工具の通販モノタロウ ポンプ・送風機・電熱機器 遠心ポンプの実践講座 ポンプに作用する配管荷重による基礎の荷重

遠心ポンプの実践講座

本連載では、基礎講座に続き遠心ポンプにスポットをあて、ポンプを構成する部品の役割からポンプの点検の仕方、トラブルとその対策まで、 より実践的な知識をご紹介していきます。遠心ポンプの基礎講座はこちら>>
第3章 ポンプの据付けと試運転

3-2 ポンプに作用する配管荷重による基礎の荷重

次は、「3-1 ポンプによる基礎の荷重、表3-1-1 ポンプの基礎荷重」にある配管荷重及び配管モーメントについて説明します。

ポンプのケーシングには吸込口及び吐出し口があります。立形ポンプの一部を除き、両方の口はフランジが一般的ですが、小さい口ではねじ込みの場合もあります。 どちらの場合でも、ポンプの据付けのときには、吸込配管及び吐出し配管が設けられますが、これらの配管がポンプに取り付けられるときにお互いの中心がずれていたり、長手方向にすき間があったりします。 そのときに、無理矢理ポンプに取り付けてしまうと、ポンプケーシングには配管からの荷重及びモーメントが作用します。

仮に、まったく狂いがなく配管ができ上がって、ポンプケーシングには荷重及びモーメントが作用しないとします。それでも、ポンプが運転に入ると、液の反力や振動などによって、ポンプケーシングには必ず荷重及びモーメントが作用します。 また、高温や低温の液を扱う場合には、ポンプ及び配管材料が同じであっても、部分的に温度差があるので伸び量や縮み量が変わるので、結局はポンプケーシングには必ず荷重及びモーメントが作用します。また、ポンプと配管の材料が異なるときは、荷重及びモーメントは増大します。

それでは、ポンプのケーシングに荷重及びモーメントが作用したときに、ポンプはどうなるでしょうか。ポンプで注意が必要なことは次の4点です。

  1. ポンプ全体が変形して液漏れが発生する。
  2. ポンプ全体が変形して、内部の狭いすき間の個所が当たる。
  3. ケーシングなどが破損する。
  4. カップリングと結合する主軸端がずれる。

ところが、実際に作用する配管荷重と配管モーメントは、配管してみないと分かりません。そのため、基礎にどれだけ負荷されるかも事前には分かりません。また、配管荷重は基礎に対して上方向も下方向もあり得ます。

その対策として購入者は、許容配管荷重及び許容配管モーメントをポンプメーカに指定することができます。表3-2-1に示すのは、API 610で規定している許容配管荷重及び許容配管モーメントです。 これらの値以内であれば、上記4点にかかわる問題が起こってはならないのです。同表では吸込及び吐出しのノズルサイズによって、配管荷重及び配管モーメントの許容値が示されています。また、配管荷重はノズルの方向によって値が決まっています。

表3-2-1 配管荷重と配管モーメント

       配管荷重(N)
ノズルサイズ(mm)
50 80 100 150 200 250 300 350 400
トップノズル   FX 710 1070 1420 2490 378 5340 6670 7120 8450
Fy 580 890 1160 2050 3110 4450 5340 5780 6670
Fz 890 1130 1780 3110 4890 6670 8000 8900 10230
サイドノズル   Fx 710 1070 1420 2490 3780 5340 6670 7120 8450
Fy 890 1130 1780 3110 4890 6670 8000 8900 10230
Fz 580 890 1160 2050 3110 4450 5340 5780 6670
エンドノズル Fx 890 1130 1780 3110 4890 6670 8000 8900 10230
  Fy 710 1070 1420 2490 3780 5340 6670 7120 8450
  Fz 580 890 1160 2050 3110 4450 5340 5780 6670
配管モーメント(Nm)
全てのノズル Mx 460 950 1130 2300 3530 5020 6100 6370 7320
  My 230 470 680 1180 1760 2440 2980 3120 3660
  Mz 350 720 1000 1760 2580 3800 4610 4750 5420

ノズルの方向については、図3-2-1に示す立軸インラインポンプ、図3-2-2に示す立形キャン付きポンプ及び図3-2-3に示す横軸水平割り多段ポンプは「サイド-サイド」、図3-2-4に示す横軸単段ポンプは「エンド-トップ」、図3-2-5に示す横軸二重胴多段ポンプは「トップ-トップ」です。 参考として、これらのポンプで、吸込口径100 mm、吐出し口径80 mmの場合の許容配管荷重及び許容配管モーメントを表3-2-2に示します。

図3-2-1 立軸インラインポンプ「サイド-サイド」

図3-2-1 立軸インラインポンプ「サイド-サイド」


図3-2-2 立軸キャン付きポンプ「サイド-サイド」

図3-2-2 立軸キャン付きポンプ「サイド-サイド」


図3-2-3 横軸水平割り多段ポンプ「サイド-サイド」

図3-2-3 横軸水平割り多段ポンプ「サイド-サイド」


図3-2-4 横軸単段ポンプ「エンド-トップ」

図3-2-4 横軸単段ポンプ「エンド-トップ」


図3-2-5 横軸二重胴多段ポンプ-「トップ-トップ」

図3-2-5 横軸二重胴多段ポンプ-「トップ-トップ」

表3-2-2 配管荷重と配管モーメント例

  吸込 吐出し 吸込 吐出し 吸込 吐出し
100 80 100 80 100 80
「サイド」 「サイド」 「エンド」 「エンド」 「トップ」 「トップ」
配管荷重(N) Fx ±1420 ±1070 ±1780 ±1070 ±1420 ±1070
Fy ±1780 ±1330 ±1420 ±890 ±1160 ±890
Fz ±1160 ±890 ±1160 ±1330 ±1780 ±1330
配管 Mx ±1330 ±950 ±1330 ±950 ±1330 ±950
モーメント My ±680 ±470 ±680 ±470 ±680 ±470
(N・m) Mz ±1000 ±720 ±1000 ±720 ±1000 ±720

表3-2-1に示す配管荷重と配管モーメントの値は、API ポンプの場合には、十分許容できる値ですが、汎用ポンプなどでは、これらの値は到底許容できません。 汎用ポンプなどで、大きな配管荷重と配管モーメントが負荷されることが想定される場合には、ポンプ吸込口及び吐出し口と配管の間に、それぞれフレキシブルチューブを入れる方法が効果的です。

執筆:外山技術士事務所 所長 外山幸雄

『遠心ポンプの実践講座』の目次

第1章 ポンプの仕様

第2章 ポンプの構成部品と役割

第3章 ポンプの据付けと試運転

第4章 ポンプの運転

第5章 ポンプの保守点検と省エネルギー

第6章 ポンプのトラブルと対策

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