遠心ポンプの実践講座

本連載では、基礎講座に続き遠心ポンプにスポットをあて、ポンプを構成する部品の役割からポンプの点検の仕方、トラブルとその対策まで、 より実践的な知識をご紹介していきます。遠心ポンプの基礎講座はこちら>>
第4章 ポンプの運転

4-8 ポンプの並列運転

4-8-1 並列運転

ポンプを2台以上使って、並列に設置して同時に運転する場合を並列運転と呼びます。ここでは、同じ性能のポンプを2台使った並列運転について説明します。

並列運転は吐出し量をポンプ1台のときより多くしたい場合に利用されます。図4-8-1に示すように、ポンプを2台並列に設置し、吸込配管はNPSHAの低下を避けるために一般にはポンプそれぞれに設け、吐出し側は合流して1本の配管にします。ポンプの運転点について図4-8-2に示します。 同図で、横軸に吐出し量、立軸に全揚程を示します。 1台単独運転の全揚程は、ポンプ1台の全揚程をそのまま描きます。 並列運転の合計の吐出し量は、締切点では1台の全揚程の点D、その他の吐出し量では横方向に吐出し量を加算して描きます。具体的には、点Bの吐出し量Q2を横方向に加算して2・Q2の点Aを求めます。他の吐出し量も同様で、1台の全揚程の吐出し量と同じ吐出し量だけ加算して求めます。

図4-8-1 並列運転の配置

図4-8-1 並列運転の配置


図4-8-2 並列運転の性能

図4-8-2 並列運転の性能

点DBCを通る曲線がポンプ1台の全揚程、点DAを通る曲線がポンプ2台の全揚程、点ECAを通る2次曲線は配管抵抗曲線です。どちらかのポンプ1台の単独運転のとき、両者の交点Cが運転点になります。

ポンプ1台を運転していて、もう1台のポンプを運転すると、吐出し量が増加するので配管抵抗も増加し、点Cから点Aに運転点が移動します。 2台の並列運転のときは配管抵抗が増加するので1台の吐出し量より減少し、それぞれのポンプの運転点は点Cから点Bへ移動します。 したがって、1台の単独運転のときは、吐出し量Q1、全揚程H1ですが、2台の並列運転のときはそれぞれ吐出し量Q2、全揚程H2になります。

ここで、ポンプ1台が運転されていて、もう1台のポンプを始動して数秒間はこのポンプは締切運転になりますが、運転中の全揚程に打ち勝って液が流れ、その後配管抵抗とつり合う2台の並列運転点Aに落ち着きます。

4-8-2 並列運転の注意点

並列運転において、次の注意点があります。

1.1台単独運転のとき吐出し量が増えNPSH3が増加するので、NPSHAと駆動機定格出力が不足しないことを事前に確認する必要があります。

2.性能が異なるポンプであれば、性能が低いポンプが締切運転の状態のままになることがあるので、事前に確認する必要があります。

これらの対策として、図4-8-3に示すように、並列を止めて単独運転に変更することが考えられます。これは、2台のポンプが相互に影響を与えることを避けた方法です。実際には状況に応じた最善策を採ることになります。

図4-8-3 並列運転の変更例

図4-8-3 並列運転の変更例

執筆:外山技術士事務所 所長 外山幸雄

『遠心ポンプの実践講座』の目次

第1章 ポンプの仕様

第2章 ポンプの構成部品と役割

第3章 ポンプの据付けと試運転

第4章 ポンプの運転

第5章 ポンプの保守点検と省エネルギー

第6章 ポンプのトラブルと対策

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