまELが注目されています。ELはLEDの技術では難しいとされる、薄くてぎらつきのない面発光を特徴とする光源です。
第3章 LED照明器具の選び方
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3-1照明器具とその種類照明器具とは様々な素材を用いて光源とその点灯に必要な部品を安全に固定し保護したもので、電気的部分と光学的部分、および機械的部分からなります。
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3-2照明器具に使われる素材照明器具には様々な素材が使われていますが、その中でガラス、プラスチック、金属が3大素材と言われます。
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3-3日本の住宅照明に欠かせないシーリングライト1970年代、蛍光灯の普及によって日本の住宅照明には欠かせなくなった照明器具に大型のシーリングライト(以下、シーリングライト)があります。
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3-4ダウンライト器具の種類ダウンライトは天井に穴をあけて、そこに埋め込まれる器具です。したがって器具そのものの存在をあまり感じさせないで空間の明るさを得ることができます。
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3-5ダウンライトの選び方ダウンライトにはおもに全般照明用と局部照明用、壁面照明用の3種類があります。
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3-6ペンダントライト器具とは消費税が導入される前、個別消費税の一種で物品税がありました。これは主に贅沢品に課せられる税で、照明器具では一基に5灯以上のランプをもつ天井吊り下げ器具のシャンデリアが対象になっていました。
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3-7スポットライト器具の種類と選び方スポットライトを浴びるという言葉があります。これは大勢の人の視線を集める、注目されるという意味になります。
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3-84つの配光別スタンド器具スタンド器具(以下、スタンド)とは床や卓上に置いて使う器具のことで、前者をフロアスタンド(フロアランプと言う)、後者が卓上スタンド(テーブルランプとかデスクランプとも言う)になります。いずれも配線工事が不要で、近くにコンセントがあればどこにでも設置が可能なため使い勝手の良い照明器具です。
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3-9ブラケットと呼ばれる壁付け器具壁に直付けされる器具を一般にブラケットと言います。別にウォールライトとかウォールスコンスなどと呼ばれることもあります。
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3-10屋外用器具の種類屋外照明は道路、街路、広場などを安全な明るさにする目的で普及してきました。しかし今日ではそれに加えて夜の景観や雰囲気を高める照明が注目されています。
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3-11景観照明(ライトアップ)用器具夜、歴史的な建造物や土木的価値のある橋梁などが暗闇から明るく浮かび上がる様はとてもドラマチックで新たな空間の魅力を引き出す照明として、近年クローズアップされています。このような照明は一般にライトアップと呼ばれ、夜の風景に彩りを添える効果として期待されています。
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3-12間接照明とライン形LEDモジュール器具建築化照明とは建築の躯体に照明器具を内蔵して空間の明るさを得る手法です。様々な手法がありますがダウンライト照明が最も代表的な手法です。
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3-13調光・調色の制御方法照明の明るさを変えることはものの見え方と空間の雰囲気を変えることにつながり、人々の行動心理に与える影響は大きいです。
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3-14エネルギー消費効率の高いLEDランプLED照明が省エネになり電気代の節約になることは、今では周知のことと思います。
第4章 照明方式
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4-1全般照明と局部照明全般照明と局部照明は照明方式の一部で、どちらの方式をとるかで空間の雰囲気は大きく変わります。
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4-2タスク・アンビエント照明とはタスク・アンビエント照明は全般照明や局部照明と同じ照明方式の一部です。
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4-3直接照明と間接照明直接照明は天井に設置されたダウンライトやスポットライト器具などによって作業面や見せたい対象(視対象)を直接照らすため、照明効率が高く省エネ照明に寄与します。しかし一方で影が生じやすく、照射角度や配光によって生じる陰翳は人の顔や立体物の見え方を変えて見せます。
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4-4建築化照明と主な手法建築化照明については様々な手法があります。以前に「間接照明とライン形LEDモジュール」の項で一部触れましたが、今回は前回に説明していないものを含め10の手法を以下に紹介します。
第5章 照明の視覚心理・生理
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5-1視覚のメカニズム目は光によってモノを見ることができます。モノが何故見えるのか?その原理を「目から光が出ていて、目を開けたときだけモノが見える」と説いた古代の哲学者がいました。
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5-2目に優しい照明目を刺すようなギラつく光はその強さによって暴力的にもなり、眼を痛めます。日中の太陽光を直視すると危険です。
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5-3照度と視力の関係私たち日本人は北欧や北米諸国の人に比べると明るさの好きな人種のようです。
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5-4輝度と知覚効果輝度の高い光源や照明器具、窓明かりなどを直接目にすると、つい目を細めたり、まぶしすぎると手で光源を隠したりするような仕草をします。
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5-5色温度と照度の心理効果心理は効果の度合によって体調に影響することから、人の状態や行動に関わるために建築やインテリアなどの設計業務で活用されています。
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5-6光に関する脳の働き最近、照明の脳に与える影響が注目されています。