遠心ポンプの実践講座

本連載では、基礎講座に続き遠心ポンプにスポットをあて、ポンプを構成する部品の役割からポンプの点検の仕方、トラブルとその対策まで、 より実践的な知識をご紹介していきます。遠心ポンプの基礎講座はこちら>>
第2章 ポンプの構成部品と役割

2-12 ポンプの軸受潤滑方式

軸受の潤滑方式には、表2-12-1に示すように、グリス密封、グリス、オイルバス、オイルミスト、強制給油があります。オイルバスの潤滑では軸受の潤滑及び冷却効果を高めるために、オイルフリンガやオイルリングを追加することがあります。 潤滑油は、一般には2極駆動のポンプではISO VG32、4極駆動ではISO VG 46を使用します。

グリス密封の軸受は軸受内部にグリスが密封されているので、外部からグリスもオイルも供給する必要がなく、扱いやすい軸受です。グリスで潤滑する軸受は、軸受ハウジング内にグリスを入れて潤滑します。

  • 表2-12-1 軸受潤滑方式
  • グリス密封
  • グリス
  • オイルバス
  • オイルバス+オイルフリンガ
  • オイルバス+オイルリング
  • オイルミスト
  • 強制給油

図2-12-1に「オイルバス+オイルフリンガ」の構造を示します。潤滑油面は玉軸受の中心または若干下にし、主軸に一体で取り付けられたオイルフリンガが潤滑油を掻き揚げて、軸受の潤滑及び冷却効果を高めます。同図においてオイルフリンガが付かない潤滑はオイルバスになります。

図2-12-1 「オイルバス+オイルフリンガ」

図2-12-1 「オイルバス+オイルフリンガ」


「オイルバス+オイルリング」の潤滑方式を図2-12-2に示します。潤滑油面は軸受の玉中心よりかなり下になりますが、オイルリングは主軸の回転とともに、オイルフリンガと同様に、潤滑油を掻き揚げて軸受の潤滑及び冷却効果を高めます。

図2-12-2 「オイルバス+オイルリング」

図2-12-2 「オイルバス+オイルリング」


オイルミストによる潤滑方式は、図2-12-3に示します。軸受ハウジング内には潤滑油は不要です。外部から潤滑油を霧状にして軸受ハウジングのオイルミスト入口から導入し、各軸受を通過させて残りのオイルミストをオイルミスト出口から排出します。

図2-12-3 「オイルミスト」

図2-12-3 「オイルミスト」

オイルバスの場合、潤滑油面は玉軸受のほぼ中心にするので、玉による攪拌熱が大きくなります。オイルリングの場合は、潤滑油面は玉軸受の玉より下にあって玉には接していないので、軸受の回転による攪拌熱はそれほど発生しません。オイルミストは潤滑油がないので、当然ですが攪拌熱は発生しません。

軸受の潤滑方式をどの方法にするかは、単に軸受の寿命だけで決めることはできません。軸受の温度上昇値を、例えばJIS B 8301に載っている参考値以下にする必要があります。

どれだけ温度上昇するかは、ポンプの液温、周囲の温度、回転速度などいろいろな要因で変わります。実際には計算で温度上昇値を求めることはできません。ポンプメーカでは、実験や実績から非水冷にして潤滑方式ごとに温度上昇値を把握して、基準値を超える温度上昇値になるときは水冷などによって冷却します。

執筆:外山技術士事務所 所長 外山幸雄

『遠心ポンプの実践講座』の目次

第1章 ポンプの仕様

第2章 ポンプの構成部品と役割

第3章 ポンプの据付けと試運転

第4章 ポンプの運転

第5章 ポンプの保守点検と省エネルギー

第6章 ポンプのトラブルと対策

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