空調設備の基礎講座

私たちは、室内外の状況変化に応じて温度や湿度などを調節するために、暖房、冷房、換気などの「空調設備」を使用します。本連載では、空調設備の役割・目的から各種設備の特徴まで、快適に過ごすために知っておくべき基本的な事項を紹介していきます。
第6章 個別暖房と直接暖房

6-7 温水式床暖房の特徴

温水式床暖房とは

温水式床暖房は熱源機からの温水を床下のコイルに循環させて床暖房を行う方法です。熱源にはボイラ、無圧式温水ヒーター、真空式温水ヒーター、あるいはヒートポンプなどを熱源にすることもできます。温水式床暖房の一般的な特徴として、電気式床暖房に比べるとイニシャルコストは高くなりますが、ランニングコストは抑えられる傾向にあります。熱源機の燃料はさまざまですが、代表的なものにガス、灯油などがあります。最近ではヒートポンプもよく使われます。

ヒートポンプによる温水式床暖房

温水式床暖房として最近多いのは、ヒートポンプによる熱源機を使用したものです。ヒートポンプはどこから熱を汲みあげるかによっていろいろな種類がありますが、一般住宅などの比較的小規模なヒートポンプの代表的なものに空気中の熱を利用するエコキュートがあります。

エコキュートはオール電化の住宅などで採用されることが多いシステムです。夜間の割安な電力を利用して貯湯ユニットにお湯を蓄えて、そのお湯を給湯や床暖房に利用します。なお、床暖房に採用されるのは多機能型エコキュートといわれるものですが、エコキュートは空気中の熱を利用する特性上、外気温の影響を受けます。特に夜間にお湯をつくることを考えると、夜の気温が低い地域では効率面で不利になります。その他、導入する場合は湯切れをおこさないように家族の人数、タンク容量、使い方など、さまざまなことを検討する必要はあります。

ガスによる温水式床暖房

小規模なガスによる温水式床暖房の熱源としては、たとえばエコジョーズのような高効率給湯器も選択肢の一つです。エコジョーズとは従来であれば排気されていた2次熱を再利用できるようにすることで熱効率を向上させた潜熱回収型の給湯器のことです。このタイプの給湯器は使いたいときに瞬時にお湯を取り出せるので湯切れの心配はありません。

他にもガスエンジンによる発電と排熱を利用してお湯をつくるエコウィル。あるいはハイブリッド給湯・暖房システムなどもガスによる温水式床暖房の熱源機として使えます。ハイブリッド給湯・暖房システムはヒートポンプとガス給湯器の利点を兼ね備えたもので、湯切れのときにはガス給湯器がバックアップできるようなしくみになっています。その他、ハイブリッドの例としてはソーラーシステムに補助熱源としてガス給湯器を用いるなどの方法もあります。

灯油による温水式床暖房

灯油ボイラを熱源機にする場合、灯油には公共のパイプラインがないので、熱源機の他に灯油タンクが必要になります。そのため定期的な給油が必要ですし、ある程度のメンテナンスは必要ですが、比較的大きな規模の床暖房にも対応できてイニシャルコストも安いことから根強く人気のある床暖房の方法です。特に寒冷地では床暖房を含めたセントラルヒーティングの熱源機の燃料に灯油を選択する例は多くみられます。

執筆: イラストレーター・ライター 菊地至

『空調設備の基礎講座』の目次

第1章 空調設備を学ぶ前に

第2章 空調方式

第3章 熱源と主要機器

第4章 熱搬送設備

第5章 空調設備と省エネ

第6章 個別暖房と直接暖房

第7章 換気設備

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