空調設備の基礎講座

私たちは、室内外の状況変化に応じて温度や湿度などを調節するために、暖房、冷房、換気などの「空調設備」を使用します。本連載では、空調設備の役割・目的から各種設備の特徴まで、快適に過ごすために知っておくべき基本的な事項を紹介していきます。
第6章 個別暖房と直接暖房

6-6 電気式床暖房の特徴

床暖房は床からの放射熱で壁、天井など部屋全体を暖める暖房方法なので、他の暖房に比べて部屋の温度にムラが少なく均一に快適な空間をつくれる特徴があります。対流式の暖房のように埃やチリを巻き上げて空気を汚すことがないなども床暖房のメリットの一つといえます。ただし、室温が上昇するのに時間がかかるので、すぐに部屋を暖めたい場合は他の暖房と併用するなどの対策は必要です。

床暖房の種類を大きく分けると、電気式と温水式に分けることができます。温水式について後述することにして、ここでは電気式床暖房について学びましょう。

一般的に大規模な床暖房の場合は温水式床暖房を採用するのが普通です。電気式床暖房が大規模な床暖房に不向きな理由としては、発熱させる面積が大きくなるほど電気代のランニングコストが高くなるからです。ただし、設備自体はシンプルなので、施工が楽でイニシャルコストは安くすむのなどのメリットはあります。電気式床暖房の種類には電熱線ヒーター式、PTCヒーター式、蓄熱式などがあります。

電熱線ヒーター式

電熱線が配線されたパネルを床下に設置して、パネルを発熱させる電気式の中でも最もシンプルな床暖房の方法です。発熱面積が大きくなるほど電気代が割高になってしまうので、比較的狭いスペースを暖める用途に適しています。一般住宅などの小規模な床暖房に採用される例が多いです。なお、電気代節約の一助としてサーモスタットで一定の温度まで暖まったらスイッチをOFF、一定の温度に下がったらスイッチをONにする温度調整はできます。

PTCヒーター式

PTC(Positive Temperature Coefficient)とは温度に応じて電気抵抗が変化する性質を表す言葉のことで、簡単にいうとPTCは温度を感知して発熱を制御する機能を備えたフィルムのことです。たとえば家具の下などのように熱がこもる部分をフィルムが感知して発熱を抑える。あるいは窓からの日差しで床に日が当たる部分と陰になる部分といった温度にむらできる場合などもフィルム自体が温度を感知して発熱を制御します。サーモスタットの単純なON-OFFの切り替えではなく、フィルム自体が発熱を制御することで無駄な電力消費を抑えるしくみになっています。

蓄熱式

蓄熱式の床暖房は蓄熱による電気代の節約を狙った床暖房で、夜間の割安な電力を利用して蓄熱体に熱を蓄えて昼間に放熱させて暖房します。電気式の床暖房の中では最も電気代のランニングコストを抑えて広い面積の床暖房にも対応できるメリットがあります。ただし、イニシャルコストとしては高くなる傾向があり、蓄熱体に熱を蓄えることから瞬時に細かな温度調整はできないなどのデメリットはあります。

執筆: イラストレーター・ライター 菊地至

『空調設備の基礎講座』の目次

第1章 空調設備を学ぶ前に

第2章 空調方式

第3章 熱源と主要機器

第4章 熱搬送設備

第5章 空調設備と省エネ

第6章 個別暖房と直接暖房

第7章 換気設備

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