照明のことが分かる講座
2-4 蛍光ランプの種類
蛍光ランプを形状別に分類すると、おもに直管形、環形(丸形)、小型変形があります。直管形は蛍光ランプの発明当初からの形状で、幅広い用途があります。特に天井の高くないところで高照度を必要とする事務室や物販店の照明に欠かせません。
一般照明用の直管形はW数で4~110Wまであります。主流は20W(580)と40W(1198)になりますが、それに対応するインバータ式(高周波点灯型)は16W(588,5)と32W(1198)です。※( )内の単位はmm
いずれも管の長さは建築モジュール(設計で基本となる寸法)が考慮されております。直管形蛍光ランプの管径は省エネ型で28mm、Hf型(高周波点灯専用)が25,5mm、T5管で15.5mmあり、さらに細い特殊照明用もあります。(写真1)なお蛍光ランプのランプ効率は60lm/W以上が多く、特に高周波点灯専用は90~110lm/Wと高いです。
直管形に対して通称サークラインと呼ばれる環形(丸形)は乳白カバー付きシーリングライト器具に多用され、LEDが普及するまで日本の住宅照明に欠かせない存在でした。部屋の中央につけられるシーリングライト器具は少し大型ですが一灯で部屋の隅々まで明るくしてくれる便利さが受けて、日本における蛍光灯の普及にかなり貢献してきたと言えます。

写真1 直管形型蛍光ランプ
【下からT7管(管径25,5 mm),T6管(20 mm)、T5管(15,5 mm)、特殊管(8 mm)】
小型変形蛍光ランプは2通りのタイプがあります。
一つは電球型蛍光ランプで従来の白熱灯器具の一般照明用電球(白色シリカ電球や小型クリプトン電球)に代替できるものです。バルブはおもにA型とD型(スパイラル型)の形状になります。(写真2)

写真2 電球型蛍光ランプ
【右上 E26、60Wシリカ電球、 左上 60W形電球型蛍光ランプ(A型14W)/
右下 E17、 60W小型クリプトン電球(クリア) 左下 60W形電球型蛍光ランプ(スパイラル型12W)】
電球型蛍光ランプは安定器がランプに内蔵されているため、口金が適合すればそのまま白熱電球に変えて点灯できます。ランプ効率や寿命の点で白熱電球より優れた特性を持っており、例えばE17のランプは小型クリプトン電球60W相当の明るさを約10Wで実現し、ランプ寿命も長いもので13,000時間あります。
豊富な種類を持つ電球型蛍光ランプはランプによって使用上の注意や制約を受けます。一番問題なのは調光器対応型の一部のランプを除いて、調光付きの白熱灯器具には使用できないことです。もし間違って使用するとランプの破損や発煙の原因にもなりかねません。 また、ランプの重量と大きさが白熱電球に比べやや重かったり、大きかったりするものもあり、例えばアーム型のスタンド器具ではアームの強度が弱いと灯具(ヘッド)が垂れてしまうことも考えられます。 またバルブが普通電球より大きいものは、仮に灯具に収まったとしても視点によってランプの一部が見えてまぶしかったり、格好の悪い状態になったりします。今日では電球型蛍光ランプの代替可能なLED電球の台頭で、メーカによっては一部の電球型蛍光ランプが生産終了になっています。
小型変形蛍光ランプのもう一つがコンパクト型蛍光ランプです。これは口金とバルブの形状が特殊で、専用のソケット持った器具にしかつけられず、安定器も別置になっています。 特にランプの形状は独特でFPL(1本柱、ツイン1、ユーライン1、2本ピンなどと言われる)、FDL型(2本柱、ツイン2、ユーライ2、4本ピンなど)、FHT形(ツイン3)型などがあります。(写真3,4)

写真3 コンパクト型蛍光ランプ
【左から FPL型一本柱(13W)、FDL型二本柱(13W)、FDL型二本柱(27W)、FHT型三本柱(32W)】

写真4 上から見たコンパクト型蛍光ランプの形状
【左からFPL型一本柱、FDL型二本柱、FHT型三本柱】
ランプはW数の低いもので9W、13W、18W、24Wなどがあり、電球型蛍光ランプの種類にも劣りません。また高Wのものは55W、96Wがあり、それらは約80~90lm/Wの高いランプ効率をもつことから高照度を必要とする空間に使われます。
欧米の住宅はあまり蛍光灯を使いたがらない傾向があります。しかしコンパクト型蛍光灯は何故か薦められています。それは寿命がきたら内蔵された安定器ごと破棄する電球型蛍光ランプに対して、コンパクト型はランプだけ破棄すればよく、環境に優しい、という理由からです。
『照明のことが分かる講座』の目次
第1章 照明の基礎知識
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1-1光とは光には私たちの目に見える光と見えない光があります。太古の昔から人が見てきた光は太陽や星の光、そして火の光です。
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1-2照度のお話し照度とは光で照らされた場の明るさのことを言います。
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1-3光束と照度の関係一般照明用の白熱電球(普通電球とも呼ばれる)は40Wより60Wの方が明るいです。そのためW(ワット)数の高いほど「明るいランプ」と思われがちですが、例えば蛍光ランプの40Wは電球60WよりW数が低くとも数倍明るいです。 この例でもわかるようにW数は明るさを表す単位ではないのです。
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1-4照度の黄金比明るさ感は照度の高い低いだけではなく、照度対比によるところも大きいです。例えば写真1と写真2を見て下さい。
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1-5輝度とは街の明かりが届かない自然豊かな場所で、懐中電灯を夜空に向けて照らすと、まるでレーザービームのような一筋の光芒を見ることができます。
