空調設備の基礎講座

私たちは、室内外の状況変化に応じて温度や湿度などを調節するために、暖房、冷房、換気などの「空調設備」を使用します。本連載では、空調設備の役割・目的から各種設備の特徴まで、快適に過ごすために知っておくべき基本的な事項を紹介していきます。
第4章 熱搬送設備

4-6 ダクトの吹出口と吸込口

一般住宅で考えた場合、冷暖房がルームエアコンであれば吹出口や吸込口はエアコンと一体になりますが、ビルなどの単一ダクト方式の場合、空調機からダクトを通って送られてきた冷風や温風の最終出口となる「吹出口」、外気を取り込みや、室内の空気を空調機に戻すための還気の取り込み口となる「吸込口」が必要になります。

アネモ

オフィスビルやデパートなどで天井付けの定番の吹出口といえばアネモスタットです。「アネモ」と略して呼ばれることが多いです。形状の違いで丸アネモや角アネモがあります。多層コーン型のタイプはコーンを上下させることで気流方向を調整することができます。冬の暖房時は暖気を床まで届けたいので、気流を垂直方向(床方向)に向けます。対して夏の冷房は水平方向に拡散するように気流を向けます。

アネモ

ライン型・ノズル型・ユニバーサル型

ライン型の吹出口はライン状に細長い形状をしていて、幅広く空気を送ることができます。その特性から天井に取り付けて建物のペリメータゾーンの温熱環境の改善などにも使われる吹出口です。

ノズル型の吹出口は気流方向を設定して風を遠くに送ることができるタイプの吹出口です。その特性から倉庫、体育館、劇場など、天井が高く広い空間の壁面に取り付けて使われます。

ユニバーサル型の吹出口は縦横の可動羽根で気流方向の調整ができます。フィルター交換やシャッターで風量の調整ができるタイプのものもあります。

ライン型・ノズル型・ユニバーサル型

吸込口

室内の空気を空調機に戻す、還気(RA:Return Air)用に使う吸込口の場合、前述したユニバーサル型の吹出口を吸込口と兼用して使うことがよくあります。吸込口として使う場合は可動羽根で気流を調整する必要性は少ないので、固定羽根のタイプを選択するのが普通です。

外気(OA:Open Air)を取り入れる吸込口については、角型や丸型の「ガラリ」を使うのが一般的です。屋外使用なので水切りの有無や内部の羽根の水返しなど、雨仕舞いを考慮して製品を選択する必要があります。万が一、ダクト内に水が入ることも考慮して、ガラリと繋がるダクトの勾配は、ガラリ側(外側)からみて若干の上り勾配で取り付けます。材質についてもさまざまなものがありますが、ステンレス製にするなど耐候性、耐久性を考慮する必要があります。また、ダクトの内部に虫や鳥などが侵入しないようにステンレス網を取り付けるなどの対策も必要です。

吸込口

執筆: イラストレーター・ライター 菊地至

『空調設備の基礎講座』の目次

第1章 空調設備を学ぶ前に

第2章 空調方式

第3章 熱源と主要機器

第4章 熱搬送設備

第5章 空調設備と省エネ

第6章 個別暖房と直接暖房

第7章 換気設備

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