遠心ポンプの実践講座

本連載では、基礎講座に続き遠心ポンプにスポットをあて、ポンプを構成する部品の役割からポンプの点検の仕方、トラブルとその対策まで、 より実践的な知識をご紹介していきます。遠心ポンプの基礎講座はこちら>>
第2章 ポンプの構成部品と役割

2-5 ポンプの羽根車形式

羽根車は主軸に固定された回転体の1つで、主軸と一体で回転します。そして、その回転によってポンプの液にエネルギーを与えます。

羽根車は液の特徴によって形式が変わります。清浄な液のときは図2-5-1示すクローズド形羽根車、スラリーなどの摩耗成分を含んだ液のときは図2-5-2に示すオープン形羽根車 またはセミオープン形羽根車、ビニール紐や布きれなど、 ポンプ内部で閉塞を起こすような異物が混入している液のときは図2-5-3に示す無閉塞形羽根車にします。

  • 図2-5-1 クローズド形羽根車
  • 図2-5-1 クローズド形羽根車
  • 図2-5-2 オープン形羽根車
  • 図2-5-2 オープン形羽根車

  • 図2-5-3 無閉塞形羽根車
  • 図2-5-3 無閉塞形羽根車

なぜ、そのように使い分けているのでしょうか。図2-5-4は主板と側板に翼が挟まれているクローズド形羽根車です。そして同図に示すように、羽根車とライナリングの半径すき間は還流量をできるだけ少なくして効率の低下を最小限にします。 この半径すき間を通過するときの還流の速度は、すき間が狭いので高速になります。もし、スラリーなど摩耗成分を含んだ液だとすれば、短時間のうちに半径すき間部は摩耗して、異常な吐出し量不足及び効率低下を招くのです。 また、ビニール紐や布きれなど閉塞を起こすような異物が混入している液の場合には、半径すき間部に異物が詰まって羽根車の回転を妨げてしまう危険があります。したがって、クローズド形羽根車は、スラリーや異物が混入しない清浄な液のときに使用されるのです。

図2-5-4 クローズド形羽根車のすき間流れ

図2-5-4 クローズド形羽根車のすき間流れ

図2-5-5に示すスラリーポンプの羽根車はセミオープン形をしていて、主板は付いていますが側板はありません。クローズド形羽根車にある羽根車とライナリングの半径すき間部はありません。このような形状にして、摩耗による著しい性能低下を避けているのです。

図2-5-5 スラリーポンプ

図2-5-5 スラリーポンプ

ビニール紐や布きれなど閉塞を起こすような異物が混入してくる場合に適用するポンプの1つに、図2-5-6に示すボルテックスポンプと呼ばれるものがあります。図2-5-3に示す無閉塞形羽根車を使って、図2-5-6の再下端から異物が混入している液を吸込み、ケーシング内に導きます。 そして羽根車の回転によってケーシング内に円周方向の渦流を形成して、羽根車に異物が到達する前に、吐出し口から吐き出します。つまり、羽根車による渦流よって、異物の詰まりを防止しているのです。

図2-5-6 ボルテックスポンプ

図2-5-6 ボルテックスポンプ

このように、羽根車は液の特徴によって形式が変わるのです。また、羽根車の形式によって性能も変わります。 3種類の羽根車において、羽根車の直径及び出口幅が同じポンプとすれば、全揚程及び効率は、クローズド形羽根車、オープン形羽根車、無閉塞形羽根車の順に低くなります。 動粘度が150 cStを超えるような高粘性液の場合、オープン形羽根車の効率はクローズド形羽根車のときよりも高くなることがあります。

執筆:外山技術士事務所 所長 外山幸雄

『遠心ポンプの実践講座』の目次

第1章 ポンプの仕様

第2章 ポンプの構成部品と役割

第3章 ポンプの据付けと試運転

第4章 ポンプの運転

第5章 ポンプの保守点検と省エネルギー

第6章 ポンプのトラブルと対策

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