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1-6白色光源の色温度照明ではよく「白色光」と言う名称が使われます。太陽の光や青空光は白色光です。またキャンドルや白熱電球・蛍光ランプなどの人工光源も白色光を放ちます。
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1-7色温度を測定してみるとCIExy色度図(以下xy色度図)はCIE(国際照明委員会)によって承認された光色の表し方です。照明関係者だけでなく色彩の勉強をされている方にもおなじみの図表です。
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1-8演色性とはお店で見た肉や魚の赤身がおいしそうに見えたのに家で見たら少し違って見えた、という経験をされた方は少なくないと思います。
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1-9配光と配光分類一般照明用白熱電球(以下、普通電球)を点灯するとフィラメントを中心に四方八方へ360度にわたって光の放射していく様子がイメージできます。
第2章 光源の種類と特徴
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2-1白熱電球、その進化白熱電球は1878年アメリカのトーマス・エジソンによって発明された、と言われています。
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2-2豊かな種類を誇る白熱電球白熱電球を用途別に分類すると前回紹介したように一般照明用、投光照明用、装飾照明用に大別されます。
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2-3蛍光ランプ、その進化とプロセスいままで家庭やオフィス照明などで欠かせない 蛍光ランプ(熱陰極蛍光ランプ)は1935年アメリカの大手電気メーカであるGE(ゼネラルエレクトロニクス社)のインマンによって発明されました。
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2-4蛍光ランプの種類蛍光ランプを形状別に分類すると、おもに直管形、環形(丸形)、小型変形があります。
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2-5HIDランプの種類と性能HIDランプは高輝度放電ランプのことで「High Intensity Discharge Lamp」の頭文字をとった略称です。
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2-6LEDランプ、その進化プロセス今、照明=LED(発光ダイオード)と言われるほど、LEDがあらゆる空間の照明に注目されています。
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2-7LEDに関する用語の解説LEDに関する専門用語は多々ありますが、特にLED照明を理解するために必要な用語を整理して次に紹介いたします。
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2-8LED電球の種類LED電球(電球形LEDとも言われる)は白熱電球の代替になるLED光源で、口金の形状がE形(エジソンベース),B,GX53形のいずれかを備えたものを言います。
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2-9LED電球の選び方今日、一般照明用LED電球は多くの白熱電球用器具(以下、白熱灯)に使われています。そのなかで最近注目されているのが密閉対応型です。
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2-10直管形蛍光ランプ代替のLEDランプ直管LEDランプ(LED蛍光灯、直管形LEDなどともいわれる)とは直管形蛍光ランプの代替用途になるものです。
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2-11特殊照明用LEDランプ一般照明用のLEDランプ以外に特殊な用途を持ったLEDランプがあります。ここではその幾つかを紹介いたします。
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2-12有機ELと無機ELLED照明が普及しつつあるなかで、いまELが注目されています。ELはLEDの技術では難しいとされる、薄くてぎらつきのない面発光を特徴とする光源です。
第3章 LED照明器具の選び方
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3-1照明器具とその種類照明器具とは様々な素材を用いて光源とその点灯に必要な部品を安全に固定し保護したもので、電気的部分と光学的部分、および機械的部分からなります。
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3-2照明器具に使われる素材照明器具には様々な素材が使われていますが、その中でガラス、プラスチック、金属が3大素材と言われます。
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3-3日本の住宅照明に欠かせないシーリングライト1970年代、蛍光灯の普及によって日本の住宅照明には欠かせなくなった照明器具に大型のシーリングライト(以下、シーリングライト)があります。
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3-4ダウンライト器具の種類ダウンライトは天井に穴をあけて、そこに埋め込まれる器具です。したがって器具そのものの存在をあまり感じさせないで空間の明るさを得ることができます。
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3-5ダウンライトの選び方ダウンライトにはおもに全般照明用と局部照明用、壁面照明用の3種類があります。
