工具の通販モノタロウ 空調・電設資材 空調設備の基礎講座 冷却塔(クーリングタワー)の仕組み

空調設備の基礎講座

私たちは、室内外の状況変化に応じて温度や湿度などを調節するために、暖房、冷房、換気などの「空調設備」を使用します。本連載では、空調設備の役割・目的から各種設備の特徴まで、快適に過ごすために知っておくべき基本的な事項を紹介していきます。
第3章 熱源と主要機器

3-7 冷却塔(クーリングタワー)の仕組み

冷却塔は冷凍機に欠かせないパートナー

自然界の滝のミストシャワーには周囲の温度を下げる効果があることは前述しましたが、冷却塔(クーリングタワー)が冷却するしくみは、外気の通風と水の蒸発による放熱を利用するものなので、自然界の滝の冷却効果と似たようなものです。

圧縮式や吸収式の冷凍機で熱交換されて熱を帯びた冷却水をその都度捨ててしまうのは不経済です。再び冷やしてあげれば冷却水として再利用することができます。冷却塔の役割は熱を帯びた冷却水を再び冷やして、冷凍機で必要とされる一定温度の冷却水を維持することなので、冷却塔は冷凍機には欠かせない良きパートナーといえます。

冷却塔の種類

冷却塔の形としては丸型や角型などがありますが、冷却方法の違いから冷却塔を分類すると、「開放式冷却塔」と「密閉式冷却塔」に分けられます。

  • 開放式冷却塔
    開放式冷却塔は外気と冷却水を直接触れさせることで冷却効果を得るタイプの冷却塔のことです。開放式冷却塔の中にも「向流型」と「直交流型」があって、向流型はカウンターフロー方式ともいわれ、上から落ちる冷却水に対して下から外気を当てるタイプの冷却塔です。直交流型はクロスフロー方式ともいわれ、上から落ちる冷却水に対して直角方向から外気を当てるタイプの冷却塔です。
    開放式冷却塔
    開放式冷却塔(向流型)
    上図で示すように開放式冷却塔は冷却水と外気が直接触れる構造になっているのが特徴です。構造上、いくつか注意すべき点もあります。
    開放式冷却塔は大気中の浮遊物や有害物質が冷却水に入り込みやすい構造ともいえます。浮遊物や有害物質を取り込んで冷却水が濃縮すると、冷却水の水質が悪化して管を腐食させる、詰まらせるなどの原因にもなるので、定期的に給水して冷却水を常にきれいに保つようにしなければなりません。また、蒸発や送風によって冷却水が失われることをキャリオーバーといいますが、だいたい全体の水量の1~2%程度はキャリオーバーで失われます。キャリオーバーや水質の悪化を見込んで冷却水の補給は必要です。
    開放式冷却塔の設置位置は、風通しのよい屋上などが適していますが、ファンや散水音といった騒音や強風で周囲に冷却水が飛散することも考えられるので、風向きには注意が必要ですし、近隣との間に十分な離隔距離を確保することも肝心です。離隔を確保できない場合は防音や飛散防止の壁が必要になるケースもあります。
  • 密閉式冷却塔
    密閉式冷却塔は密閉された管の中に冷却水を通して、冷却用の散布水と管内の冷却水を熱交換させて冷却水を冷やすタイプの冷却塔です。冷却水が直接外気に触れない構造上、開放式に比べると冷却水については衛生的といえます。
    密閉式冷却塔
    密閉式冷却塔

冷却塔は衛生管理を怠ると危険

開放式、密閉式に限らず、冷却塔は法的(建築物衛生法)にも定期的に清掃するなどの衛生管理が義務付けられています。その理由の一つとしてレジオネラ菌の問題があるからです。

レジオネラ菌は自然界の土壌や沼などに生息する菌ですが、土埃などを介して冷却塔の内部に入り込むおそれがあります。菌の増殖に最適な水温は37~41℃程度とされていますが、特に夏は冷却塔内がレジオネラ菌の増殖しやすい温度域になるので、衛生管理を怠ると冷却塔が菌の温床になる危険性もあります。却塔内で増殖した菌が水しぶきとなって周りにばら撒かれるようなことがあっては大問題です。人がレジオネラ菌を吸い込むなどで感染すると、レジオネラ肺炎やポンティアック熱などを発症して死亡するケースもあります。

以上のような理由から、冷却塔は定期清掃や殺菌のための薬剤投与などの適切な衛生管理が義務付けられています。また、万が一に備えて近隣住居の窓や空調の外気取入口などと冷却塔は10m以上離すなどのルールもあります。

執筆: イラストレーター・ライター 菊地至

『空調設備の基礎講座』の目次

第1章 空調設備を学ぶ前に

第2章 空調方式

第3章 熱源と主要機器

第4章 熱搬送設備

第5章 空調設備と省エネ

第6章 個別暖房と直接暖房

第7章 換気設備

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