工具の通販モノタロウ ポンプ・送風機・電熱機器 遠心ポンプの実践講座 ポンプ吸込渦と初生キャビテーション

遠心ポンプの実践講座

本連載では、基礎講座に続き遠心ポンプにスポットをあて、ポンプを構成する部品の役割からポンプの点検の仕方、トラブルとその対策まで、 より実践的な知識をご紹介していきます。遠心ポンプの基礎講座はこちら>>
第4章 ポンプの運転

4-7 ポンプ吸込渦と初生キャビテーション

ポンプと配管の設置スペースの関係で、ポンプの吸込口に曲管が付いていることがあります。ポンプの吸込口直前に曲管が付いていると、図4-7-1に示すように、曲がった直後に渦が生成されます。 そして、その渦がポンプに入り込むと、ポンプに異常な振動を起こすことがあります。 また、吐出しでは脈動が大きくなることもあります。経験的には、モータ定格出力が15 kWまでの小さいポンプでは、曲管をポンプの吸込ノズルに直接付けても、このような問題は起こりません。

しかしながら、このような渦は発生させない方がよいので、図4-7-2に示すように、通常は吸込配管の直管部長さは、吸込口径の4倍以上にします。吸込配管の直管部が確保できないときは、曲管内に整流格子を入れ、ポンプ吸込部で渦ができないようにします。

図4-7-1 曲管後流の渦

図4-7-1 曲管後流の渦


図4-7-2 渦発生の抑止法

図4-7-2 渦発生の抑止法

4-7-2 初生キャビテーション

ポンプがキャビテーションを起こさないで安全に運転されるためには、

NPSHA>NPSH3

という関係になることが必要です。

吐出し量を一定に保ちながら、NPSHAを徐々に小さくしていくと、全揚程はある点からかなり急に低下し始めます。この低下し始める点が初生キャビテーション点になります。

吐出し量を一定にして、NPSHAが十分にある状態のときの全揚程を100 %とし、NPSHAを徐々に小さくしていったときに、全揚程が低下します。この低下したヘッド分が3 %になったときのNPSHAをNPSH3と定義しています。 ところが、比速度が大きいポンプでは、低下するヘッド分が3 %にならなくても振動や騒音が大きくなることがあります。

図4-7-3に、最高効率点の吐出し量を100 %とし、最高効率点の吐出し量におけるNPSH3を100 %にしたときのNPSH3及び初生キャビテーションの曲線を示します。初生キャビテーションは、ヘッドが低下し始める直前のNPSHAを表します。 同図で立方向にハッチングしている範囲で、実は振動や騒音が大きくなることがあるのです。 この原因で問題が起こった場合、可能であればポンプの運転点を変えることが得策です。 このような問題を回避するために、購入者によっては、見積り時に初生キャビテーションの曲線を要求しています。

図4-7-3 初生キャビテーション

図4-7-3 初生キャビテーション

執筆:外山技術士事務所 所長 外山幸雄

『遠心ポンプの実践講座』の目次

第1章 ポンプの仕様

第2章 ポンプの構成部品と役割

第3章 ポンプの据付けと試運転

第4章 ポンプの運転

第5章 ポンプの保守点検と省エネルギー

第6章 ポンプのトラブルと対策

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