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3-6ペンダントライト器具とは消費税が導入される前、個別消費税の一種で物品税がありました。これは主に贅沢品に課せられる税で、照明器具では一基に5灯以上のランプをもつ天井吊り下げ器具のシャンデリアが対象になっていました。
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3-7スポットライト器具の種類と選び方スポットライトを浴びるという言葉があります。これは大勢の人の視線を集める、注目されるという意味になります。
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3-84つの配光別スタンド器具スタンド器具(以下、スタンド)とは床や卓上に置いて使う器具のことで、前者をフロアスタンド(フロアランプと言う)、後者が卓上スタンド(テーブルランプとかデスクランプとも言う)になります。いずれも配線工事が不要で、近くにコンセントがあればどこにでも設置が可能なため使い勝手の良い照明器具です。
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3-9ブラケットと呼ばれる壁付け器具壁に直付けされる器具を一般にブラケットと言います。別にウォールライトとかウォールスコンスなどと呼ばれることもあります。
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3-10屋外用器具の種類屋外照明は道路、街路、広場などを安全な明るさにする目的で普及してきました。しかし今日ではそれに加えて夜の景観や雰囲気を高める照明が注目されています。
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3-11景観照明(ライトアップ)用器具夜、歴史的な建造物や土木的価値のある橋梁などが暗闇から明るく浮かび上がる様はとてもドラマチックで新たな空間の魅力を引き出す照明として、近年クローズアップされています。このような照明は一般にライトアップと呼ばれ、夜の風景に彩りを添える効果として期待されています。
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3-12間接照明とライン形LEDモジュール器具建築化照明とは建築の躯体に照明器具を内蔵して空間の明るさを得る手法です。様々な手法がありますがダウンライト照明が最も代表的な手法です。
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3-13調光・調色の制御方法照明の明るさを変えることはものの見え方と空間の雰囲気を変えることにつながり、人々の行動心理に与える影響は大きいです。
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3-14エネルギー消費効率の高いLEDランプLED照明が省エネになり電気代の節約になることは、今では周知のことと思います。
第4章 照明方式
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4-1全般照明と局部照明全般照明と局部照明は照明方式の一部で、どちらの方式をとるかで空間の雰囲気は大きく変わります。
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4-2タスク・アンビエント照明とはタスク・アンビエント照明は全般照明や局部照明と同じ照明方式の一部です。
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4-3直接照明と間接照明直接照明は天井に設置されたダウンライトやスポットライト器具などによって作業面や見せたい対象(視対象)を直接照らすため、照明効率が高く省エネ照明に寄与します。しかし一方で影が生じやすく、照射角度や配光によって生じる陰翳は人の顔や立体物の見え方を変えて見せます。
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4-4建築化照明と主な手法建築化照明については様々な手法があります。以前に「間接照明とライン形LEDモジュール」の項で一部触れましたが、今回は前回に説明していないものを含め10の手法を以下に紹介します。
第5章 照明の視覚心理・生理
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5-1視覚のメカニズム目は光によってモノを見ることができます。モノが何故見えるのか?その原理を「目から光が出ていて、目を開けたときだけモノが見える」と説いた古代の哲学者がいました。
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5-2目に優しい照明目を刺すようなギラつく光はその強さによって暴力的にもなり、眼を痛めます。日中の太陽光を直視すると危険です。
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5-3照度と視力の関係私たち日本人は北欧や北米諸国の人に比べると明るさの好きな人種のようです。
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5-4輝度と知覚効果輝度の高い光源や照明器具、窓明かりなどを直接目にすると、つい目を細めたり、まぶしすぎると手で光源を隠したりするような仕草をします。
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5-5色温度と照度の心理効果心理は効果の度合によって体調に影響することから、人の状態や行動に関わるために建築やインテリアなどの設計業務で活用されています。
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5-6光に関する脳の働き最近、照明の脳に与える影響が注目されています。